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19 送り犬
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「で、どこ行くの?」新富士駅で新幹線を降りると、僕は芹那に聞いた。
「もちろん、富士山でしょ!」
軽いなあ! てか、富士山のどこ? と僕は思ったけど、まあとりあえずできるだけ富士山に近づける場所がいいのだろうと思い、僕はバスの時刻表に「富士宮口五合目」と言うのを見つけて、その時間を確かめた。
「あ、ちょうど出るとこだよ? あれ乗ろう!」と芹那に手を引っ張られるようにして僕たちは一日に四便しかないバスに乗った。
五合目に近づくにつれ、空気がまったく別のものに変わっていくのがバスの中からでもわかった。
「すごいね。空気って、こんなんなんだ……」芹那もそれに気づいたのか、そう言った。それは単に自然の中に入った時に感じる空気の澄んだ状態を言っているのではなく、なにかこう、霊的な意味でまったく違うものだった。異質なものが何もない。
「神の世界に近いね。これなら結界張らなくてもよさそう……」と芹那はぼんやり言った。
山に入ると途中、酷い霧に見舞われた。窓の外を眺めていても、時折窓に近いところにある木々の緑がぼんやり見えるだけで、景色らしい景色は全く見えない。
「このまま異世界に行っちゃいそう」と芹那が言ったが、それはシャレにならないと僕は思った。
僕らは左側の席に座り、二人でそちらの方を眺めていたのだけれど、ふと右側に視線を感じて僕はそちらを見た。
「えっ……」と僕は思わず声を出した。バスの窓を覗き込む、巨大な二つの目が見えたのだ。そしてその二つの目は、明らかに僕と芹那の方を見ていた。目があまりに大きすぎて窓を塞いでいたために、顔や体の様子はわからなかった。けど……、けど……、いったい今のなんだ?
「え、なに? どうしたの?」と言って芹那も右側を見る。けどそこにはもう、巨大な目は消えていた。
「い、いま、目が見えた」
「目が見えた?」
「たぶん、化け物だ……」
「こんな昼間に? 疲れてるんじゃないの? だってほら、向こう側に座ってる人たち、別に何も変わった様子ないよ?」
本当だ。たぶん、人の目には見えていない。けど、何かがいたのは確実だ。目の大きさだけで、バスの窓を隠してしまうほどの巨大な何かが……。
富士宮口五合目と言う場所に着いた。特に何もないとこだなあと僕は思ったが、芹那は「うどんあるよ、食べよう! えっ、溶岩ラーメンってなに!?」だとか、「標高2400Mって書いてある! それって雲より上? ねえ和也!」とか「お土産買おうよ、お土産!」などと意外と楽しそうにはしゃいでいた。
「ねえ和也、落ち込んでる? 元気ないよ? 天叢雲剣、見つからなかったから……」
「いや、そんなこともないよ。ただ……」
「ただ?」
「これからどう動けばいいのかわからない……」
「そうだねー……」
僕たちはとくに何も考えるでもなく、登山口の方に歩いて行った。舗装が途切れ、地面がむき出しになっている。芹那がそちらの方に向けて歩き出した。
「え、ねえ、登るの?」
「まさか! でも気分だけでも味わおうかなと思って。それにしても寒いね!」
確かに寒い。周りの人たちを見ると、冬服に雨具を着こんだようないで立ちで、僕らは完全に浮いている。
「さっきのこれからの、って話だけどさあ、和也の話をまとめると、まず天叢雲剣を見つけるでしょ? で、そのあと八岐大蛇のもう一匹の蛇を見つけて合体でしょ?」
が、合体!?
