転生幼女はお詫びチートで異世界ごーいんぐまいうぇい

高木コン

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5巻

5-2

 倒れてる? ものを避けながらプルトンの方へ進むと、執事服を着た子供が倒れているのが目に入った。身長は私と変わらないくらい。幼児である。まさか死っ……!?

「えぇぇ!? ちょっ!? あぁ、ビックリした……」

 胸が上下していることにホッと息を吐き、とりあえず【ヒール】をかけてあげる。

《ほう。ブラウニーではないか》
「ブラウニーって家にく精霊の? 地球でもそうだけど、あれって伝承じゃないの? この世界でもほとんど見かけなくなってるんだよね?」

 パパ達の刷り込み情報ではそんな感じだったハズだ。

あるじの世界にもおるのか。この世界のブラウニーは家にくというより家人にく。それに精霊ではなく妖精だ。主に家人のために家事をこなす。おそらく、ここの前の住人が怪しんで閉じ込めたのだろうな》
《ヴぅ……》

 回復魔法をかけたおかげか、はたまた私達の声がうるさかったのか、唸りながら目を覚ました。

「ボク、大丈夫?」
《うぅ……へ? めがみ、さま?》

 ブラウニーが呆然とこちらを見て呟いた一言に苦笑が漏れる。どこをどう見てそう思ったの?

「私は女神じゃないよ」
《お主大丈夫か? 現状がわかるか?》
《え、精霊がなんで……現状……あー!》
《思い出せたみたいね》

 顔を覗き込むように近付いたエルミスの質問で、ブラウニーは意識がハッキリしたみたい。プルトンがやれやれとため息をついた。

《オレ……いきなり現れて怪しいって閉じ込められたんだ。頑張ってこの教会を維持してたけど、人がいなくなって悪くなる一方だった。いていきたかったけど、閉じ込められててどうしようもなかった……》
「そっかぁ。大変だったんだね。もう多分前の住人は死んじゃってるよ。廃教会になって百年以上は経ってるらしいから」
《そんな……オレどうすれば……》
「とりあえずこの部屋、クリーンかけていい? 汚いしホコリがすごいから。封印魔法のせいか、私が教会全体にかけたクリーンが届いてなかったんだね」
『主様……マイペースね……』

 クラオルは呆れ声だけど、くしゃみが出そうなくらいホコリっぽいんだもん。私よりクラオル達の方が影響あるでしょ? 【クリーン】を展開すると、息がしやすくなった。

「ふぅ。キレイになった。もうこの教会に住んでる人はいないけど、結界石があるから安全だよ」
《この魔力……》
「ボク聞いてる? おーい?」

 何かブツブツと呟き始めたブラウニーに呼びかける。

《この魔力! この前感じた澄んだ魔力だ! お前の魔力だったのか!》
〈お前ではない。セナだ。助けてもらった恩人をお前などと呼ぶな〉

 間髪をれず、グレンが注意した。前から思ってたけど、グレンって意外と真面目だよね。あんなに帰れって言ったのに、契約するためにクラオルに態度を注意されてからはずっと頭下げてたし、たまに子犬みたいだし。忠犬?

「ひとまずこの部屋から移動しようか? なんかゴチャゴチャ置いてあるから、話すのには不向きじゃない?」

 クラオル達も賛成したので、部屋を出たところで全員に【クリーン】をかける。それからブラウニーを連れて応接室へ足を向けた。道中、ブラウニーはキョロキョロと見回しては《おぉ!》《これは!》なんて言いながら付いてきた。ソファに座ったブラウニーに果実水を出し、本題に入る。

「さて、ボクはこれからどうするの?」
《オレは……》
《普通ならば家人にき、家人が死ぬときに血縁者にくか離れるか選択するが、こやつは封印されておったゆえ、何もできなかったのだろうな》

 言い淀むブラウニーを見たエルミスが教えてくれる。

「なるほど。このままだとどうなるの?」
《ふむ。封印を解いたゆえ、自由の身となったが、く人がいなければ探すしかないな》
「あら。じゃあ街でく人探す?」
《オレ……オレはこの教会が好きだから離れたくない》

