436 / 533
15章
ビッグボーナス!?
しおりを挟む上から順に部屋を調べること三日、稀代の賢者と讃えられていたアルヴィンの子孫は代々収集癖があったことがわかった。
魔道具が隠された部屋もあったものの、隠し部屋にはもれなく本。これでもかと本、本、本、本。
どんだけ読書好きなのかと呆れるくらいの量だった。
アルヴィンが主に使っていたという部屋も発見した。
そこはアルヴィンしか開けられない仕様になっていて、私が鑑定で見ても開け方はわからなかった。アルヴィンに念話で教えてもらい、中に入ると……世界中の薬草類や、それにまつわる大量の本が壁一面……どころか、床にも大量に山積みされていた。
これには本人であるアルヴィンが苦笑いするくらいジルが大興奮で落ち着かせるのが大変だった。
魔法省のトップたる所以か……私有地は広く、温室は解体されて中の毒草は焼き払われていたけど、倉庫や使用人用の家など他にも建物がたくさん。
使えそうな家具や備品はウェヌスを筆頭とした光属性の精霊達によって浄化した後払い下げられた。
この売り上げ金は受け取りたくなかったので、街の整備に使うことを条件に王家にマルっと引き取ってもらった。
敷地内に建つありとあらゆる建物の窓やドアなどを全て開放し、準備は万端。
ガルドさん達やおばあちゃんによって送られてきたジィジ達、ドヴァレーさんやアーロンさんなど錚々たるメンバーが見守る中、私は敷地内の真ん中で息を整える。
あらかじめ渡されていた小さなハープを片手に言葉を紡ぐと、フワリとおばあちゃんの気配に包まれた。
「かたじけないの」
その言葉を受け、私はおばあちゃんに体を預ける。
憑依したおばあちゃんはハープを奏でながら歌い始めた。
その曲はまさかの……
(アニソン!? え、おばあちゃん、なんで知ってるの!? っていうか、鎮魂歌じゃないの!? パチスロだったら大当たりだよ!?)
驚く私の体は指が止まることも口を閉じることもなく、なされるがまま歌い続けている。
(マジか……確かに魂の輪廻にまつわる歌だけどさ……)
気が遠くなりかけても気をやることのない私はこうなった経緯を思い返した。
◇
残すところ建物を壊すだけとなった日、私はパパ達に呼ばれて教会を訪れた。
激しいスキンシップの挨拶を終え、全員がソファに座った後、何か問題があったのか聞いてみた。
「どうしたの?」
「セナに頼みがあっての」
「頼み?」
「あの土地はセナにはキツい。今回のような調べ物などは大丈夫じゃが、おそらく寝泊まりでもすれば穢れで具合が悪くなる」
「浄化じゃダメなの?」
私の質問におばあちゃんはチラりとジルとアルヴィンを見てから、言いにくそうに口を開いた。
「業が深すぎるんじゃ…………非業の死を遂げた者の念が溜まったあの場所を浄化するのはセナには負荷がかかりすぎる」
「私以外がやったり、ウェヌス達に協力してもらったりしてもダメ?」
「セナ以外じゃ手も足も出せんよ」
「え? じゃあどうすればいいの?」
「浄化すればいい」
「んんん?」
それがダメなんじゃないかと首をさらに傾げる私に、おばあちゃんは居住まいを正した。
「それにはセナの力……スキルが必要不可欠なんじゃ。そのために……体を貸してくれんかの?」
「……どうやって?」
〈ちょっと待て! セナが消えるということか!?〉
「え? そうなの?」
「断じて違う。そうじゃの……憑くと言えばわかりやすいかの?」
「あぁ、なるほど。おばあちゃん達なら全然いいよ」
〈セナ!?〉
「浄化する間だけでしょ? それに私の所有地になったから助けてくれるんだよね?」
「ヒャーッヒャッヒャ! まぁ、セナとは関係なければそのままじゃの」
「ほら、ね? 大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」
グレンはムムムと唸った後、しつこいくらいに安全性を確認してようやく納得してくれた。
いつ憑依するのか、私は何をすればいいかを聞けばすごく簡単で、ほぼほぼ何もしなくていいらしい。
おばあちゃんだし、丸投げしても悪いようにはしないだろうとマルっとお願いすることにした。
「承諾してもらえて安心しました」
「お礼言わなきゃなのは私の方だよ。ありがとう」
「いえいえ! セナさんの土地が穢れてるのは許せませんからね! ところでセナさん。回収した本の選別も僕達がやっても構いませんか?」
「え? そんなことまでしてくれるの?」
「はい! 任せてください! 量が多いので後で無限収納から抜いておきますね」
「ありがとう! お願いします」
笑顔でお礼を言うと、エアリルパパにギュウギュウと抱きしめられた。
そんなパパから私を奪い取ったイグ姐が会話を引き継ぐ。
「浄化さえ終われば建物はどう壊しても大丈夫じゃ。セナはどんな家にしたいんじゃ?」
「あ……壊すことしか考えてなかったや」
へへへと見上げた私に「考えておくんじゃぞ」と優しく微笑んでくれた。
◇
思い返していた私はふと、視界に見慣れないモノが映った気がして意識を戻した。
それは白い光の玉で、至るところから浮かび上がってはフワフワと漂い始めていた。
ハープの音色に合わせて嬉しそうにフルフルと揺れ、一つ、また一つと震えては私の中へ。
大量の光源をひっきりなしに受け入れていても、決して嫌な気分になることはなかった。
最後の一つを吸収し、曲の終わりのフレーズに自然と願いを込める。
(次は幸せな一生が送れますように……!)
その刹那――目の前が真っ白に発光。眩しさに目を閉じ、再び開けたときには全てが抜けていった後だった。
〈セナ!〉
「セナ様!」
呆然としていた私にグレンとジルが駆け寄ってきた。
「終わった……みたいだね」
「体調はいかがですか?」
「なんともないよ。ただ、なんだろう……ちょっと気が抜けた感じ?」
〈む……休むぞ。もう充分だろう〉
「はい。急いで宿へ戻りましょう」
ガルドさん達やジィジ達見物人にはジルが説明してくれるそうで、サッとグレンに抱えられた私は有無を言わさず運ばれることになった。
宿に着くなり早々にベッドに寝かされた私は大丈夫だといくら言っても信じてもらえず、病人ですか? と聞きたくなるくらいの過保護を発揮され、眠りにつくまでグレンとジルは傍を離れることがなかった。
1,087
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!
饕餮
ファンタジー
書籍化決定!
2024/08/中旬ごろの出荷となります!
Web版と書籍版では一部の設定を追加しました!
今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。
救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。
一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。
そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。
だが。
「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」
森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。
ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。
★主人公は口が悪いです。
★不定期更新です。
★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜
シュガーコクーン
ファンタジー
女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。
その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!
「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。
素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯
旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」
現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。