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32 鱗(うろこ)
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「どうしてもついてくるの?」
「はい。もうこれは、和也と何度も話し合ったんです」芹那が聞くと、香奈子はそう答えた。
豊玉姫が帰ったその日、僕と芹那は一刻も早く滋賀県の伊吹山に行こうと話し合って決めた。
「行くなら早い方がいいわ。今日の昼のうちに出ましょう。そうすれば今日中に滋賀県に着く。寝るのは新幹線の中で。いいわね?」芹那はそう言い、眠さに殺されそうになりながら、僕らは二人で旅の準備をした。そしてそのことを香奈子に伝えると、やはり香奈子は頑(かたく)なに一緒に行くと言い張った。
「どうして香奈子にまで言うの!?」うちに訪ねてきた香奈子を見て、芹那は僕を責めるように言った。
「そう言う約束なんだ」
「どう言う約束よ」
「秘密は作らないって」
「あんたたちそれってまるで……」と何か言いかけたところで、芹那は僕たちの関係に気が付いたようだった。
芹那は僕と香奈子を狭い本殿の中に呼んで話をした。お父さんには聞かれたくなかったのだろう。旅のことも、いま僕たちが置かれた状況のことも。
「まあ、あなた達の仲について詮索するつもりはないわ。けどね、これはあなたを巻き込むわけにはいかないの」芹那は香奈子に諭すように言った。
「どうしてですか? 私と和也はもう……」
「香奈子、あなた、いちど死んでるのよ? またそんな目に遭いたいの?」
「芹那さんに助けていただいたのは聞きました。ほんとに、なんとお礼を言っていいかわかりません」
「そんなことはいいの。私の言いたいのは……」
「わかってます! けれど、これはもう譲れないんです。たとえまた同じ目に遭おうと、それで命を失ったとしても、私にはそれ以上に失いたくないものがあるんです」
「それが、和也ってわけ……?」
「はい。それに……」
「それに?」
「私と和也の命では、その重さが違います」
「なに言いだすの? 怒るわよ? 命に重さの違いなんてあるわけないじゃない」
香奈子は泣きそうになりながら、首を横に振って言った。「怒ってもいい! そんなの綺麗ごとです! 私が生きていたところで、誰の命も救えない! 今までずっとそうだった! ずっと悔しかった! けれど、和也さえ生きていてくれれば、救える命は数え切れないんです! 私は大切な友達と母親を失いました。もし和也がいなくなれば、死ぬ人もどんどん増えて、私と同じ思いをする人もどんどん増えていきます!」
「綺麗ごとは香奈子でしょ! あなたが死んだら、和也の気持ちはどうなるの? あなたたち、お互い好きなんでしょ? 和也のことが好きならば、和也が香奈子のことを失った時の気持ちだってわかるはずでしょ!?」
香奈子は涙を流しながら頭を縦に振った。「でも……、でも……、答えなんかないんです。私の我がままなのかもしれない……、でも、どうしようもないの……。和也のこと……、和也のこと……、好きで好きでどうしようもなくて、私の知らないところで戦っていると思うだけで胸が苦しくて死んでしまいそうで……」
香奈子はそれ以上こらえることができない様子で、ついに声を押し殺すこともできずに泣き出した。
「駄目よ、やっぱり。連れて行けない。だって香奈子は生身の人間なのよ?」
「そ、それなんだけどさ……」僕は思い切って話すことにした。「香奈子、ちょっと試して欲しいことがあるんだ」
「試して欲しいことってなに?」話せない香奈子に代わって、芹那が聞いた。