「それで、踏切渡ってあっちの世界行って、あ、あ、あ、あまの、なんだっけ? あまがえるみたいなやつ」
「天逆毎のことかい?」
「そうそれ。天逆毎を倒して、美津子ちゃんを連れて帰ってくる。って流れよね」
「うん。極限まで軽く大雑把に略して言うとそう言うことだね」
「で、いま和也が頭を抱えてるのは、天叢雲剣はどこ? 蛇はどこ? ってこの二つでしょ?」
「うん」
「で、ヒントとしては、天叢雲剣に関しては、壇ノ浦の戦いのあった海、蛇に関しては正人って友達の行方を捜す。ってことよね」
「まあそうだね」
どこまで行くのか知らないけど、僕たちは足の進むまま登山道をのんびり登って行った。
辺りをまた霧が包んでいたが、これは霧なのか、もしかして雲なのか、なんてことを考え、特に気にはしなかった。
「ねえ、私思うんだけどさ、ほんとにそれで解決するのかな」
「どう言うこと?」
「和也はさあ、過去に戻って天逆毎さえ倒せば、すべて元通り、って思ってない」
「違うの?」
「確かに、和也目線で見ればそうなんだけどさ……」
「どう言うこと?」
「例えば、香奈子視線で見れば、どうなるのかな? って」
「香奈子視線……」
「和也は向こうの世界で天逆毎を倒すことができなかったから、この世界がこんな化け物だらけになっちゃったんだと考えているんでしょ?」
「うん」
「で、また向こうにもどって天逆毎さえ倒せば、こっちの世界も元通り! って考えてるわけじゃない?」
「うん」
「けどね、ほんとにそうなのかなって」
「どう言うこと?」
「よくあるじゃない。パラレルワールドってやつ」
「なにそれ?」
「だからあれよ、もし私たちが向こうの世界に戻って過去を元通りにしたとしても、時間の流れは二通りになって続いていくのよ。それが和也目線と香奈子目線」
僕はよくわからず芹那の顔を見た。
「んー、どう説明したらいいのかな……。だからね、過去で天逆毎を倒して化け物のいなくなった世界と、倒し損ねて化け物のいる世界との、二つの世界に分かれて存在しちゃうことにならないのかなって」
「じゃあ、もし僕が過去の世界に戻って天逆毎を倒しても、今のこの世界は切り離されて続いて行くって言うこと?」
「そう。そう言うこと。私たちは化け物のいない未来の世界に戻れるけど、残された香奈子は相変わらず化け物のいるこの世界で生きていかなきゃいけないのかも。でもわからない。確かめることもできないし」
「どうして確かめられないの?」
「電車のレールみたいなものよ。右に切り替えたらもう左には進めない。左に切り替えたらもう右には進めない。けれど両方とも線路は続いている。片方の線路を走り出した電車は、もう片方の線路には行けないし、そっちがどうなっているかも知ることはできない」
「そんなの……。それじゃあ天逆毎を倒しても、こちらの世界では香奈子や他の人たちは、ずっと化け物に殺され続けなければいけないってわけ?」
「ええ、そう言うことよ」
「そんなの、いったいどうすればいいんだよ」
「わからない。わからないけど、私が思いつく方法が一つあるとすれば……」
「なに?」
「この世界の化け物を一匹残らず倒してから、あちらの世界に戻るってこと」
「化け物を一匹残らず!?」
「そうよ。そうすれば、心置きなく時間の流れを元に戻すことができる」
「けどそんなことしてたら……」
「そうね、あまりに時間がかかる。でもよ? 考えてみて。私たちがこの世界に戻って来た時のこと」
「わからないよ。なんだい?」
「時間がズレてたわよね」
「うん。そうだったね」
「つまり、どれだけ急いで戻ったところで、向こうでどれだけの時間が経っているかわからない。逆にどれだけ時間をかけて戻ったところで、向こうではたった三日しかたっていないかもしれない」
「そんなの、ただの運任せじゃないか」