 ブラウニーの言葉を聞いてみんなで顔を見合わせる。

「うーん……でもここ住む人いないんだよね。人じゃなくて家にくなら大丈夫だと思うけど」
《女神様が住んでるんじゃないのか?》
「女神? イグねぇ? パナーテル様? どっちも神界だよ?」
『多分主様のことよ。さっき言ってたじゃない』

 クラオルに指摘されてから、そういえばと思い出した。

「私は女神じゃないし、ここに住んでもいないよ。パパ達に頼まれてこの教会の修理はしたけど」
《女神じゃない? 修理しただけ?》
「そう。私は冒険者だから家はないんだよ。基本宿屋に泊まってるの」
《ここの管理はあるじであろう? 契約してこやつだけここにいればいいのではないか? あるじが言っていた迷子やケガ人が来てもこやつなら応対できるであろう》
《それがいい! オレ頑張ってここ維持していく!》
「まぁ、来た人の応対をしてくれて、一人で生活できるなら別に構わないけど……ここ、パパ達の結界が張ってあるから、維持は頑張らなくても大丈夫だと思うよ?」
《本当か!? さすが女神様だ!》
「だから私は女神じゃないって。ただの一般人。ご飯とかはどうするの?」
《オレは魔力で生きてる。食べ物は特に必要ない。簡単なものなら作れるし、薬草使ったケガの治療もできるぞ!》
「じゃあいいかな? ここで生活したいなら、迷子の人やケガ人にご飯を食べさせて、治療してあげること。それを約束できるなら契約してあげるよ」
《本当か!? やっぱり女神様だ!》
「だから私は女神じゃないって……契約って名前付けるの?」

 確認のためにエルミスに視線を向けると、頷いた。

《そうだ。名付ければ契約は完了となる》
「名前ねぇ……一番悩むんだよなぁ。うーん……キヒターは?」
《キヒター! オレの名前キヒター!》

 ブラウニーが嬉しそうに自分の名前を叫んだ瞬間、彼がピカーッと光った。無事に契約できたみたい。光が収まると、そこには執事服を着た中学生くらいの男の子がいた。

「……え、どちらさま?」
あるじの魔力で成長したようだな》
「えぇ!? 成長するの!?」
《オレ、女神様のために頑張ります!》
「しかもさっきと言葉遣い変わってない?」
《おそらく成長したからだ。契約もせずずっと閉じ込められていたゆえ、子供から成長できなかったのであろう。あるじの魔力でここまで一気に成長するとは……面白いな》
「一気に成長して弊害みたいなのはないの?」
《大丈夫です!》
「ならいいけど……私は女神じゃなくてセナだよ」
《オレにとっては女神様です! 精一杯頑張りますのでよろしくお願いします!》

 女神呼びは直す気がないらしい。ニコニコしながら頭を下げられた。執事服まで一緒に成長したことに驚きを隠せないものの、なんでもありなこの状況に疲れてきていた私は考えることを放棄した。考えるな、感じろ! ってやつだよ。
 この教会は精霊達が気に入っているあの聖泉からほど近い。そのため、ウェヌスにも話を通しておいた方がいいだろうとお呼び出し。それぞれの自己紹介を終え、キヒターに教会内を案内する。

「食材はキッチンの倉庫にあるから、作るときはそれ使って。劣化しない倉庫にしておいたから、腐ることはないと思う」
《わぁ! さすが女神様! ありがとうございます!》
『きっと言っても無駄ね……』

 私の気持ちを代弁するかのようにクラオルが呟いた。そうだね。女神呼びを直す気配がないよね。
 他に何か必要なものがあるか聞いたところ特に思い付かないそうなので、近々様子を見に来る約束をして廃教会を後に。キヒターは手をブンブンと振り、私達が転移で去る最後の瞬間まで満面の笑みで見送っていた。
 もう、廃教会とは呼べないよねぇ。なんて呼べばいい? わかりやすくキヒターの教会でいいかな?


