魔法少年マジカルまどか

ひょっとこ

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マジカルレッドの正体

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 目が覚めると、そこは見知らぬ天井だった。

「んん?ここはどこ?」

 僕は目をこすりながら、上半身を起こす。

「目が覚めたか?」

 その声に振り向くと、見覚えのある同級生がベッドの横のパイプ椅子に座っていた。

「あれ?ユッキー?」

 何故、隣にユッキーがいるのか、僕は倒れる前の出来事を思い返す。
 確か、山羊みたいな化け物に襲われて、赤い髪の女の子に助けられて、それで...!?
 慌てて自分の胸部を触ると、気を失う前に感じたあの感触がない。
 周囲を見渡すと、ユッキーと反対側のクローゼットに鏡がついており、懐かしい自分の顔が映り込む。
 髪も黒色にもどっており、まさにいつも通りだ。

「もしかして夢?」

 僕のつぶやきを、ユッキーが否定する。

「左手を見てみろ」

 ユッキーに指摘され左腕を見ると、手首にはあの時計が装着されている。

「夢じゃなかったのか...」

 色々と思い出し、恥ずかしさのあまりその場で突っぷす。
 あの時は変なテンションでノリノリ戦ってたけど、あの衣装といい恥ずかしすぎる。

「お、おい、大丈夫か?まだどっか痛いのか?」 

 突っ伏した僕を見て、心配したユッキーが声をかける。

「だ、大丈夫」

 少し冷静になったところで、ふと最初の疑問点に立ち返る。
 何故ここにユッキーがいるのか?
 そんな事を考えていると、部屋の扉が開く。

「目が覚めたようだな」

 そこに現れたのは、僕にこの時計のような物を渡した軍服の人だ。

「あーっ!」

 僕はベッドの上に立ち上がり、思わず指を指す。

「その様子なら大丈夫そうだな、ついてこい」

 軍服の男性は踵を返す。

「何をボーっとしている、早くしろ」

 わけもわからぬ状況のまま、せっつかれて部屋を出て後をついていく。
 ユッキーはため息を吐くと、椅子から立ち狩り、僕の後ろを歩く。
 周囲をキョロキョロと見ると、天井にはパイプなどが張り巡らされており、雰囲気からして普通の住宅ではないようだ、それどころか、窓もなく外の様子もわからない。
 通路を歩いていると、何人かの軍服の人とすれ違う。
 すれ違った軍服の人たちは横にはけると、先頭を歩く軍服の男性に敬礼する。

 やがて目的地らしき扉の前に立つと、軍服の男性はカードキーを取り出し、扉の前でロックを外す。
 ランプが赤から緑になると、部屋の扉がスライドし中に入るように促される。
 入った先は小部屋になっており、前にはもう一枚の扉があり、二重のセキュリティになっているようだ。
 僕たちが全員入ると、後ろの扉が閉まり、部屋の中に赤いレーザーが走る、一体何をチェックされているんだろう?、それが終わると、先ほどと同じく前の扉のランプが赤から緑に変化し扉が開く。

 僕は軍服の男性の後に続き、その中に入ると、いろんな計器があり、その先にある窓から海が見える。
 ここは湾岸部なんだろうか?、そんなことを考えていると、計器の前に座る人たちが立ち上がり、軍服の男性に敬礼する、やはりこの人はここで一番偉い人のようだ。

「改めて自己紹介しよう、日本海軍特殊戦コマンド有明分遣隊、通称«ウィッチ»所属の司令官、花房 千秋(はなぶさ ちあき)大佐だ」

 花房さんは、手を差し出し握手を求める。
 僕は握手に応じ、挨拶を返す。

「え、えっと、都立第一高校1年の九条 円です、まどかって呼んでください」

 花房さんはニコッと、あからさまな作り笑顔を向けると、色々と僕に説明してくれた。

 まず、ここの場所だが、有明の埋立地後に新設された海軍の基地に停泊している潜水艦の中らしい。
 この潜水艦は花房さんの部隊の物で、彼らは僕が戦った山羊のような化け物を相手にしている専門の部隊だそうだ。
 僕を助けてくれた赤い髪の女の子も、ここの部隊所属らしい。

