魔法少年マジカルまどか

ひょっとこ

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爆誕!マジカルイエロー!!

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 彼女と別れた僕は、自分の体を触り怪我を確認する。
 やはり薬が効いたのか、痛みは既になく、手をみても傷跡1つない。
 一時はどうなるかと思ったけど、助かったみたいで本当によかった。
 そう安心していた僕は、触れる指先に妙な違和感を感じる。

 “むにっ”

「んんっ」

 思わぬ感触に変な声が出る。
 僕はおそるおそる、自分の胸部に視線を落とす。
 制服の上からだと少し解りづらいが、いつもより膨らんでいる気がする。
 確認のために、僕はもう一度自分の胸部に手を伸ばす。 

“むに...むに.....むにむに..........むにむにむにむにむに”

「ふ、ふぉおおおおお」

 僕は周囲を見渡し、目的のものを探す。

「あった!」

 目標物をみつけた僕は、制服のジャケットを脱ぎ捨て、目的の場所へと走り出す。

「え、えええええええええええーーーーーーーーー」

 その鏡に映る、シャツ一枚となった僕の姿は、見まごう事なき女性の体だった。
 それだけじゃない、僕の髪がいつのまにか金髪のロングヘアーになっている事に気づく。

「こ、これが僕!?」

 顔を触ると、顔の造形には大きな変化はないが、全体的に若干女性らしくなっていることに気付く。
 ほっぺたは何時もよりふっくらと丸みがあり、唇もぷっくりとしている気がする。

「もしかして...」

 嫌な予感がした僕は、手を下に伸ばす。
 そう、先程まで僕は気づかないふりをしていたのである、現実逃避という奴である。
 僕が生まれてから、十数年間ずっと寄り添ってきた相棒の存在を感じられないのである。

「確認のためだし、自分の体だからいいよね」

 僕はベルトをほどき、ズボンに手をかけると“ストン”とズボンと一緒にトランクスが床に落ちる。
 元から男性にしては小柄だったけど、やはり女性の体になって一回り小さくなったんだろう。

“ゴクリ”

 僕は生唾を飲み込み、鏡の方に向き直る。
 今の僕の状態は、いわゆる彼シャツという物だ。
 男なら一度は憧れるスタイルだが、まさか自分の姿で見ることになるとは。
 そのせいか、少し冷静になった僕は、大きく息を吐くとシャツの両端をつまむ。

「こ、これを持ち上げたら...」

 僕は気恥ずかしから目を瞑り、ジワジワとシャツを持ち上げる。





“バンッ!”

 その大きな音に振り向くと、両手を広げ障子を開けた状態の軍服を来た男性が目に映る。

「きゃ、きゃああああ」

 思わず両手で自分の体を抱いて、その場にへたり込む。
 先程までやっていた事のせいもあり、顔がかなり熱い。

 そんな状況にもかかわらず、男性はこちらに近づくと手を伸ばすとニコリと微笑んだ。
 い、イケメンって奴だ、しかも紳士、軍帽の下に覗く切れ長の瞳がかっこいい。
 僕は思わず差し出された手を取ろうと右手を伸ばす。
 すると、男性の手はこちらの腕を掴まずに行き場を失った僕の手は空を掴み交差する。

 “むにむに”
 
「っん!」

 あまりの出来事に僕は思考が追いつかない。

「どうやら薬は効いたようだな」
 
 男性は僕の胸を弄り状態を確認すると、そう呟き立ち上がる。

「これを腕に巻け」

 そう言って男性は時計のような物を僕に差し出す。

「そ、そんなこと、急に言われても...そ、それに、さっきの事といい、貴方は一体なんなんですか!!」

 僕がそう言い立ち上がると、彼は手を掴み、赤い髪の女性が出て行った方から外に出る。

「見ろ」

 そう言って、男性が指を差すと、目の前に先程の女性が地面に転がる。
 その先をみると、僕を襲った山羊のような化け物が3体に増えている事に気付く。
 状況は大分押されているようで、全身傷らだけになりながらも立ち向かう彼女をみると、自然と拳に力が入る。

