番探しにやって来た王子様に見初められました。逃げたらだめですか?

ゆきりん(安室 雪)

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 「離せよっ!」

 「もうちょっとだけ、いいだろ?」

 ガイナは抱きしめながらスミレ首筋に唇を付け、鼻をスンスンとさせ、スミレの匂いを嗅ぐ。

 「ああ、お前はいい匂いだ。ずっと嗅いでいたくなる」

 スミレは思いっきりダイナを蹴り上げる。

 「いい加減にしろっ、変態っ!!」



 
 スミレはプリプリ怒りながら宿の下で遅めの朝食を食べる。

 「よくよく考えたら、チーズだの肉だのは1人で食べに行けばいいだろ?巻き込むなよ」

 ぐっすり寝た割にはスミレは不機嫌だった。

 「じゃあ、すぐに王宮に行くか?」

 「だから番にはならないって言ってるだろ?何回同じ事言わせるんだよ?」

 「・・・、わかったスミレ。じゃあこうしよう。2週間の旅が終わった時も今と同じく番になりたくなければ、俺はスミレを諦める。ソレでどうだ?」

 「いいのか?気持ちは変わらないぞ?」

 「ああ、その方が俺も燃える。全力でいかせてもらうぜ?」

 ガイナ殿下は獲物を前にした黒豹みたいにニヤリと笑った。



 
 2人は遅めの朝食後、カッツェ地方に向かい馬を走らせる。街中は1列でゆっくり歩かせ、街を出でからは並んで走っている。

 ガイナはさすが騎士だけあって、手綱さばきが上手い。馬に乗せて貰ってる風ではなく自分の身体の一部の様に馴染んでいる。

 「そういえば、護衛騎士達はいいのか?」

 素朴は疑問だ。デラウェア伯爵領に来た時は騎士達が10名程いたはずだ。

 「ああ、撒いてきた。問題ない。それにせっかくスミレとの愛を育む旅に連れて行く訳ないだろ?王宮に連れて行ったら会える時間は限られてくるからな。2週間で必ず俺の番になるって言わせてやる。ここの桃が美味いんだ、食べて行こうぜ」

 馬から降りたガイナは、道端にある小屋の中に声をかける。

 桃の直売所らしい。中でも食べれる様に机と椅子がいくつか置いてある。

 ガイナは桃を4個カゴに入れて持ってきた。皮をツルリと手で剥きかぶりつく。スミレは小振りのナイフを取り出し切って食べた。

 「甘くてうまっ!!」

 しかもジューシーだ。普段食べる桃も美味しいが瑞々しさに違いがある。

 「裏の畑で取れたてだからな。季節が合えば地方に行く時は今回みたいにココで食べ、帰る時には箱で買って帰るんだ。2週間後ならまだシーズンだから買って帰ろうな」

 ガイナ殿下はあっと言う間に2個食べ終わる。買って帰っても一緒には食べれそうにないけどな、とスミレは心の中で思った。



 桃を食べ終わった2人はまた馬を走らせる。朝食が遅かった2人は14時ころ街道にある店で食事をした後、少し迂回し花畑を横目に馬を走らせた。



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