「あの、できればですけど、僕を助けてくれた赤い髪の綺麗な女の子にお礼が言いたいんですけど...」

 花房さんは、作り笑顔から一転、ほんとうに楽しそうな悪い笑顔になる。

「ああ!そういえばそうだったね、君を助けるためとはいえ、部下が口づけしてしまった事を、上司として謝罪しよう」

 その言葉に、後ろのユッキーがピクッと反応する。

「いえ、そんな事はありません、むしろ役得というか、あんな綺麗な子にしてもらえるなんてラッキーですよ!」

 あの時のことを思い出し顔を赤らめる僕の言葉、何人かの軍人さんは肩を震わせ、憐めの目をこちらに向けてくる人までいる。
 振り向くととユッキーは顔を赤面させ、唇を震わせ茹でタコのようになっている。

「なるほど、九条くんは問題ないそうだ、よかったなユキ」

 ユキ?その子の名前なんだろうか、僕は花房さんに問いかける。

「ユキさんて言うんですか?ところでその人はどこに?」

 ううん、そんなこと聞かなくても本当はわかっているんだ。
 でも、僕はあえてチラつく現実に蓋をし、その仮定を否定する。
 だって僕のファーストキスの相手がそうだったとしたら、あまりにも不幸じゃないだろうか?

「何を言ってるんだ、さっきから君の後ろにいるじゃないか!」

 そういって花房さんは、手で口を抑え、顔をひくつかせながら、僕の後ろのユッキーを指差す。
 初めてあの子を見た時、どこかで見たことがあると思ってしまった。
 顔は女性らしくなっていたものの、見覚えのある面影が残っていたのだ。

「...ノーカンだ」

 ユッキーは拳を震わせ、言葉を絞り出す。

「あ、あれは救助活動であって、そういうのじゃない、それに、あの時の俺は女だったし、今は違う!だからノーカンだ!!」

 恥ずかしさからか、ユッキーは言葉の出だしで声が裏返っていた。
 僕も援護射撃するべく、それに乗っかる。

「そうです、ノーカンです!よりによってファーストキスの相手がユッキーだなんて!」
「な!お、俺だってファーストキスの相手がお前だなんて認められるか!」

 その言葉に、耐えられなくなった花房さんはバンバンと台を叩く、精密機械あるけど大丈夫なんだろうか。
 他の軍人さんに至っては、男性陣は「頑張れよ」「気を強く持てよと」憐れみの目でこちらを見つつも声が震えている、女性陣に至ってはヒソヒソと会話されて僕は消えてなくなりたい気分だ、特にオペレーターの女の人に至っては真顔でこちらを睨みつけてくる、怖い、ごめんなさい!

「「ああああああああああああああああ」」

 自爆でいたたまれなくなった僕たちは、その場にへたり込んだ。





 有 明 日 誌  ◯◯年△△月××日

1.
 本日午後◯◯時、千代田区永田町2丁目◯◯にてバフォメットアルファが発現。
 花房大佐、斎藤中佐が不在のため、緊急対応マニュアルに則ってネストールワンを派遣。
 現場に島津幸世准尉(レッド)を派遣、バフォメットアルファに続き、ベータ、ガンマが出現。
 途中、民間人(仮定イエロー)の協力を得て撃退。
 戦闘終了後、協力者を回収し現場より撤収。
 負傷者7名(内、軽傷5名、重傷2名)、死者0名。

2.
 ユキきゅんとまどかきゅん尊い、現役DK2人組はぁはぁ。
 女性隊員の間で九島戦争(後に他の派閥を巻き込み第二次世界大戦)が勃発。
 なお、女性隊員が割れたのは、斎藤中佐、花房大佐の花藤戦争(のちの第一次世界大戦)以来。
 私はまどかきゅん×ユキきゅん推し、他は認めない、さぁ、話(殺)し合いをしようか。

本日の日報担当 女性オペレーターB子


返信

 記載に誤りがあります、再提出お願いします。
 後日、上記の内容についてお話し合いをしましょう。

防衛省情報管理部 C子
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