4 / 8
ルルエ 十二歳
しおりを挟む
結局、結婚式にリリナは来なかった。
「リリナ様は、来ませんでしたね……」
セシールが、悲しそうに呟いた。
「なんですか。リリナに興味がお有り?」
「いえ……。そういうわけではないですが。今日から家族になるお方ですので」
最近リリナは、どんどん美しくなっていた。私よりもずっと……。だから、セシールにその気が無いとわかっていても、過剰に反応してしまう。
「リリナは、私のことを酷く嫌っています。そんな私と結婚したセシール様にも……。きっと、顔を合わせることはないでしょう」
「なんとかして、二人の関係にも光が刺してくれると、僕としては嬉しいのですが……」
「無理ですね。私がいくら歩み寄っても、彼女は無視をするのだから」
「無視、ですか?」
「えぇ。もう二年近く、言葉を交わしておりませんの」
「そんな……」
まるで自分のことにように、セシールが表情を歪めた。彼の心優しいところはとても好きだけど……。この件に関してだけは、同情されたくなかった。
こっちがどれだけ歩み寄っても、リリナは良い顔をしない。それどころか、いつもあの鋭い目つきで睨んでくるのだ。
両親が、彼女の存在をひた隠しにしているから、誰にもバレていないけど……。剣はともかくとして、魔法の腕前は、もうとっくに抜かれている。きっと、彼女の右腕が、正常であったら……。今頃、セシールの横にいるのは、私ではなかったかもしれない。
そういう意味では、二年前に実行しておいてよかったとは思っている。
……それ以上に、毎日酷い罪悪感で、押しつぶされそうになるけれど。
いつまでも、バカなままでありたかったと思う。人に酷い怪我を負わせ、人生を奪った後でも、何も気にすることなく、自由気ままに振る舞えた、あの頃のように。
きっと私はこれから、歳を重ねるごとに、罪悪感を重ねていく。それに耐えきれなくなった時、私はどうなってしまうのだろうか。
「そういえば、先日教会で、適性を調べていただいたのですが……。無事、剣豪を授かることができました」
適正。それは、一生を決める大事なステータス。
例えば、今セシールが言った剣豪は、王族であれば必ず欲しい能力だ。
「それはめでたいことですわ。でも、セシール様の両親は、そのようなこと、申しておりませんでしたが?」
「実は内緒にしていたのです。この式を終えたあとに、サプライズで発表するから、待っていてくれと申しまして……」
男であれば、十二歳。女性であれば、十四歳で受ける適正診断。
夫であるセシールが、剣豪とわかった今、私は最低でも白魔導士を授からないといけない。最高のパターンは聖女だ。けど、これは厳しいと思う。私の一族の女性は、一度も聖女が誕生したことがないから。
「楽しみですね。ルルエ様の適正も」
「……そうですわね」
私は二年後が、不安で仕方なかった。
「リリナ様は、来ませんでしたね……」
セシールが、悲しそうに呟いた。
「なんですか。リリナに興味がお有り?」
「いえ……。そういうわけではないですが。今日から家族になるお方ですので」
最近リリナは、どんどん美しくなっていた。私よりもずっと……。だから、セシールにその気が無いとわかっていても、過剰に反応してしまう。
「リリナは、私のことを酷く嫌っています。そんな私と結婚したセシール様にも……。きっと、顔を合わせることはないでしょう」
「なんとかして、二人の関係にも光が刺してくれると、僕としては嬉しいのですが……」
「無理ですね。私がいくら歩み寄っても、彼女は無視をするのだから」
「無視、ですか?」
「えぇ。もう二年近く、言葉を交わしておりませんの」
「そんな……」
まるで自分のことにように、セシールが表情を歪めた。彼の心優しいところはとても好きだけど……。この件に関してだけは、同情されたくなかった。
こっちがどれだけ歩み寄っても、リリナは良い顔をしない。それどころか、いつもあの鋭い目つきで睨んでくるのだ。
両親が、彼女の存在をひた隠しにしているから、誰にもバレていないけど……。剣はともかくとして、魔法の腕前は、もうとっくに抜かれている。きっと、彼女の右腕が、正常であったら……。今頃、セシールの横にいるのは、私ではなかったかもしれない。
そういう意味では、二年前に実行しておいてよかったとは思っている。
……それ以上に、毎日酷い罪悪感で、押しつぶされそうになるけれど。
いつまでも、バカなままでありたかったと思う。人に酷い怪我を負わせ、人生を奪った後でも、何も気にすることなく、自由気ままに振る舞えた、あの頃のように。
きっと私はこれから、歳を重ねるごとに、罪悪感を重ねていく。それに耐えきれなくなった時、私はどうなってしまうのだろうか。
「そういえば、先日教会で、適性を調べていただいたのですが……。無事、剣豪を授かることができました」
適正。それは、一生を決める大事なステータス。
例えば、今セシールが言った剣豪は、王族であれば必ず欲しい能力だ。
「それはめでたいことですわ。でも、セシール様の両親は、そのようなこと、申しておりませんでしたが?」
「実は内緒にしていたのです。この式を終えたあとに、サプライズで発表するから、待っていてくれと申しまして……」
男であれば、十二歳。女性であれば、十四歳で受ける適正診断。
夫であるセシールが、剣豪とわかった今、私は最低でも白魔導士を授からないといけない。最高のパターンは聖女だ。けど、これは厳しいと思う。私の一族の女性は、一度も聖女が誕生したことがないから。
「楽しみですね。ルルエ様の適正も」
「……そうですわね」
私は二年後が、不安で仕方なかった。
168
