花笑みの庭で

ゆきりん(安室 雪)

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 彩音の耳に誰かが鼻歌を歌っているのが聞こえてくる。


   灰に塗れたまみれた 
   ダイヤモンドの 瞳
   曇らないように
   今は その瞬間を 
   待ち続けている


 うん?

 アヤトの歌声だ。

 寝起きに生アヤト生歌!

 しかも、新曲?

 聞いたこと無いよ~っ。

「彩音、起きたの?もうすぐリクが来るから起こそうと思って」

「今、起きた。アヤト、今のは新曲?」

「サビしか出来てないんだけどね。他の部分が浮かばなくて、ず~っとここだけ歌ってる。半年位かな~?」

「半年は難産だね。ま、何かの拍子生まれて来るからね~」

 アヤトでも中々曲出来ない時あるんだぁ~、そりゃそうだよね。

 出来るときはするっと出て来るし、出ない時はホントにどう足掻いても出ない。

 安産・難産とはよく言ったものだ。


「彩音ちゃん、体調どお」

 アヤトと話しているとすぐにリクさんはやって来た。彩音の体調が良くなっているのに安堵したようだ。

「しっかし、様子見に来て歌ハモってるのに遭遇したのは初めてだよ」

 てリクさんは苦笑する。

「でも、彩音ちゃんの声いいね。今後、楽しみにしてるね。あ、体調大分戻って来たからって無理しないて。今日までゆっくり休んでね。じゃ、お大事に」

 リクさんが去ってから、アヤトはむむ~んと悩み、彩音に聞いてくる。

「食堂のお粥とルームサービスのご飯とどっちがいい?」

「ルームサービスのオムライスっ。写真見て、一回食べてみたかったんだぁ」

 タブレットのルームサービスを見たら美味しそうなメニューがいっぱい載ってて。トロトロオムライス、食べてみたかったんだ。なかなかチャンスがなかったけど。

「ああ、じゃあ頼んどくな。俺、下のスタジオでレコーディングしてるから何かあったら呼んで」

 頭をポンポンしてアヤトが部屋を出ると、ポツンと1人寂しくなる。

 1人なんていつもの事なんだけどなぁ。母は仕事で夜遅い時もあったし。ここ最近はアヤトとずっと一緒だったからかな。

 遅い昼食が届いた。

 オムライスだけじゃなく、コーンスープ、サラダ、プリン、ハーブティの茶葉。

 プリンって!

 ぶぶっ!

 アヤトってば体調悪い時、プリン食べたくなるの?


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