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芹那の話 其の弐
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そうか、私たち、和也がまだスサノオに出会う前の時間に来たんだ。だからスサノオは生きているんだ。でもそれっていったいどれくらい前の話なんだろ。死ぬ前のスサノオに出会えたと言うことは、スサノオを助けられるんじゃないの? 時間の流れを変えられる?
そこで私は思い至った。時間の流れを変えられる……、それって違う考え方をすれば、もう一つの時間の流れを作ってしまうと言うことにならないかしら……。
未来において、化け物のいない世界、スサノオが死んだ化け物の溢れる世界、そしてスサノオが死ななかった世界……。その三つに分かれてしまう。そしてその三つめの世界が、平和な世界だとは限らない。そして二つ目の世界はそのまま継続してしまうのでは?
どうすれば……、どうすればいいんだろう……。
「どうしたい。なんか難しいことでも考えている顔だなあ」
何が正しいのかわからない。でも、目の前にまだ生きているスサノオがいて、このまま黙っていることもできない。それにどのみち、私たちは天逆毎を倒す目的でここに戻ってきたんだ。ならば同じことだろう。いますべてをスサノオに教えれば、この人は天逆毎に勝てるかも知れない。それなら、私たちがやろうとしていたことと同じだ。
「あの! 私は、月読尊です。月読尊の生まれ変わりです」
「はあ? またえれえ奴の名前が出てきたもんだな」
駄目だ。ぜんぜん信用されていない。
「わかるんじゃないんですか?」
「わかるって、なにが?」
「私の正体です。私が月読尊だってこと」
「ああ、残念だが、俺はそう言うのはわからねえ。どこまで知っているのか知れねえが、俺は半分は人間だ。人間と言うより、神の力を失った神だ。お前さんの正体なんてわからねえよ」
「わかりました。それは構いません。ただ、私たちは未来から来たんです」
「未来ってどこのことだ? 初めて聞く名だなあ」
そ、そうなの? 未来って言葉がわからないんだ。
「えっと、その、そこにいる子、その子はあなたの生まれ変わりなんです」
「はあ? こいつが? このひょろひょろした白っこい子供がか? おもしれえこと言うなあ、おい」そう言ってスサノオは笑った。
もうっ、いったい何をどう言ったら信じてもらえるんだろう!?
「なんだかよくわからねえがよう、お前さん、何かを知っているんだな? それを俺に伝えようとしている。けどなあ、俺はそう言うのいらねえぜ。俺はいろんなもん失ってよ、今ここでそいつと二人でいる。何か悪いことが起こるような心当たりもねえ。何か俺の知らねえことを知りたいとも思わねえ。この先はなるようになるんだ。それでいい。だからよう、俺は何も聞く気はねえし、話さなくてもいいぜ」
「でもそれじゃあ、この先大変なことになるんです! たくさんの命が奪われるんです!」
「どう言う理由でだ? いや、待てよ。お前さん、さっき自分は月読尊だって言ったな。それを信じるかどうかは別にして、お前さん、神の力で何かを見たな?」そう言ってスサノオは、私の胸の内を探るようにじっと静かに睨みつけた。
見た、と言うのとは少し違うが、同じことだ。私は頷いた。
「駄目だ駄目だ。そりゃ誰かが死ぬってえなら悲しいことだ。それもたくさん死ぬってえなら助けたい気持ちもわかる。だがな、神の力を使って人の死を知り、それを変えようってのは、そいつの宿運(しゅくうん)を変えるってことだ。それはつまり、この世の理(ことわり)に触れるってことだ。そいつは神でも許されねえことなんだ」
「わかってます! でも、でも!」
「駄目なもんは駄目だ。話はここで終わりだ。俺はもう寝る。お前さんら、休んだらもう出て行くんだ。そして二度と俺の前に現れるな」
私は返す言葉が無かった。
「ただ……、ただ一つ……、いいですか?」
「なんだ」
「この先……、ここにいる子が、再びあなたの前に現れます。その時は、どうかこの子を助けてやってください」
スサノオは黙って和也の顔を見た。そしてしばらく何かを考えると、向こうを向いて横になり、「そん時に考えるさ」と言って眠ってしまった。
明るくなって目を覚ますと、スサノオの姿はもうどこにもなかった。
そこで私は思い至った。時間の流れを変えられる……、それって違う考え方をすれば、もう一つの時間の流れを作ってしまうと言うことにならないかしら……。
未来において、化け物のいない世界、スサノオが死んだ化け物の溢れる世界、そしてスサノオが死ななかった世界……。その三つに分かれてしまう。そしてその三つめの世界が、平和な世界だとは限らない。そして二つ目の世界はそのまま継続してしまうのでは?
