番探しにやって来た王子様に見初められました。逃げたらだめですか?

ゆきりん(安室 雪)

文字の大きさ
39 / 40

38

しおりを挟む
 翌日、ガイナとスミレの結婚式が盛大に行われた。誓いのキスで愛の花を舞い散らせると、周りからは歓声が上がる。

 人目がある所では笑顔を心がけるスミレだが、近しい人だけになるとスミレは

 「そろそろネコが剥がれる~っ!!ドレス脱ぎたい~っ!!」
 
 と叫び、ガイナは苦笑するのだ。

 「もう少し頑張れよ、スミレ。後は馬車に乗って城周辺をパレードするだけだ」

 「そのパレードが辛いんだ。明日は頬が筋肉痛になる自信があるぞ」

 「いいぞ、スミレ。筋肉痛になったらちゃんとほぐしてやる。ほら、行くぞ」

 控え室から出てパレード用の馬車に乗り込むと、ゆっくり城外へと走り出す。街には市民がガイナとスミレを一目見ようと沢山の人が詰めかけていた。歓声に応えるようにガイナは途中何度かキスをし、愛の花を降らせ市民を喜ばせた。

 「ちょっとガイナ!!恥ずかしいだろ!?」

 「今日だけのサービスだ。歴代の王子達は馬車に乗って愛の花を降らせて、きちんと番と結婚したんだと見せびらかしていたからな。ほら」

 そう言って何度もガイナはキスをねだった。




 晩餐会もすませ、やっと一日の結婚の儀式が全て終わる。

 「終わったぁ!!ガイナ、お疲れ~っ!!」

 ベッドにダイブしたスミレの腰をガイナはゆっくり撫でる。

 「ああ、スミレ。お疲れ。だがな?まだ寝かせてやれないぞ?」

 クルリとスミレを反転させ、甘いキスをする。

 「甘いなスミレ。この日を待ちわびた。やっとスミレの隅から隅まで愛する事が出来るんだな」

 どんどんキスを深くし、2人は愛の花をベッドの周りに舞い散らせ、甘く・熱い夜を過ごすのだった。



 
 翌朝、目を覚ましたスミレは自分を包む暖かい腕をペシペシと叩く。

 視界がおかしいのだ。

 「ガイナ起きてくれ。なんか閉じ込められているぞ?何だコレは!?」

 「ん?どうした、スミレ?ああ、薔薇の花が積もり過ぎたんだな」

 ガイナはそう言うとベッドの上に立ち上がり、薔薇をバサバサと退かした。

 「ああ、もう朝だな。もう起きるか?それとも、もっと俺の愛を感じるか?」

 再び横になり、スミレを抱き寄せキスをする。

 「んっ・・・、ガイナ」

 『グ~ッ』

 甘いキスを始めた途端、スミレの腹の虫が鳴り始める。

 「プッ、スミレらしいけどな。一緒にシャワー浴びて飯食うか」

 「一緒にっ!?」

 戸惑うスミレを軽々と抱き上げ、ガイナはシャワーを捻り、2人は一緒にシャワーを浴びた。もちろんガイナにしっかり色々・・洗われ、スミレはグッタリしてしまうのだ。



 そして、朝食は何故かガイナな膝の上に座らされ、食事を口に運ばれるのだった。

 「ガイナ、自分で食べたいんだが?」

 「俺はスミレに食べさせたい。ほら、あ~んしろ」

 王族って頭おかしいのかっ!?こないだのお茶会といい、自分の食べたいものを自分のペースで食べたいだろうよっ!?

 「明日からは自分でたべるからな?」

 その日のお昼・ティータイム・ディナーは全てガイナの膝の上で食べる事になるのを、この時のスミレは気づくはずもなかったのだ。



~完~



 
しおりを挟む
感想 23

あなたにおすすめの小説

【完結】そう、番だったら別れなさい

堀 和三盆
恋愛
 ラシーヌは狼獣人でライフェ侯爵家の一人娘。番である両親に憧れていて、番との婚姻を完全に諦めるまでは異性との交際は控えようと思っていた。  しかし、ある日を境に母親から異性との交際をしつこく勧められるようになり、仕方なく幼馴染で猫獣人のファンゲンに恋人のふりを頼むことに。彼の方にも事情があり、お互いの利害が一致したことから二人の嘘の交際が始まった。  そして二人が成長すると、なんと偽の恋人役を頼んだ幼馴染のファンゲンから番の気配を感じるようになり、幼馴染が大好きだったラシーヌは大喜び。早速母親に、 『お付き合いしている幼馴染のファンゲンが私の番かもしれない』――と報告するのだが。 「そう、番だったら別れなさい」  母親からの返答はラシーヌには受け入れ難いものだった。  お母様どうして!?  何で運命の番と別れなくてはいけないの!?