   ◇  ◆  ◇


 翌日、私はプルトンを誘ってコテージの錬金部屋にいた。

「キヒター用に結界の魔道具作りたいんだよね。契約したから念話はできると思うんだけど……できるよね?」
《多分できるでしょうけど……わからないから確認した方がいいと思うわ》

 二人して不安になったので、キヒターに念話を飛ばしてみる。

「((キヒター、聞こえる?))」
《((女神様!? 聞こえます!))》
「((女神様じゃないって……必要なものとか欲しいものとか、何か思い付いた?))」
《((ポーションとか、傷を保護する包帯とかがあったらいいなと思いました))》
「((わかった。持っていくね。何かあったら、ちゃんとこうして連絡してね))」
《((女神様……ありがとうございます!))》

 キヒターとの念話を終わらせてため息をつくと、プルトンに不思議そうな顔を向けられた。

「念話はできたんだけど、何回言っても女神様呼びをやめてくれないんだよ」
《なるほどね。いいんじゃない? セナちゃんが助けてあげて、廃教会を直したんだもの。あの子にとっては女神同然なのよ》
「廃教会は直したけど、結界はパパ達だし、助けたって言ったって、封印解除したのはエルミスとプルトンだよ?」
《うふふっ。私達もセナちゃんと一緒じゃなかったらあの廃教会に行ってないし、神様達でもどうしようもなかったんだからいいのよ。それにあの廃教会にそうそう人が来るとは思えないもの》
「それはそうかもしれないけど……あそこに一人って寂しくないのかね?」
《自分で離れたくないって言ってたんだから大丈夫よ。それにセナちゃんと契約して、ちゃんと繋がりもあることだしね》
「大丈夫ならいいんだけど。たまに会いに行ってあげないとだね」
《ふふっ。それで充分だと思うわ》
「じゃあ、キヒターの安全のために魔道具作ろう。結界だとネックレスがいいかな?」
《そうね、ネックレスがいいと思う!》

 プルトンに手伝ってもらい、ああでもないこうでもないと相談しつつ作っていくと、思っていたよりも早く出来上がった。前にもネックレスを作っていたのがよかったのかもしれない。デザインはクラオルマークにした。我ながら可愛い。

《さすがセナちゃんね。あの教会にいたらそうそう危険はないだろうけど、これなら安全!》

 プルトンからお墨付きがもらえたなら本当に大丈夫なんだろう。ブラン団長達用に作ったやつより、間違いなく強力だよ。


 午後はゴンドラ商会に救急用品を買いに来た。念話でキヒターに言われたやつね。
 ポーションは前に作った分があるので、包帯やガーゼのようなもの。骨折した人が来るかもしれないから、吊るす用に三角巾。湿布や絆創膏ばんそうこうはなかった。あったら便利なのに!
 案内してくれたお姉さんに聞くと、基本的にはポーションで大抵の傷は治ってしまうため、こういった救急用品自体、あんまり買う人がいないんだって。買っていくのはヒーラーと組んでいない冒険者や小さい子供くらい。お金さえ払えば、教会で軽いヒールをかけてもらえるらしい。


 ゴンドラ商会を出た私達はお城の部屋に戻り、そこからキヒターの教会まで転移で飛ぶ。
 一発成功したことにほっと胸を撫で下ろした瞬間、教会のドアからキヒターが《女神様ー!》と勢いよく飛び出してきた。

《おかえりなさい!》
「ビックリした……えっと、ただいま? お迎えありがとう。救急用品持ってきたよ」

 私、住んでるワケじゃないんだけど。それにしても驚いたわ。誰も一言も喋ってないのに、よくわかったね。気配かな?

《驚かせてすみません。ありがとうございます。さぁ、どうぞお入りください!》
「あ、うん」

 ニコニコ顔のキヒターに促され、中に入る。

「はい。これが救急用品。あと、何かあったときのためにこのネックレス着けててね」
《わぁ! ありがとうございます!》
「魔物とか冒険者に襲われたり、教会に異常が生じたり……少しでも危険だって思うことがあったら、それに魔力を流して私に連絡して」
《はい!》

 キヒターはネックレスを早速首に着けて嬉しそうにしている。本当にわかってるのかな?