どうすれば……、どうすればいいんだろう……。
「どうしたい。なんか難しいことでも考えている顔だなあ」
何が正しいのかわからない。でも、目の前にまだ生きているスサノオがいて、このまま黙っていることもできない。それにどのみち、私たちは天逆毎を倒す目的でここに戻ってきたんだ。ならば同じことだろう。いますべてをスサノオに教えれば、この人は天逆毎に勝てるかも知れない。それなら、私たちがやろうとしていたことと同じだ。
「あの! 私は、月読尊です。月読尊の生まれ変わりです」
「はあ? またえれえ奴の名前が出てきたもんだな」
駄目だ。ぜんぜん信用されていない。
「わかるんじゃないんですか?」
「わかるって、なにが?」
「私の正体です。私が月読尊だってこと」
「ああ、残念だが、俺はそう言うのはわからねえ。どこまで知っているのか知れねえが、俺は半分は人間だ。人間と言うより、神の力を失った神だ。お前さんの正体なんてわからねえよ」
「わかりました。それは構いません。ただ、私たちは未来から来たんです」
「未来ってどこのことだ? 初めて聞く名だなあ」
そ、そうなの? 未来って言葉がわからないんだ。
「えっと、その、そこにいる子、その子はあなたの生まれ変わりなんです」
「はあ? こいつが? このひょろひょろした白っこい子供がか? おもしれえこと言うなあ、おい」そう言ってスサノオは笑った。
もうっ、いったい何をどう言ったら信じてもらえるんだろう!?
「なんだかよくわからねえがよう、お前さん、何かを知っているんだな? それを俺に伝えようとしている。けどなあ、俺はそう言うのいらねえぜ。俺はいろんなもん失ってよ、今ここでそいつと二人でいる。何か悪いことが起こるような心当たりもねえ。何か俺の知らねえことを知りたいとも思わねえ。この先はなるようになるんだ。それでいい。だからよう、俺は何も聞く気はねえし、話さなくてもいいぜ」
「でもそれじゃあ、この先大変なことになるんです! たくさんの命が奪われるんです!」
「どう言う理由でだ? いや、待てよ。お前さん、さっき自分は月読尊だって言ったな。それを信じるかどうかは別にして、お前さん、神の力で何かを見たな?」そう言ってスサノオは、私の胸の内を探るようにじっと静かに睨みつけた。
見た、と言うのとは少し違うが、同じことだ。私は頷いた。
「駄目だ駄目だ。そりゃ誰かが死ぬってえなら悲しいことだ。それもたくさん死ぬってえなら助けたい気持ちもわかる。だがな、神の力を使って人の死を知り、それを変えようってのは、そいつの宿運(しゅくうん)を変えるってことだ。それはつまり、この世の理(ことわり)に触れるってことだ。そいつは神でも許されねえことなんだ」
「わかってます! でも、でも!」
「駄目なもんは駄目だ。話はここで終わりだ。俺はもう寝る。お前さんら、休んだらもう出て行くんだ。そして二度と俺の前に現れるな」
私は返す言葉が無かった。
「ただ……、ただ一つ……、いいですか?」
「なんだ」
「この先……、ここにいる子が、再びあなたの前に現れます。その時は、どうかこの子を助けてやってください」
スサノオは黙って和也の顔を見た。そしてしばらく何かを考えると、向こうを向いて横になり、「そん時に考えるさ」と言って眠ってしまった。
明るくなって目を覚ますと、スサノオの姿はもうどこにもなかった。
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