花笑みの庭で

ゆきりん(安室 雪)

文字の大きさ
69 / 80

69

しおりを挟む
 「彩音、出かけるから着替えておいで」

 と言われ、外に出れる格好に着替えると、アヤトも既に着替え、目立つ頭の包帯は帽子で隠している。元々、変装用に帽子はいくつか持っているようだ。

 エレベーターに乗り、地下の駐車場に停めてある車に乗る。この車にも慣れてきた。自分でシートベルトをしようとすると

「密かな俺の楽しみ取らないでね」

 ふふっと笑いながら彩音のシートベルトをする。

 楽しみの意味がわからない・・・。




 南青山の事務所から車を数十分後走らせた後、大きな門がある敷地に入っていく。中は綺麗に整えられた庭園風になっていて美術館のようだ。

 建物の前で車から降りるとそこには、執事風の初老の男性が立っていた。

彩人あやと様お帰りなさいませ」

 恭しく頭を下げる。

 アヤトは苦笑いする。

「角野さん、俺にソレはやめてよ」

「いいえ、本来なら彩人様がお継ぎになられていたのですから。それで、こちらの方はもしや?」

 と優しげに視線を向けられる。

「ああ、彩音だ。面影、残ってるだろ?」

 すると、角野さんは目を細め何処か懐かしむ顔をし、

「彩音様、大きくなられて角野は、びっくりしました。さ、裏のお庭でお茶でも如何でしょうか?」

「ああ、角野さん頼むね」

 3人で建物の中に入る。靴は脱がなくてはいいのかな?と気にするが、どうやらいいみたいだ。美術館内の様に綺麗な廊下を抜けて、建物の裏手に出る。するとそこにはーーー!

「すっごい!!お庭と言うより、お花の国っ!一面お花っ!」

 桜の花も咲き誇り、少し低めの椿にも赤やピンクの椿の花が咲き誇り、地面には色とりどりの花が咲き乱れている。まるで

「お花が笑っているみたい」

 テラス席に促され、椅子に座りながら彩音は呟く。するとアヤトは

 ぷぷっと笑う。

「何?アヤト?」

 変な表現だと思うけど、そう思ったんだもん。ぷぅと頬を膨らませながらアヤトを睨む。

「いや、懐かしいなと思って」

「左様でございますね。彩音様は昔もその様に仰って、以来この庭の名前は『花笑みの庭』でございます」

「えっ、昔ここに来た事あるんだ?何で覚えて無いんだろう?」

「彩音はここで、俺達家族と住んでたんだよ。あの事故までね。そして彩音が見たDVDもココで撮ったものだよ」

 お茶の準備が整うと、アヤトは角野さんに少し外す様に言う。一礼して角野さんが去る。

「ココで彩音に渡したい物があるんだ。ホントは昨日渡したかったんだけど、ココが相応しいかなと思ってな」

 そう言ってポケットから小さな箱を2つ取り出す。1つ目の箱の蓋を開け、中から指輪を取り出す。

「指輪は俺がデザインして加工してもらったんだが、石は父が母に贈ったものなんだ。彩音が俺の気持ちを受け入れてくれると思った時に着けて欲しい。そしてこっちは、ただのピアス。シンプルな物だからいつも着けて欲しいなと、ま、独占欲の印だな」

 言い終わると、今日は何も着けていない彩音のピアスホールにピアスを着け始める。

「因みに、俺も同じヤツ」

 と左の耳を見せニヤリて笑う。

 



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

せんせいとおばさん

悠生ゆう
恋愛
創作百合 樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。 ※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。

義姉妹百合恋愛

沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。 「再婚するから」 そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。 次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。 それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。 ※他サイトにも掲載しております

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

処理中です...