《そうだ! 女神様は薬草使いますか?》
「薬草はポーションを作るのに使ってるよ」
《いっぱい採ってきたのでよかったらどうぞ!》

 手を引かれ、案内されたのはキッチンの倉庫。中を見てみると、大量の薬草とハーブで私が置いた野菜が埋もれていた。

「これどうしたの?」
《近くの森で採ってきました! 女神様が使うかなって。女神様がいらなかったら教会に来た人に使えばいいかと思ったので!》
「なるほど……それにしてもすごい量採ってきたね……」
《教会の裏で薬草とハーブを育てようと思っていっぱい採ってきました!》
「育てるの?」
《はい! いつも女神様に持ってきてもらうのは大変だと思ったので。オレ、植物育てるの得意なんです!》
「もう畑ってできてるの?」
《今作っている途中です!》

 一応シャベルとかバケツとかは教会に置いてあるけど、一人で畑を作るのは大変だろう。

「そっか。よし! あの食材置き場にしまうと食材が埋もれちゃうから、もう一つの物置を薬草とかハーブを置く場所に変えちゃおう。プルトンはまた魔道具作るのを手伝ってもらってもいい?」
《任せて》
「クラオル達はキヒターを手伝ってあげてくれる?」
『いいわよ』
「ありがとう!」

 みんなにお願いしてから物置に向かい、設置する棚のサイズを測る。メジャーなんかないから紐と歩幅で。測ったらコテージで以前作った魔石と同じものを作る。魔石ができたら木をカット。収納用の箱も作り、鉱石から棚受けのアイアンブラケットと釘も作った。直角にするのが難しくて、こういう作業は炉を使った方が早そうだと実感した。

「ちょっといびつな気がするけど、とりあえずはいいかな? 炉が扱えるようになったら作り直してもいいもんね。忘れちゃいそうだけど。……まぁ、壊れたり不具合が出たりしたらでいいか」

 教会に戻った私はみんなに声をかけた。前回の倉庫と同じように魔石を天井に埋め込み、手伝ってもらって棚を取り付ける。みんな優秀で素晴らしい!

「とりあえず完成~!! みんなありがとう!」
《さすが女神様、すごいです! 早速薬草を移動させます!》

 キヒターがルンルンと箱を持ち、キッチンの倉庫に向かっていった。

「畑、完成した?」
〈できた。あとはキヒター次第だ。撫でてもいいぞ〉
「ふふっ。ありがとうね」

 私の身長に合わせてしゃがみ、頭を向けてくるグレンを撫でてあげる。それを見ていたメンバーも寄ってきたので、結局全員撫でることになった。



   第三話 種族と従魔


 朝食を食べ終わったタイミングで、ブラン団長がグレンを呼びに来た。ジルベルト君のことでグレンに用があるって連れていっちゃった。

「あっちはまだ動かなそうなんだよね。みんなは今日何したい?」
『あ、そうそう。ガイア様から教会に来てほしいって伝言があったのよ』
「そういえば王都に来てから教会に行ってないね。コテージでも会わないから忙しいのかと思ってた」
『行けば理由がわかるわ』
「ん? 理由?? よくわかんないけど、とりあえず行ってみようか。送ってくれた食材のお礼と、コテージの改装のお礼も言わなきゃだし、会えるならみんなを紹介したいしね」
《あら! 私達を紹介してくれるの?》
「もちろんだよ。グレンはいないけどウェヌスもいるしね」
《ありがとうございます》

 プルトンは嬉しさのあまりエルミスに《神に紹介なんて緊張するわね!》なんて絡み始め、絡まれたエルミスは満足そうに頷いて、ウェヌスは顔を赤くして照れていた。

「善は急げってことで、早速行こうか。ポラルくっ付いて~」
〔ハイ〕

 グレンには教会に向かうことを念話で伝え、お城を出る。マップで検索した結果、教会は貴族エリアに二つ、平民エリアに四つあるらしい。選べるなら平民エリアの方に行きたい。お祈りの最中に「何故平民がいるのかしら?」とか「平民がいると思うと気分が悪いわ。慰謝料を払いなさい」なんて言われたくないし、貴族の高笑いなんかも聞きたくない。自分の勝手な想像でゲンナリ。平民エリアにあるうちの一つが商業ギルドから割と近い場所にあるみたいだからそこに向かおう。

