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姉の末路
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「おい聞いたか? 例の女、安く遊べるらしいぜ」
「マジかよ……。いくらくらいなんだ?」
二人の男が、身振り手振りを交えながら、楽しそうに会話している。
彼らは裏路地でひっそりと卑猥な会話を楽しんでおり……。
今、街で行われている催しには、一切興味を示していない様子だ。
◇
「ギャレン。背筋を伸ばしなさい」
「これ以上伸びないですよ……」
「そんなことはありません。胸を張り、真正面を見据えるのです」
リズに注意をされて、ギャレンはなんとか実行しようとしたが、やはりこれ以上背筋は伸びなかった。
「なるほど。では表情ですね。もっとキリっとした顔をしなさいな」
「顔はどうにもなりませんよ」
「はぁ。さっきあれだけキスをしたのが、失敗だったかしら」
街で行われているパーティも一段落ついて、リズとギャレンは二人で向かい合って食事をしている。
二人の時間を邪魔しないために、誰も近づくことはなかった。
しかし、遠目からの視線は感じる。
リズは見栄えを気にしているのだった。
「ナイフの持ち方がだらしない」
「……」
「そもそも食べる順番が美しくないわ」
リズの説教に、ギャレンは戸惑うばかりだった。
「やぁこんにちは」
そんな二人に、声をかける貴族が一人。
空気の読めない奴が来た。そんな風に思ったリズだが、顔を見て考えを改めた。
「……ヴェリク様」
隣国の伯爵家令息、ヴェリク・ジオマークだったのだ。
ギャレンは席を立ち、ヴェリクに挨拶をしたが、ヴェリクはそれを手で制した。
「良いんだ。すぐ終わる話しだから。……少しだけ、リズを借りてもいいかい?」
「はい……」
「ありがとう」
ヴェリクはリズを連れて、人のいない路地へと向かった。
「聞きましたよ。ミゼスは娼婦になったんですか?」
「娼婦ならまだ良い方です。豊かな暮らしができる人もいますから」
「……この路地で会話している男たちがいました。随分と安い。だったら僕が買ってしまおうかと思って」
「なるほど。女性の私にそれを言うのは、随分とはしたないことだと思いますが」
「……妹の私に。ではなくて?」
「ふふっ。そちらが正しいかもしれません」
なぜ笑えるんだ。と、ヴェリクはリズが不気味に思えて仕方なかった。
「私の名前を出さずとも、伯爵家であればすぐに買うことができるでしょう」
「そういうものなんですか。いやぁ実は性奴隷を買ったことは一度も無くて……」
「良い機会になると良いですね。それでは」
「はい。ありがとうございます」
ヴェリクに手を振って、リズはギャレンの元へと戻った。
「マジかよ……。いくらくらいなんだ?」
二人の男が、身振り手振りを交えながら、楽しそうに会話している。
彼らは裏路地でひっそりと卑猥な会話を楽しんでおり……。
今、街で行われている催しには、一切興味を示していない様子だ。
◇
「ギャレン。背筋を伸ばしなさい」
「これ以上伸びないですよ……」
「そんなことはありません。胸を張り、真正面を見据えるのです」
リズに注意をされて、ギャレンはなんとか実行しようとしたが、やはりこれ以上背筋は伸びなかった。
「なるほど。では表情ですね。もっとキリっとした顔をしなさいな」
「顔はどうにもなりませんよ」
「はぁ。さっきあれだけキスをしたのが、失敗だったかしら」
街で行われているパーティも一段落ついて、リズとギャレンは二人で向かい合って食事をしている。
二人の時間を邪魔しないために、誰も近づくことはなかった。
しかし、遠目からの視線は感じる。
リズは見栄えを気にしているのだった。
「ナイフの持ち方がだらしない」
「……」
「そもそも食べる順番が美しくないわ」
リズの説教に、ギャレンは戸惑うばかりだった。
「やぁこんにちは」
そんな二人に、声をかける貴族が一人。
空気の読めない奴が来た。そんな風に思ったリズだが、顔を見て考えを改めた。
「……ヴェリク様」
隣国の伯爵家令息、ヴェリク・ジオマークだったのだ。
ギャレンは席を立ち、ヴェリクに挨拶をしたが、ヴェリクはそれを手で制した。
「良いんだ。すぐ終わる話しだから。……少しだけ、リズを借りてもいいかい?」
「はい……」
「ありがとう」
ヴェリクはリズを連れて、人のいない路地へと向かった。
「聞きましたよ。ミゼスは娼婦になったんですか?」
「娼婦ならまだ良い方です。豊かな暮らしができる人もいますから」
「……この路地で会話している男たちがいました。随分と安い。だったら僕が買ってしまおうかと思って」
「なるほど。女性の私にそれを言うのは、随分とはしたないことだと思いますが」
「……妹の私に。ではなくて?」
「ふふっ。そちらが正しいかもしれません」
なぜ笑えるんだ。と、ヴェリクはリズが不気味に思えて仕方なかった。
「私の名前を出さずとも、伯爵家であればすぐに買うことができるでしょう」
「そういうものなんですか。いやぁ実は性奴隷を買ったことは一度も無くて……」
「良い機会になると良いですね。それでは」
「はい。ありがとうございます」
ヴェリクに手を振って、リズはギャレンの元へと戻った。
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