あなたの運命になりたかった

夕立悠理
恋愛
──あなたの、『運命』になりたかった。  コーデリアには、竜族の恋人ジャレッドがいる。竜族には、それぞれ、番という存在があり、それは運命で定められた結ばれるべき相手だ。けれど、コーデリアは、ジャレッドの番ではなかった。それでも、二人は愛し合い、ジャレッドは、コーデリアにプロポーズする。幸せの絶頂にいたコーデリア。しかし、その翌日、ジャレッドの番だという女性が現れて──。 ※一話あたりの文字数がとても少ないです。 ※小説家になろう様にも投稿しています

『番』という存在

恋愛
義母とその娘に虐げられているリアリーと狼獣人のカインが番として結ばれる物語。 *基本的に1日1話ずつの投稿です。  (カイン視点だけ2話投稿となります。)  書き終えているお話なのでブクマやしおりなどつけていただければ幸いです。 ***2022.7.9 HOTランキング11位!!はじめての投稿でこんなにたくさんの方に読んでいただけてとても嬉しいです!ありがとうございます!

彼女は白を選ばない

黒猫子猫
恋愛
ヴェルークは、深い悲しみと苦しみの中で、運命の相手とも言える『番』ティナを見つけた。気高く美しかったティナを護り、熱烈に求愛したつもりだったが、彼女はどうにもよそよそしい。 プロポーズしようとすれば、『やめて』と嫌がる。彼女の両親を押し切ると、渋々ながら結婚を受け入れたはずだったが、花嫁衣装もなかなか決めようとしない。 そんなティナに、ヴェルークは苦笑するしかなかった。前世でも、彼女は自分との結婚を拒んでいたからだ。 ※短編『彼が愛した王女はもういない』の関連作となりますが、これのみでも読めます。

麗しの王子殿下は今日も私を睨みつける。

スズキアカネ
恋愛
「王子殿下の運命の相手を占いで決めるそうだから、レオーネ、あなたが選ばれるかもしれないわよ」 伯母の一声で連れて行かれた王宮広場にはたくさんの若い女の子たちで溢れかえっていた。 そしてバルコニーに立つのは麗しい王子様。 ──あの、王子様……何故睨むんですか? 人違いに決まってるからそんなに怒らないでよぉ! ◇◆◇ 無断転載・転用禁止。 Do not repost.

【完結】番が見ているのでさようなら

堀 和三盆
恋愛
 その視線に気が付いたのはいつ頃のことだっただろう。  焦がれるような。縋るような。睨みつけるような。  どこかから注がれる――番からのその視線。  俺は猫の獣人だ。  そして、その見た目の良さから獣人だけでなく人間からだってしょっちゅう告白をされる。いわゆるモテモテってやつだ。  だから女に困ったことはないし、生涯をたった一人に縛られるなんてバカみてえ。そんな風に思っていた。  なのに。  ある日、彼女の一人とのデート中にどこからかその視線を向けられた。正直、信じられなかった。急に体中が熱くなり、自分が興奮しているのが分かった。  しかし、感じるのは常に視線のみ。  コチラを見るだけで一向に姿を見せない番を無視し、俺は彼女達との逢瀬を楽しんだ――というよりは見せつけた。  ……そうすることで番からの視線に変化が起きるから。

幼馴染の執着愛がこんなに重いなんて聞いてない

エヌ
恋愛
私は、幼馴染のキリアンに恋をしている。 でも聞いてしまった。 どうやら彼は、聖女様といい感じらしい。 私は身を引こうと思う。

憎しみあう番、その先は…

アズやっこ
恋愛
私は獣人が嫌いだ。好き嫌いの話じゃない、憎むべき相手…。 俺は人族が嫌いだ。嫌、憎んでる…。 そんな二人が番だった…。 憎しみか番の本能か、二人はどちらを選択するのか…。 * 残忍な表現があります。

処理中です...