「そう言うことになるけど、でも、どうしようもないわ。それにそれって、良くも悪くも、私たちにはたっぷり時間があるってことじゃない?」
辺りに人が見えなかった。もしかしたら霧で視界が悪いだけで、霧の中にいるのかも知れないと思った。
息が切れるほど辛い道でもなかったので、しんどくなれば戻ればいいやくらいの軽い気持ちで登っていた。
ふと後ろに気配を感じて振り向くと、一匹の大きな犬がいた。
僕たちが止まるとその犬も止まり、僕たちが歩き出すとその犬も歩いた。
「可愛いね」と芹那は言ったけど、なんだか見慣れない種類の犬で、僕はあんまり可愛いとは思わなかった。
「もちろん、富士山でしょ!」
軽いなあ! てか、富士山のどこ? と僕は思ったけど、まあとりあえずできるだけ富士山に近づける場所がいいのだろうと思い、僕はバスの時刻表に「富士宮口五合目」と言うのを見つけて、その時間を確かめた。
「あ、ちょうど出るとこだよ? あれ乗ろう!」と芹那に手を引っ張られるようにして僕たちは一日に四便しかないバスに乗った。
五合目に近づくにつれ、空気がまったく別のものに変わっていくのがバスの中からでもわかった。
「すごいね。空気って、こんなんなんだ……」芹那もそれに気づいたのか、そう言った。それは単に自然の中に入った時に感じる空気の澄んだ状態を言っているのではなく、なにかこう、霊的な意味でまったく違うものだった。異質なものが何もない。
「神の世界に近いね。これなら結界張らなくてもよさそう……」と芹那はぼんやり言った。
山に入ると途中、酷い霧に見舞われた。窓の外を眺めていても、時折窓に近いところにある木々の緑がぼんやり見えるだけで、景色らしい景色は全く見えない。
「このまま異世界に行っちゃいそう」と芹那が言ったが、それはシャレにならないと僕は思った。
僕らは左側の席に座り、二人でそちらの方を眺めていたのだけれど、ふと右側に視線を感じて僕はそちらを見た。
「えっ……」と僕は思わず声を出した。バスの窓を覗き込む、巨大な二つの目が見えたのだ。そしてその二つの目は、明らかに僕と芹那の方を見ていた。目があまりに大きすぎて窓を塞いでいたために、顔や体の様子はわからなかった。けど……、けど……、いったい今のなんだ?
「え、なに? どうしたの?」と言って芹那も右側を見る。けどそこにはもう、巨大な目は消えていた。
「い、いま、目が見えた」
「目が見えた?」
「たぶん、化け物だ……」
「こんな昼間に? 疲れてるんじゃないの? だってほら、向こう側に座ってる人たち、別に何も変わった様子ないよ?」
本当だ。たぶん、人の目には見えていない。けど、何かがいたのは確実だ。目の大きさだけで、バスの窓を隠してしまうほどの巨大な何かが……。
富士宮口五合目と言う場所に着いた。特に何もないとこだなあと僕は思ったが、芹那は「うどんあるよ、食べよう! えっ、溶岩ラーメンってなに!?」だとか、「標高2400Mって書いてある! それって雲より上? ねえ和也!」とか「お土産買おうよ、お土産!」などと意外と楽しそうにはしゃいでいた。
「ねえ和也、落ち込んでる? 元気ないよ? 天叢雲剣、見つからなかったから……」
「いや、そんなこともないよ。ただ……」
「ただ?」
「これからどう動けばいいのかわからない……」
「そうだねー……」
僕たちはとくに何も考えるでもなく、登山口の方に歩いて行った。舗装が途切れ、地面がむき出しになっている。芹那がそちらの方に向けて歩き出した。
「え、ねえ、登るの?」
「まさか! でも気分だけでも味わおうかなと思って。それにしても寒いね!」
確かに寒い。周りの人たちを見ると、冬服に雨具を着こんだようないで立ちで、僕らは完全に浮いている。
「さっきのこれからの、って話だけどさあ、和也の話をまとめると、まず天叢雲剣を見つけるでしょ? で、そのあと八岐大蛇のもう一匹の蛇を見つけて合体でしょ?」
が、合体!?
