ムカつく悪役令嬢の姉を無視していたら、いつの間にか私が聖女になっていました。

冬吹せいら

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リリナ 十四歳

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「おめでとう。リリナ」
「……信じがたいことです」

私は、両親に花束を受け取ってもなお、信じられませんでした。

今日は十四歳の誕生日。教会で、神にいただいた適性は……。聖女だったのです。
アルシアル家では初めての聖女の誕生に、様々な人が祝いの言葉を送ってくれました。その一つ一つに、私は感動の涙を流したのです。

思えば、ここまで、怒涛の人生でした。八歳のころに、怪我で右腕の自由を失ってからは、ずっとふさぎ込んできましたが……。十二歳で、姉のルルエの夫、セシール様のアドバイスを受け、白魔法に目覚め。そこからまた大きく、私の生活は変化したのです。

我が国には、聖女がいませんでした。そして、姉は希望になれず、この国は、祈りが足りないのではという不安の声。白魔法を極めた私は、祈りの力を身に着けることができ、すぐに立場が変わっていきました。両親も、片腕の私を人前に出すことを躊躇わなくなり、私もまた、徐々にではありますが、右腕を言い訳にしなくなりました。

むしろ、右腕がこうなってしまったから、魔法をこれだけ極めようと思えた。そんな風にさえ思うようになっていったのです。
言葉遣いは自然に治っていきました。誰からも愛され、感謝を受ける日々は、私にとって、本当にかけがえのない日々で……。

だから、きっと適性は白魔導士になると思っていました。これだけ白魔法を極めていれば、それ以外にないだろうと。しかし、神はこうおっしゃいました。

「お前ほどの聖人が、一般的な人生を送れるわけがなかろう。聖女となり、歴史に名を残せ」

その場で私は、泣き出してしまいました。鏡の中の私に慰められたのは、不思議な経験でしたが……。今となっては、いい思い出です。

晴れて聖女となった私は、両親の次に、セシール様にご報告に参りました。するとセシール様は、

「君なら絶対に、そうなると思っていたよ。これからは聖女として、我ら兵士たちと一緒に、国を守ってくれ」

そうおっしゃって、指輪を授けてくれました。王子が令嬢に渡す指輪の意味を、知らないわけもない私は、心底驚きましたが……。セシール様の笑顔を見ると、何も言えなくなりました。

「色々。すまなかった。君を無い者にしようとしたり、屋敷に閉じ込めたり……。本当に、どれだけ謝っても、取り返しのつかないことをしたと思っているよ」
「頭を上げてくださいお父様。今、こうして……。聖女となることができたのは、お父様とお母様が、私を見捨てることなく、育ててくださったからです。利き手ではない左手の剣を、いつも成長に合わせて、馴染みやすい物に買い替えてくださいました。魔法の書物は、なんでも買い与えてくださいました……。とても恵まれた環境であったと、私は思っております」
「あぁ……。リリナ。なんて優しい子」

お父様とお母様に抱きしめられ、私はまた泣きました。この泣き虫だけは、聖女となった今でも、治らないようです。このままでは、泣き虫聖女として、歴史に残ってしまうでしょうから、早く改善しないといけませんね……。
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