「((貴族エリアなのに地味に人が多くて身体強化が使えないから、転移するよ))」

 走りながら反復横跳びなんてしたくない私は念話でみんなに声をかけ、路地に入ったところで周りを確認し、転移を行使。商業ギルド裏の細い路地に飛んだ。

「ふぅ。街中って見られたらマズイから余計に緊張するよね。こういうとき、グレンのありがたみを実感するわ」
『ふふっ。グレンに言ったら調子に乗りそうね』
「それも可愛いじゃん」
古代龍エンシェントドラゴンを可愛いなんて言えるのは主様くらいよ』
「そうかなぁ? グレンって性格が可愛くない? 頼んだらなんでも手伝ってくれるし、撫でられたがるんだよ? あのビッグサイズのドラゴン姿のときは可愛いよりカッコイイの方だと思うけど」

 セカセカと歩きつつ喋っていると、教会に到着。カリダの街の教会よりこぢんまりとしていて、アットホームな雰囲気。騒がしくはないものの、何人も住民がお祈りに来ていた。中は全体的に明るく、並んでいるベンチに座ってお祈りするみたい。

(なるほど。ここは像の目の前でお祈りするわけじゃないのか)

 他の人にならってベンチに腰掛け、小さく柏手かしわでを打って目を閉じる。

(ガイにぃ~!)
「待ってたよ」

 声が聞こえ、視線を上げるとガイにぃがニコニコの笑顔でいつもの花畑に立っていた。

「久しぶり~!」

 駆け寄った私がガイにぃの足に抱き付くと頭を撫でられた。

「パパ達とイグねぇは? 忙しいの?」
「ふふふっ。いじけているんだよ」
「いじけてる?」
「そう。とりあえずいつもの場所に移動しようか?」

 私と手を繋いだガイにぃが指をパチンと鳴らす。まばたきをする間に、お馴染みになっているリビングみたいな部屋へと移動していた。

「とりあえず座って待っていようか? すぐに来ると思うから」
「はーい」
「待っている間のおやつが必要だね。うーん……これがいいかな?」

 ガイにぃの指パッチンでテーブルの上に現れたのは、温かいお茶が入った湯呑と、おかきが入ったお皿。

「おぉ! おかきとお煎餅せんべいだぁぁ! これ食べてもいいの!?」
「ククッ。もちろん食べて大丈夫だよ。おかわりもあるから安心して」
「やった! 早速いただきます……ん~! 美味しい……幸せ……」

 あまりの美味しさにクラオル達にも渡してパクパクと口に運ぶ。

「クククッ。そんなに喜んでもらえると嬉しいよ」
「ん!? このお茶、ほうじ茶じゃん」
「セナさんは温かいお茶は緑茶よりほうじ茶が好きだと日本の神に聞いたからね」
「そうなの。ありがとう。めっちゃ嬉しいし美味しい!」

 ヤバい。久しぶりに食べると止まらない。美味しすぎる……!

「うーん、みんな遅いね。そうだな……セナさん。〝せっかく来たのに会えないパパ達は嫌い〟って言ってもらえるかな? 〝パパ達よりガイにぃが好き〟でも構わないよ」
「んん?」

 笑顔でいきなり何を言うのかと、おかきを持ったまま首を傾げる。

「言ってみて」
「せっかく来たのに会えないパパ達は嫌い?」

 促されて言葉にしたものの、意図がわからなくて疑問形になってしまった。

「「「セナ(さん)!」」」
「うぐっ!? ゴホッゴホッ……」
『え、主様大丈夫!? このお茶飲んで!』

 座っているソファ横にパパ達とイグねぇがいきなり現れ、驚きのあまりおかきが変なところに入ってしまった。ゲホゲホとせながらクラオルが草魔法のつるで渡してくれたお茶を受け取る。