「どうやって説明したらいいのかわからないのだけど、香奈子、目を閉じて、鵺と戦うところを想像して欲しい。ただ目の前に鵺がいることを考えるのではなく、今まさに鵺と戦おうとしている自分を想像するんだ。剣を持ち、鵺に対する憎しみを思い出すんだ」
「和也、なにをさせようとしているの?」芹那が怪訝な顔で聞いた。
「いいから、ちょっと見てて欲しいんだ」僕は静かにそう言うと、香奈子の両の手を取り、その手の平を上に向けて息を殺した。
しばらく、泣き止むことのできない香奈子の様子に変化はなかった。
けれど……。
香奈子は呼吸を整え、僕の言った通りに頭の中に鵺を想像しているようだった。表情が歪み、いつかあの体育館で鵺と対峙した時のように肩を強張らせていた。
やがて香奈子の手の平が、うっすらと光を放ち始めた。
海の底で夜光虫が光を放つように、それはほんの微かな光だった。
そしてふわりふわりと光の粒子が舞い始めた。
数は少なく、目を凝らさなければそうと気づかないようなものだったけれど。
「こ、これって……」芹那が息を呑んだ。
「香奈子、目を開けてごらん?」僕が言うと、香奈子は夢をそっと吐き出すように目を開けた。
「えっ……? どうして……」
「最初に気付いたのは佐藤なんだ。たぶん、本人もまだ気づいていないだろうと言っていた」
「これって、和也が戦う時の……」
一番驚いているのは香奈子本人のようだった。
「そうだよ。神の光だと佐藤は言っていた。神の魂を受け継ぐ者が放つ光だと」
「け、けど私……」
「うん、香奈子は人さ。人として生まれ、人として生きてきた。でも……」
「でも?」
「ぼくと契りを……」と言いかけたところで僕は目の前に芹那がいることを思い出し、さらになぜだか香奈子に対してまで照れくさい思いでいっぱいになり、言葉を失ってしまった。
「ち、契り!?」芹那は聞き逃していないようだった……。
「と、とにかく、香奈子、これが香奈子にとって良いことなのか悪いことなのかわからないけれど、香奈子はいま、人ではない存在になろうとしている」
「つまり、私たちと同じ、神としての存在になろうとしてるってわけ?」芹那が言った。
僕は頷いた。
「でも、それって結局どう言うことになるの? 香奈子はどう変わると言うの?」
「それは僕にもわからないよ……。ただ、香奈子の体が神としての力を得ていると言うのなら、一つ僕にできることがある」
「できること? 何をするの?」
僕はあの日、正人の家を訪ねた時に拾った、鱗のようなものをポケットから取り出した。
もしスマホに写った写真のように、正人が大蛇に姿を変えているのなら。そしてその正体こそが、僕たちが探していた八岐大蛇、つまり伊吹山に向かっている大蛇だとするならば、この正人の家の前で拾った鱗は正人の体から剥がれ落ちたものに違いなかった。
そして……。
僕はいつかスサノオが真治さんにやって見せたことを思い出していた。
「普通の人間なら、あんなことしちまったら死んじまう」スサノオはそう言っていた。
普通の人間なら……、けれど今の香奈子なら……。
僕はそれを信じて、正人の家の前で拾った鱗を香奈子の胸元にあてがい、そこに右手を重ねた。
「何をしようとしているの?」芹那がそう尋ねたが、僕はもう右手に集中していて答えることができなかった。
やがて僕の手から全身を覆うように光の靄が現れ、その靄は香奈子の体にも広がった。そして僕と香奈子の間にあった鱗は、ゆっくりと香奈子の胸の中に溶け込んでいった。
僕はじっと香奈子を見つめた。
痛がる様子も苦しそうな様子もない。
大丈夫……、うん。大丈夫だ。
僕はそっと手の平を離した。
「あれ、いま持ってたの、無くなっちゃった……」芹那は不思議そうな顔をした。
スサノオはここで真治さんの体に剣を突き立てて見せたけど、僕はとても香奈子にそれを試す気にはなれなかった。ただ僕は、今のは八岐大蛇の鱗で、それを埋め込んだ香奈子の体は、八岐大蛇と同じ身を守る強さを身に着けたことを告げた。
