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レーンの体。

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レーンの体になって、二週間経った。

徹底した食事管理と、適度な運動により、ようやく外で走ることができる程度の肉体にはなった。
もし、あの体のまま走っていたら、すぐに膝を壊していただろう。何事も準備が必要だ。それさえ気を付けていれば、必ず結果は付いてくる。

「……お嬢様。最近どうされたのですか?」
「あぁカレン。ちょっと走りたい気分だったのよ」

少しずつ、レーンっぽく、おちゃめに振る舞うことはできるようになったと思う。カレンに対して、笑いながらピースサインを送った。しかし――。

「……あの、体調でも悪いのですか?」

……心配させてしまった。

「そのようなおどけたポーズなど、ここ数年はほとんどなさっていなかったのに」
「あっ、そうだっけ……」

しまった。確かに最近のレーンは……。
……かと言って、レーンのように振る舞おうと思っても、私は、人の悪口を言うことができない。
そんな時間があれば、何か自分を向上させるものを学びたい。そう考えてしまう。

「えっと。私は大丈夫よカレン。ほら、この通り」

その場でジャンプしてみせると、カレンが驚いて、体を仰け反らせた。

「な、な……。お、お嬢様が、跳んだ?」
「そんな大げさな……。その場で軽く跳んだだけじゃない」
「いえ。そもそもお嬢様が自分の足で歩いていることすら、違和感があるのに……」

レーン……。いくらなんでも運動しなさすぎよ。
さっき、隣国へ行く姿を見たけれど、少しだけ動きがゆっくりだった気がするし、背が曲がっていた。あのままだと、二ヵ月経つ頃には、よくない結果になっているかもしれない。自分の体でもあるので、なんとも心配だった。

「カレン。フェンシアに、レ……。ナンナの食事を、もう少しクリーンにするように、伝えてくれないかしら」
「お嬢様。私が今、お嬢様の望む食事しかお持ちしていないのと同じように。フェンシアもまた、ナンナ様の望むものしか、お出しすることはできません」
「……」

直接、話すことができればいいのに。
レーンは、私との会話を、これまで以上に拒んでいる。少しでも近づくと、騒ぎだして、兵を呼ぶと言い出すので、どうにもならない。

……話し合えば、きっとわかるはずなのに。

「お嬢様。急に空を見上げて、どうされたのですか?」
「……ちょっと、ナンナのことをね」
「……そうですね。体調があまりよろしくないそうですし、心配する気持ちはわかります」

きっとそれは、言い訳にすぎない。そう言えば、日々の課題をこなさなくて済むから。だけど……。

「ですが、大丈夫でしょう。ナンナ様は優秀です。少し休めば、また今まで通り、活動できるかと思われます」
「……そうね」

とりあえず私は、この体をなんとかしよう。

レーンとして、生きていくしかないのだから。
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