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美優は朝から驚いていた。
何故って、いきなりの人事異動が出されたのだ。大学を卒業して3年、総務部で働き、これからも多分異動は無いだろうと思っていた。だから、季節外れの3月上旬に何の前触れも無く発令され驚きを隠せない。
しかも、総務部3課って!?
朝の人事異動発令から、バタバタと引き継ぎをし、午後には新部署に異動しなければならなかった。
3課って、あるらしいとは聞いた事があるが、実際に働いている人には出会った事がない。名簿は見た事あるんだけど、どんな部署なのかは不明なんだよね。
自分のデスクや身の周りを片付けて新部署に異動する。が、フロアはガランとしていて、各島の課長らしき人がポツンと数名いるだけだった。
「あの~、異動になった『霧島 美優』ですが」
1番近くの課長らしき人に声をかける。
「ああ、霧島さん。お疲れ様。席はそこね。僕が課長の泉です。荷物置いたら部署の説明したいんだけど」
「はい、お願いします」
ペコリと頭を下げる。
泉さん、若いなぁ。まだ30歳くらいかな?
ほぼ無人に近いフロアーで、いくつかあるパーテーションで区切られた打ち合わせルームで課長に業務の説明をしてもらうのだが。
「霧島さんは3課の仕事内容聞いたことある?」
開口一番に聞かれる。
「いえ、全く。名簿で存在は知ってましたけど、部署の人に会った事無いですし」
「だよね~、業務内容は一部は話してもいいんだけど、面倒だから皆話さないかな?」
「はぁ」
面倒?
「我が社、Jエンタープライズの建物なんだけど、1階に受付、その上に事務所やスタジオがあるのは知ってると思うんだけど、その上のフロアー、何があるか知ってる?」
「あ、はい。所属のタレントさんとか社員の人が住んでるらしいとは聞いたことありますが」
「そう。その住んでる人の面倒見るのが3課の役目なんだよ」
「は?総務がですか?」
面倒見る?
「う~ん、ちょっと特殊なんだよね。シフト制で決まった業務は住人専用の受付があって、それをしてもらう事。後は、付いたタレント次第で変わるかなぁ?ま、住込みお手伝いさん?今住んでる所は引き払ってもらって、上に住んでもらう事になるかな?」
「いやいやいや、意味わからないんですけど。私は事務職をずっとやってきたし、住込みって」
「今までよりもかなりお給料上がるし、住んでる所が職場になるよ?ジムも使い放題、ご飯とかのルームサービスも使い放題、費用は会社持ち。いいと思うけどなぁ~」
うっ。かなり魅力的なお話し。美優は今、貯金がすっからかんなのだ。付き合ってた彼が友達の連帯保証人になってたらしく、友達が払えなくなったから自分が払わなければならなくなった。でも、美優との結婚資金を定期預金で積立してて、それはすぐには解約出来ない。必ず返すから一時的に貸して欲しいと頼みこまれ断れなかった。
そして彼に逃げられたのだ。
もちろん借用書なんて書いてもらってない。警察に行ったが、同様のトラブルが何件もあり男の特徴は同じだが名前が違う。多分、常習犯だろうと言われた。
所謂、泣き寝入りだ。
そんな事があったのがまだ、2か月前。
家賃や諸々の費用が浮いて、尚且つ収入が上がるのは願ってもない話なのだが。
「何か裏があったりしますか?」
「や、やだな~。職場だよ?裏なんてね~」
と言いながら課長の目が泳いでいる。
「あ、これ。今後のお給料の目安なんだけど、どおかな?」
机の上を滑らせ提示される。
今までの約倍の金額が書かれている。
「その他、必要経費があれば、一応僕に相談の上大体は出しますよ。こんなに条件いい部署無いと思うよ?霧島さん、頑張ろうね!」
「はい、よろしくお願いしますっ」
しまった。反射的に言ってしまった。
その瞬間、課長がニヤリと笑った。
「言質はとりましたよ」
と言い、隣のパーテーションに誰かを呼びに行った。
「え~、霧島さんに担当してもらう『樹』。モデル兼タレント」
長身の金髪・碧眼が現れる。
「樹、今日から担当の霧島 美優さんだ。仲良くやってくれよ」
「美優、よろしく」
いきなり呼び捨てにされ、ハグされる。
!?
「あ~、霧島さん、樹見た目はこんなだけど、生まれも育ちも日本だから。セクハラされたら人目につかない所、殴っていいから。顔だけは殴らないでね」
とセクハラ対策と注意点を教わる。
「酷いな、泉さん。美優に愛情表現しただけなのに」
「はいはい。じゃあ、霧島さん。受付のシフトは出来次第メールで送るね。はいこれ、会社支給のタブレット、毎朝チェックしてね。はい、説明終わり。あとは樹に聞いてね」
「はぁ」
「じゃあ、美優行こっか」
満面の笑みで肩を抱かれる。
「えっ、どこに!?」
「俺の部屋、兼美優の職場」
何故って、いきなりの人事異動が出されたのだ。大学を卒業して3年、総務部で働き、これからも多分異動は無いだろうと思っていた。だから、季節外れの3月上旬に何の前触れも無く発令され驚きを隠せない。
しかも、総務部3課って!?