「……ふぅ。ビックリした。クラオルありがとう」
「驚かせてごめんなさい」
「セナは俺達が嫌いなのか!? だから教会に来たとき、ガイアのことだけ呼んだのか!?」

 ショボーンと肩を落とすエアリルパパの横から、アクエスパパが詰め寄ってくる。

「へ?」
「さっき言っていただろう?」
「……あぁ! 違うよ。あれはガイにぃに言ってみてって言われたんだよ。教会でガイにぃだけ呼んだのは、クラオルからガイにぃが呼んでるって聞いていたから」
「ガイア! 冗談が過ぎるぞ!」
「みんながさっさと来ないのがいけないんだよ。セナさんを待たせた罰だね」
「ぐっ……」

 ガイにぃとアクエスパパの争いはガイにぃに軍配が上がったらしい。そもそもなんの争いなのかよくわからないんだけどさ。

「三人共久しぶりだね~」
「セナさん……怒ってないんですか?」
「んん? 怒るって何に??」

 子犬のようなウルウルの瞳のエアリルパパを可愛いなぁと思いつつ、心当たりがなくて首を傾げる。

「あの廃教会を直したとき、パナーテル様が神力を使っただろ? あのときセナは怒っていたからな……」

 私の疑問に答えてくれたのはアクエスパパ。とても気まずそうに目線を逸らされた。

「そんなこと? あれってパパ達関係なくて、パナーテル様が勝手にやったんじゃないの?」
「そうだ! 俺達は知らなかった……」

 勢いよく反応したアクエスパパは手が白くなるほど拳を握っている。

「すぐに怒りに行ったんだよ。セナさんを危険にさらすなんて言語道断だからね」

 ガイにぃはガイにぃで笑顔なのに〝言語道断〟に力が入ってるし……

「あれから教会に来てもらえなかったので、てっきり僕達にも怒っているのかと……」
「なんでパパ達に怒るの? パナーテル様に怒ったとしてもパパ達は悪くないじゃん。コテージで会わなかったから、忙しいのかと思ってた」
「うぅぅ……セナさーん!」
(うおっ!)

 ソファに座っている私目がけ、エアリルパパが突っ込んできた。ギュウギュウと抱きしめてくる。いつものポジションにいたクラオル、グレウス、ポラルは瞬時に避難したらしい。状況判断が素晴らしく早い。ヨシヨシとエアリルパパの頭を撫でてあげたら、腕の力がギュンと増した。

「う゛っ……パパ、さすがにちょっと苦しい……」
「わわっ! ごめんなさい! 大丈夫ですか?」

 慌てて離れ、ペタペタと確認してくるエアリルパパに笑ってしまう。ケガするまでは至ってないから大丈夫だよ。

「では、セナは怒っていたワケではないんだな?」
「うん。討伐隊の一件でバタバタしてたし、教会の修理が終わって特に用がなかったから行かなかっただけ」
「そうか、よかった……」
わらわ達の勘違いだったんじゃな」

 アクエスパパの確認に答えると、アクエスパパとイグねぇは揃ってホッとした様子だった。

「報告に行けばよかったね。ごめんね」
「よいよい。わらわ達が勝手に勘違いしただけじゃからな」
「誤解も解けたことだし、座ったらどうかな?」

 ガイにぃに促され、ガイにぃの隣にイグねぇ、パパ二人は私を挟むように座った。心なしか、いつもよりパパ達にピッタリくっ付かれている気がする。

「あ、そうだ。アクエスパパとガイにぃ、お魚と木ありがとう。とっても助かったよ」
「セナが欲しがっていた魚がわからなかったから、ひとまず何種類も送ったんだが、合っていたみたいだな」
「喜んでもらえて嬉しいよ」
「早速コルクをポーションの蓋にして、お魚は食べたよ。美味しかった~。あと、コテージも作業部屋と客室が増えてた。パパ達がやってくれたんだよね? みんなありがとう」


感想 1,818

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