「はい。もうこれは、和也と何度も話し合ったんです」芹那が聞くと、香奈子はそう答えた。
豊玉姫が帰ったその日、僕と芹那は一刻も早く滋賀県の伊吹山に行こうと話し合って決めた。
「行くなら早い方がいいわ。今日の昼のうちに出ましょう。そうすれば今日中に滋賀県に着く。寝るのは新幹線の中で。いいわね?」芹那はそう言い、眠さに殺されそうになりながら、僕らは二人で旅の準備をした。そしてそのことを香奈子に伝えると、やはり香奈子は頑(かたく)なに一緒に行くと言い張った。
「どうして香奈子にまで言うの!?」うちに訪ねてきた香奈子を見て、芹那は僕を責めるように言った。
「そう言う約束なんだ」
「どう言う約束よ」
「秘密は作らないって」
「あんたたちそれってまるで……」と何か言いかけたところで、芹那は僕たちの関係に気が付いたようだった。
芹那は僕と香奈子を狭い本殿の中に呼んで話をした。お父さんには聞かれたくなかったのだろう。旅のことも、いま僕たちが置かれた状況のことも。
「まあ、あなた達の仲について詮索するつもりはないわ。けどね、これはあなたを巻き込むわけにはいかないの」芹那は香奈子に諭すように言った。
「どうしてですか? 私と和也はもう……」
「香奈子、あなた、いちど死んでるのよ? またそんな目に遭いたいの?」
「芹那さんに助けていただいたのは聞きました。ほんとに、なんとお礼を言っていいかわかりません」
「そんなことはいいの。私の言いたいのは……」
「わかってます! けれど、これはもう譲れないんです。たとえまた同じ目に遭おうと、それで命を失ったとしても、私にはそれ以上に失いたくないものがあるんです」
「それが、和也ってわけ……?」
「はい。それに……」
「それに?」
「私と和也の命では、その重さが違います」
「なに言いだすの? 怒るわよ? 命に重さの違いなんてあるわけないじゃない」
香奈子は泣きそうになりながら、首を横に振って言った。「怒ってもいい! そんなの綺麗ごとです! 私が生きていたところで、誰の命も救えない! 今までずっとそうだった! ずっと悔しかった! けれど、和也さえ生きていてくれれば、救える命は数え切れないんです! 私は大切な友達と母親を失いました。もし和也がいなくなれば、死ぬ人もどんどん増えて、私と同じ思いをする人もどんどん増えていきます!」
「綺麗ごとは香奈子でしょ! あなたが死んだら、和也の気持ちはどうなるの? あなたたち、お互い好きなんでしょ? 和也のことが好きならば、和也が香奈子のことを失った時の気持ちだってわかるはずでしょ!?」
香奈子は涙を流しながら頭を縦に振った。「でも……、でも……、答えなんかないんです。私の我がままなのかもしれない……、でも、どうしようもないの……。和也のこと……、和也のこと……、好きで好きでどうしようもなくて、私の知らないところで戦っていると思うだけで胸が苦しくて死んでしまいそうで……」
香奈子はそれ以上こらえることができない様子で、ついに声を押し殺すこともできずに泣き出した。
「駄目よ、やっぱり。連れて行けない。だって香奈子は生身の人間なのよ?」
「そ、それなんだけどさ……」僕は思い切って話すことにした。「香奈子、ちょっと試して欲しいことがあるんだ」
「試して欲しいことってなに?」話せない香奈子に代わって、芹那が聞いた。
「どうやって説明したらいいのかわからないのだけど、香奈子、目を閉じて、鵺と戦うところを想像して欲しい。ただ目の前に鵺がいることを考えるのではなく、今まさに鵺と戦おうとしている自分を想像するんだ。剣を持ち、鵺に対する憎しみを思い出すんだ」
「和也、なにをさせようとしているの?」芹那が怪訝な顔で聞いた。
