貴方の腕の中

ゆきりん(安室 雪)

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 ううっ、気持ち悪い・・・。

 後2駅もあるのに吐きそうだ。この横にいるオヤジっ!無駄に体押し付けてくるしっ!

 なるべく少しでも人に密着しないように、ドア周辺にいるのに。頭がフワフワとして倒れそうになった時、電車がグラリと揺れ、来夏に密着していたオヤジが離れる。バランスを崩した来夏の腕を引き、腕の中に囲い込まれる。抱きつかれているわけでは無い。男性が両腕を壁に付き、その腕の中に囲われているのだ。なので、来夏の周りには少し空間ができる。

「あ、あの、ありがとうございます」

 お礼を言うと、

「ああ」

 と、素っ気なく返される。

 そして、乗り換え駅に着いたので、再度お礼を言い電車を降りる。



 次の日も朝、同じ電車に乗ると昨日の男性がいた。人の波に押され、また昨日の男性のそばに来てしまった。壁寄りにいた男性は、来夏に気がつくと、来夏と場所を入れ替え、昨日の様に囲い込む。

「あ、あの?」

「アンタ、人混みが苦手なんだろ?いいから黙ってろ」

「ありがとう」

 そして乗り換え駅で、またお礼を言って降りる。



 そして、次の日、さすがに今日はいないだろうと思ってた男性がいる。来夏に気がつくとすぐに囲ってくれる。

「あの、こんな事してもらわなくても大丈夫ですよ?毎日の事ですし」

 何だか申し訳ないし、照れるっ。

「俺がしたいだけだから、気にするな」

 ふっ、と笑う顔がとても優しい。

「あのっ、良かったら今度お礼にお茶でもいかがですか?」

「ナンパか?いいぞ」

 にやりと笑われる。

 どうしたっ、私!なんでお茶なんて誘うのっ!

「いつにする?」

 と耳元で囁かれ、心まで囲われてしまった来夏なのだった。



感想 1

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みんなの感想(1件)

johndo
2019.07.07 johndo

ゆきりんさん、大ファンです。
今、連載中の作品たちが落ち着いたら、この作品の続きを是非ご一考お願いします。
気になって気になってしかたがありません!

2019.07.08 ゆきりん(安室 雪)

いつもありがとうございます。
まだ浮かんでませんが、もし続きを書いたら是非読んで頂きたいです。

解除

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