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「あの・・・、あなたは?」

 どうして私は知らない人にキスされて起きたのだろう?

「俺はいつき。お前は記者らしき奴らに追われてて、俺の車の横で倒れたんだ。覚えてないか?」

 言われて、一気に記憶が蘇る。そして、倒れた時に打ち付けた脚や腕に痛みを覚えるが、そこには湿布が貼られ、手当てされていた。この人がしてくれたのだろうか?

「で、あんたは?」

「私は美希と言います。すみません、お世話になりました」

 ベッドから降りようとすると、グッと肩を押され、ベッドに再度寝かされ上から見下ろされる。

「あ、あの!?私、帰ります」

「ふっ、どうしようか?お前は比較的俺の好みなんだがな?細い身体の割に少し手に余る乳房。大き過ぎず・小さ過ぎず」

 美希の首筋に唇を当てながら話す。思わず美希はゾクゾクしてしまう。

「あ、あのっ!私、結婚してるんですっ」

「あ?お前、響也の愛人じゃないのか?」

「違いますっ、知り合いですか?」

「ああ、まあな。知り合いだな」

「私は、響也さんの従兄弟の妻です」

 何だか、妻って自分で言うと照れる。

「ふ~ん?て事は鷹夜か」

「鷹夜さんも知ってるんですか?」

「ふふっ、鷹夜か」

 そう言いながら、樹さんはベッドを降り、電話をかけはじめる。

「お前の妻を預かった。返して欲しければ『新宿高◯のメロンケーキ』を持って、今から言う所まで来い。場所は・・・」

 その男、樹は身長180センチ以上はあると思われ、体格もマッチョまではいかないが、それなりに鍛えていそうで、筋肉がかなり付いている。顔も響也さんと同等に強面だ。そんな男が『メロンケーキ』なんて言葉を言う。笑ってもいいだろうか?

 電話を切った樹さんがベッドまでやって来ると、美希を姫抱きし、リビングに移動させソファに降ろす。

「鷹夜もすぐに迎えに来るだろう。紅茶でも飲むか?」

「あ、いえ。お構いなく」

 と美希は答えたが、紅茶が出てくる。

 紅茶好きの美希は、匂いにつられ頂く。

「うわぁ、ヌワラエリヤですか?美味しい。久しぶりに飲みます」

 思わず笑顔になってしまう。

 すると、樹の眼がキラリと光る。

「ヌワラエリヤを言い当てるとはな。お前、俺の嫁に来ないか?お前なら俺の好きなモノに色々当てはまりそうだ。ん?」

 ずいっと樹の顔が近づいてくる。

「え、いえ。私結婚してますから」

「離婚と言う手もある」

 樹の唇が近づいて来た所で、人が近づいてくる気配がする。

「俺の奥さん、口説かないでくれますか?」




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