「いいから、ちょっと見てて欲しいんだ」僕は静かにそう言うと、香奈子の両の手を取り、その手の平を上に向けて息を殺した。
しばらく、泣き止むことのできない香奈子の様子に変化はなかった。
けれど……。
香奈子は呼吸を整え、僕の言った通りに頭の中に鵺を想像しているようだった。表情が歪み、いつかあの体育館で鵺と対峙した時のように肩を強張らせていた。
やがて香奈子の手の平が、うっすらと光を放ち始めた。
海の底で夜光虫が光を放つように、それはほんの微かな光だった。
そしてふわりふわりと光の粒子が舞い始めた。
数は少なく、目を凝らさなければそうと気づかないようなものだったけれど。
「こ、これって……」芹那が息を呑んだ。
「香奈子、目を開けてごらん?」僕が言うと、香奈子は夢をそっと吐き出すように目を開けた。
「えっ……? どうして……」
「最初に気付いたのは佐藤なんだ。たぶん、本人もまだ気づいていないだろうと言っていた」
「これって、和也が戦う時の……」
一番驚いているのは香奈子本人のようだった。
「そうだよ。神の光だと佐藤は言っていた。神の魂を受け継ぐ者が放つ光だと」
「け、けど私……」
「うん、香奈子は人さ。人として生まれ、人として生きてきた。でも……」
「でも?」
「ぼくと契りを……」と言いかけたところで僕は目の前に芹那がいることを思い出し、さらになぜだか香奈子に対してまで照れくさい思いでいっぱいになり、言葉を失ってしまった。
「ち、契り!?」芹那は聞き逃していないようだった……。
「と、とにかく、香奈子、これが香奈子にとって良いことなのか悪いことなのかわからないけれど、香奈子はいま、人ではない存在になろうとしている」
「つまり、私たちと同じ、神としての存在になろうとしてるってわけ?」芹那が言った。
僕は頷いた。
「でも、それって結局どう言うことになるの? 香奈子はどう変わると言うの?」
「それは僕にもわからないよ……。ただ、香奈子の体が神としての力を得ていると言うのなら、一つ僕にできることがある」
「できること? 何をするの?」
僕はあの日、正人の家を訪ねた時に拾った、鱗のようなものをポケットから取り出した。
もしスマホに写った写真のように、正人が大蛇に姿を変えているのなら。そしてその正体こそが、僕たちが探していた八岐大蛇、つまり伊吹山に向かっている大蛇だとするならば、この正人の家の前で拾った鱗は正人の体から剥がれ落ちたものに違いなかった。
そして……。
僕はいつかスサノオが真治さんにやって見せたことを思い出していた。
「普通の人間なら、あんなことしちまったら死んじまう」スサノオはそう言っていた。
普通の人間なら……、けれど今の香奈子なら……。
僕はそれを信じて、正人の家の前で拾った鱗を香奈子の胸元にあてがい、そこに右手を重ねた。
「何をしようとしているの?」芹那がそう尋ねたが、僕はもう右手に集中していて答えることができなかった。
やがて僕の手から全身を覆うように光の靄が現れ、その靄は香奈子の体にも広がった。そして僕と香奈子の間にあった鱗は、ゆっくりと香奈子の胸の中に溶け込んでいった。
僕はじっと香奈子を見つめた。
痛がる様子も苦しそうな様子もない。
大丈夫……、うん。大丈夫だ。
僕はそっと手の平を離した。
「あれ、いま持ってたの、無くなっちゃった……」芹那は不思議そうな顔をした。
スサノオはここで真治さんの体に剣を突き立てて見せたけど、僕はとても香奈子にそれを試す気にはなれなかった。ただ僕は、今のは八岐大蛇の鱗で、それを埋め込んだ香奈子の体は、八岐大蛇と同じ身を守る強さを身に着けたことを告げた。
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