「このままじゃ、アイツは死ぬ、お前はそれでもいいのか?」

 彼女とはさっき出会ったばかりだ、でも彼女は僕を助けてくれた。
 それになにより、目の前で困ってる女の子を男として放って置けない。

「もし君が助けられるとしたらどうする?」

 僕は軍服の男性と向き合う。

「助けたいです」
 
 その言葉に先程の腕時計のようなものを僕に渡す。

「これを腕に装着しろ、そして変身と叫ぶんだ!」

 僕は腕時計を受け取り自分の腕に巻く。
 よくわからないけど、変身するならやっぱりかっこいいポーズだよね。
 本当はそういうのしてる場合じゃないんだけど、男としてそこは譲れないよね!
 僕はノリノリで時計をつけた腕を空へと伸ばす。

「変、身!」

 その言葉とともに、時計が光り輝き、黄色い光が僕の全身を包み込む。
 長い髪は、オレンジのリボンでポニーテールへと纏められ、上半身はまさかのへそだしルックに大きなリボンが胸元に揺れる、下半身は花が咲いたスカートの下にイエローのスパッツが覗かせる、スパッツ丸見えでほとんどスカートの意味がない。
 しかし、今は恥ずかしがっている場合じゃない、僕は変身の時に一緒にでてきた杖を握りしめる。

「考えても仕方ないよね!」

 僕は手に持った杖で化け物に向かって殴りかかるも、力が入りすぎたのか、リーチが足りずに空を切る。
 しかし、空を切った杖の先端から、黄色い星が現れ敵に直撃すると、山羊の化け物は叫び声を上げ、その場に倒れる。

「や、やった!」

 たまたまも実力のうちだよね!そう思った僕は思わず両手を握りしめ、胸元で八の字を描きガッツポーズする。

「よそ見するな!」

 その言葉にハッとなると、目の前に別の化け物が腕を振り上げこちらに向かってくる。
 しかし、赤い髪の子が横から現れ、もっている剣で化け物を横薙ぎに両断する。

「ご、ごめん」

 そういって彼女に謝ると、彼女は照れ臭そうに答える。

「さ、さっき、助けてもらったし、気にするな、それより、最後の一体だ、協力して倒すぞ!」

 僕は迷わず返事を返す。

「よし、俺がアイツを引きつけるから、お前はさっきの星が飛び出る奴で敵を倒してくれ」

 そう言うと、彼女は残った一体に向かって駆け出した。
 さっきの奴と言われても、偶然出たのにどうすればいいのかまごつく。

「今だ!早くしてくれ」

 ええい、ままよ!僕は杖を握りしめ、何かでろと願いつつ杖を思いっきり縦に振る。
 すると、5つ程の巨大な星が現れ、敵に向かって飛んでいくと、最初の化け物と同様に叫び声を上げその場に倒れる。

「や、やっーーーーー」

 僕の意識はそこで途切れた。







 変身が解け、上半身にシャツ一枚の男の子が地面に横たわる。
 軍服の男性が彼に近づくと、両手で彼を抱きかかえる。

「千秋!きてたんなら見てなくて手伝えよ!!」

 赤い髪の少女が、軍服の男性に食いつく。

「ユキ、あの程度の敵に苦戦するお前が弱いだけだ」

 その言葉に、少女は唇を噛み締め悔しそうな表情を見せる。

「だが、最後の連携はよかったぞ、やっぱりお前はリーダー向きだな」

 思わず褒められた事で、びっくりすると同時に赤面して慌てる。

「そ、そんな事いっても何もでないからな!」

 百面相を見せる少女に、思わずフッと笑みをこぼす。

「失礼します、花房大佐、撤収準備整いました!」

 彼は表情を再び引き締め、周囲に撤収を命令すると、少年を抱き上げたまま、赤い髪の少女とともにバンに乗り込みその場を後にする。
 数分後、その場は何事もなかったかのように再び周囲と調和した。
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