朝の人事異動発令から、バタバタと引き継ぎをし、午後には新部署に異動しなければならなかった。
3課って、あるらしいとは聞いた事があるが、実際に働いている人には出会った事がない。名簿は見た事あるんだけど、どんな部署なのかは不明なんだよね。
自分のデスクや身の周りを片付けて新部署に異動する。が、フロアはガランとしていて、各島の課長らしき人がポツンと数名いるだけだった。
「あの~、異動になった『霧島 美優』ですが」
1番近くの課長らしき人に声をかける。
「ああ、霧島さん。お疲れ様。席はそこね。僕が課長の泉です。荷物置いたら部署の説明したいんだけど」
「はい、お願いします」
ペコリと頭を下げる。
泉さん、若いなぁ。まだ30歳くらいかな?
ほぼ無人に近いフロアーで、いくつかあるパーテーションで区切られた打ち合わせルームで課長に業務の説明をしてもらうのだが。
「霧島さんは3課の仕事内容聞いたことある?」
開口一番に聞かれる。
「いえ、全く。名簿で存在は知ってましたけど、部署の人に会った事無いですし」
「だよね~、業務内容は一部は話してもいいんだけど、面倒だから皆話さないかな?」
「はぁ」
面倒?
「我が社、Jエンタープライズの建物なんだけど、1階に受付、その上に事務所やスタジオがあるのは知ってると思うんだけど、その上のフロアー、何があるか知ってる?」
「あ、はい。所属のタレントさんとか社員の人が住んでるらしいとは聞いたことありますが」
「そう。その住んでる人の面倒見るのが3課の役目なんだよ」
「は?総務がですか?」
面倒見る?
「う~ん、ちょっと特殊なんだよね。シフト制で決まった業務は住人専用の受付があって、それをしてもらう事。後は、付いたタレント次第で変わるかなぁ?ま、住込みお手伝いさん?今住んでる所は引き払ってもらって、上に住んでもらう事になるかな?」
「いやいやいや、意味わからないんですけど。私は事務職をずっとやってきたし、住込みって」
「今までよりもかなりお給料上がるし、住んでる所が職場になるよ?ジムも使い放題、ご飯とかのルームサービスも使い放題、費用は会社持ち。いいと思うけどなぁ~」
うっ。かなり魅力的なお話し。美優は今、貯金がすっからかんなのだ。付き合ってた彼が友達の連帯保証人になってたらしく、友達が払えなくなったから自分が払わなければならなくなった。でも、美優との結婚資金を定期預金で積立してて、それはすぐには解約出来ない。必ず返すから一時的に貸して欲しいと頼みこまれ断れなかった。
そして彼に逃げられたのだ。
もちろん借用書なんて書いてもらってない。警察に行ったが、同様のトラブルが何件もあり男の特徴は同じだが名前が違う。多分、常習犯だろうと言われた。
所謂、泣き寝入りだ。
そんな事があったのがまだ、2か月前。
家賃や諸々の費用が浮いて、尚且つ収入が上がるのは願ってもない話なのだが。
「何か裏があったりしますか?」
「や、やだな~。職場だよ?裏なんてね~」
と言いながら課長の目が泳いでいる。
「あ、これ。今後のお給料の目安なんだけど、どおかな?」
机の上を滑らせ提示される。
今までの約倍の金額が書かれている。
「その他、必要経費があれば、一応僕に相談の上大体は出しますよ。こんなに条件いい部署無いと思うよ?霧島さん、頑張ろうね!」
「はい、よろしくお願いしますっ」
しまった。反射的に言ってしまった。
その瞬間、課長がニヤリと笑った。
「言質はとりましたよ」
と言い、隣のパーテーションに誰かを呼びに行った。
「え~、霧島さんに担当してもらう『樹』。モデル兼タレント」
長身の金髪・碧眼が現れる。
「樹、今日から担当の霧島 美優さんだ。仲良くやってくれよ」
「美優、よろしく」
いきなり呼び捨てにされ、ハグされる。
!?
「あ~、霧島さん、樹見た目はこんなだけど、生まれも育ちも日本だから。セクハラされたら人目につかない所、殴っていいから。顔だけは殴らないでね」
とセクハラ対策と注意点を教わる。
「酷いな、泉さん。美優に愛情表現しただけなのに」
「はいはい。じゃあ、霧島さん。受付のシフトは出来次第メールで送るね。はいこれ、会社支給のタブレット、毎朝チェックしてね。はい、説明終わり。あとは樹に聞いてね」
「はぁ」
「じゃあ、美優行こっか」
満面の笑みで肩を抱かれる。
「えっ、どこに!?」
「俺の部屋、兼美優の職場」
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