「それで、踏切渡ってあっちの世界行って、あ、あ、あ、あまの、なんだっけ? あまがえるみたいなやつ」
「天逆毎のことかい?」
「そうそれ。天逆毎を倒して、美津子ちゃんを連れて帰ってくる。って流れよね」
「うん。極限まで軽く大雑把に略して言うとそう言うことだね」
「で、いま和也が頭を抱えてるのは、天叢雲剣はどこ? 蛇はどこ? ってこの二つでしょ?」
「うん」
「で、ヒントとしては、天叢雲剣に関しては、壇ノ浦の戦いのあった海、蛇に関しては正人って友達の行方を捜す。ってことよね」
「まあそうだね」
どこまで行くのか知らないけど、僕たちは足の進むまま登山道をのんびり登って行った。
辺りをまた霧が包んでいたが、これは霧なのか、もしかして雲なのか、なんてことを考え、特に気にはしなかった。
「ねえ、私思うんだけどさ、ほんとにそれで解決するのかな」
「どう言うこと?」
「和也はさあ、過去に戻って天逆毎さえ倒せば、すべて元通り、って思ってない」
「違うの?」
「確かに、和也目線で見ればそうなんだけどさ……」
「どう言うこと?」
「例えば、香奈子視線で見れば、どうなるのかな? って」
「香奈子視線……」
「和也は向こうの世界で天逆毎を倒すことができなかったから、この世界がこんな化け物だらけになっちゃったんだと考えているんでしょ?」
「うん」
「で、また向こうにもどって天逆毎さえ倒せば、こっちの世界も元通り! って考えてるわけじゃない?」
「うん」
「けどね、ほんとにそうなのかなって」
「どう言うこと?」
「よくあるじゃない。パラレルワールドってやつ」
「なにそれ?」
「だからあれよ、もし私たちが向こうの世界に戻って過去を元通りにしたとしても、時間の流れは二通りになって続いていくのよ。それが和也目線と香奈子目線」
僕はよくわからず芹那の顔を見た。
「んー、どう説明したらいいのかな……。だからね、過去で天逆毎を倒して化け物のいなくなった世界と、倒し損ねて化け物のいる世界との、二つの世界に分かれて存在しちゃうことにならないのかなって」
「じゃあ、もし僕が過去の世界に戻って天逆毎を倒しても、今のこの世界は切り離されて続いて行くって言うこと?」
「そう。そう言うこと。私たちは化け物のいない未来の世界に戻れるけど、残された香奈子は相変わらず化け物のいるこの世界で生きていかなきゃいけないのかも。でもわからない。確かめることもできないし」
「どうして確かめられないの?」
「電車のレールみたいなものよ。右に切り替えたらもう左には進めない。左に切り替えたらもう右には進めない。けれど両方とも線路は続いている。片方の線路を走り出した電車は、もう片方の線路には行けないし、そっちがどうなっているかも知ることはできない」
「そんなの……。それじゃあ天逆毎を倒しても、こちらの世界では香奈子や他の人たちは、ずっと化け物に殺され続けなければいけないってわけ?」
「ええ、そう言うことよ」
「そんなの、いったいどうすればいいんだよ」
「わからない。わからないけど、私が思いつく方法が一つあるとすれば……」
「なに?」
「この世界の化け物を一匹残らず倒してから、あちらの世界に戻るってこと」
「化け物を一匹残らず!?」
「そうよ。そうすれば、心置きなく時間の流れを元に戻すことができる」
「けどそんなことしてたら……」
「そうね、あまりに時間がかかる。でもよ? 考えてみて。私たちがこの世界に戻って来た時のこと」
「わからないよ。なんだい?」
「時間がズレてたわよね」
「うん。そうだったね」
「つまり、どれだけ急いで戻ったところで、向こうでどれだけの時間が経っているかわからない。逆にどれだけ時間をかけて戻ったところで、向こうではたった三日しかたっていないかもしれない」
「そんなの、ただの運任せじゃないか」
「そう言うことになるけど、でも、どうしようもないわ。それにそれって、良くも悪くも、私たちにはたっぷり時間があるってことじゃない?」
辺りに人が見えなかった。もしかしたら霧で視界が悪いだけで、霧の中にいるのかも知れないと思った。
息が切れるほど辛い道でもなかったので、しんどくなれば戻ればいいやくらいの軽い気持ちで登っていた。
ふと後ろに気配を感じて振り向くと、一匹の大きな犬がいた。
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