あなたにおすすめの小説
守護神の加護がもらえなかったので追放されたけど、実は寵愛持ちでした。神様が付いて来たけど、私にはどうにも出来ません。どうか皆様お幸せに!
蒼衣翼
恋愛
千璃(センリ)は、古い巫女の家系の娘で、国の守護神と共に生きる運命を言い聞かされて育った。
しかし、本来なら加護を授かるはずの十四の誕生日に、千璃には加護の兆候が現れず、一族から追放されてしまう。
だがそれは、千璃が幼い頃、そうとは知らぬまま、神の寵愛を約束されていたからだった。
国から追放された千璃に、守護神フォスフォラスは求愛し、へスペラスと改名した後に、人化して共に旅立つことに。
一方、守護神の消えた故国は、全ての加護を失い。衰退の一途を辿ることになるのだった。
※カクヨムさまにも投稿しています
神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜
星里有乃
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」
「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」
(レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)
美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。
やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。
* 2025年10月25日、外編全17話投稿済み。第二部準備中です。
* ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。
* この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。
* ブクマ、感想、ありがとうございます。
双子だからと捨てておいて、妹の代わりに死神辺境伯に嫁げと言われても従えません。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
ツビンズ公爵家の長女に生まれたパウリナだったが、畜生腹と忌み嫌われる双子であった上に、顔に醜い大きな痣があったため、殺されそうになった。なんとか筆頭家老のとりなしで教会の前に捨てられることになった。時が流れ、ツビンズ公爵家に死神と恐れられる成り上がりの猛将軍との縁談話を国王から命じられる。ツビンズ公爵家で大切に育てられていた妹のアイリンは、王太子と結婚して王妃になる事を望んでいて……
幸せじゃないのは聖女が祈りを怠けたせい? でしたら、本当に怠けてみますね
柚木ゆず
恋愛
『最近俺達に不幸が多いのは、お前が祈りを怠けているからだ』
王太子レオンとその家族によって理不尽に疑われ、沢山の暴言を吐かれた上で監視をつけられてしまった聖女エリーナ。そんなエリーナとレオン達の人生は、この出来事を切っ掛けに一変することになるのでした――
王子に買われた妹と隣国に売られた私
京月
恋愛
スペード王国の公爵家の娘であるリリア・ジョーカーは三歳下の妹ユリ・ジョーカーと私の婚約者であり幼馴染でもあるサリウス・スペードといつも一緒に遊んでいた。
サリウスはリリアに好意があり大きくなったらリリアと結婚すると言っており、ユリもいつも姉さま大好きとリリアを慕っていた。
リリアが十八歳になったある日スペード王国で反乱がおきその首謀者として父と母が処刑されてしまう。姉妹は王様のいる玉座の間で手を後ろに縛られたまま床に頭をつけ王様からそして処刑を言い渡された。
それに異議を唱えながら玉座の間に入って来たのはサリウスだった。
サリウスは王様に向かい上奏する。
「父上、どうか"ユリ・ジョーカー"の処刑を取りやめにし俺に身柄をくださいませんか」
リリアはユリが不敵に笑っているのが見えた。
ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!
沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。
それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。
失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。
アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。
帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。
そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。
再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。
なんと、皇子は三つ子だった!
アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。
しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。
アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。
一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる