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第一章[モモと創介]モモSide
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しおりを挟む朝ーー。
真っ暗なカーテンに掴まっていたお星様たちのお喋りが、ゆっくりと囁くように静まり、お月様の揺らめきも溶けてゆく。だんだんと世界が眩しいお日様に照らされてゆく。
鳥の声よりも先に、あなたの寝息の深さの変化で目覚める。
“まだ…もう少し”と、意識は完全にはハッキリとしなくて。
一緒に包まれている毛布の感触と、あなたの柔らかな薫り、体温に、甘く微睡む。
そのうち“ピピピピ”と甲高い音が響く。
あなたはむくっと迷惑そうに体を持ち上げ、のっそりとした動きで手を伸ばし、その音を止める。
そして、眠たげな目をこすりながら「おはよう」と柔らかく微笑み、おでこに優しくキスを落としてくれる。
私はそれに応えるように、あなたの頬へ、鼻先からの“おはようの挨拶”のキスを返す。
こうして“新しい今日”が始まる。
これが、私たちにとって、毎日の“一日の開始”の合図になる。
毎日、繰り返され続く“同じこと”がある一方で、“違うこと”もある。
「それじゃあモモ行ってくるね。」
そう言って、私の名を呼び、頭をひと撫でなですると、創介は一人、扉の向こう側へと姿を消してしまう。
優しい瞳を向けられて、優しく触れられ、優しい声をかけられる。それ自体は大好きだけど…。その後に、ポツンと一人、置き去りにされてしまう事は大嫌い。
大抵は自由気ままに過ごせるけれど…創介と一緒にいられない時間の方が長い日は、寂しさや悲しさが募ってしまうから。
そんな感情が増えすぎてしまうと、その気持ちをどう扱っていいのかわからなくなってしまう。
愛しさが溢れてしまい、いつも以上に甘えたくなって、いつも以上に彼の側を離れられない私に変えられ、困ってしまう。
創介は「どうしたの?」とか「甘えん坊さんだね」なんて、私の表情を窺いながら頭を撫でてからかうけれど…。
そうさせているのは、彼自身なのだという自覚が伴っていなくて、もどかしくなる。
私は一時も離れたくない。この想いが通常なのに。
創介はそうじゃないの?
私と一緒の気持ちにはならないの?
問いかけてみるけど。
甘い瞳でじっと見つめられ「かわいいね」とはぐらかされるばかり。
私はこの“一緒に過ごせる日”と、“そうでない日”の、“そうでない日”が、こんなにも得意じゃないのに。
“今日”は嬉しいことに“一緒に過ごせる日”みたい。
“一日の開始の合図”の後の、創介の行動が慌ただしくないから。
不思議の国のアリスに登場してくる白ウサギのように、時間に急かされていないのは、余裕のある証拠。
朝ご飯の準備から、身支度の流れ。足音までもが、出かける日とはまったく違う。
本来の創介らしい、心が落ち着く優しい音。
「モモ。朝ご飯、用意してあるからね。ゆっくりお食べ。」
私は創介の、この落ち着きがあって穏やかな声が大好き。
広がりがあって静かに響き、心ごと包みこんでくれるような。そんな、安心感を覚える喋り方。
その印象は、初めて声をかけてもらった、その時から変わらない。
きっと、この先もずっと…私はこの声に、名前を呼ばれ続けたいと願うのだと想う。
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