魔王の息子に恋したので、私は悪役令嬢になって、この国を追放してもらおうと思います!

冬吹せいら

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優しいメイドさんです!

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「我の息子を、貴様に?」
「そうです!」
「……ならぬ」
「どうしてですか!?」
「貴様のような、頭のおかしい娘に、我が息子を預けるなど、あまりに愚かであろう」

酷い言われ方です!ですが、私は諦めません!

「私、黒魔法使えます!魔族の一員として、立派に人間をぶちのめすことができますよ!」
「我らは別に、人間と争うつもりは……」
「良くないですよそういう引っ込み思案は!あなたたち魔族が、全然人間の領土に攻めてこないから、人間どうしで争いが起きるんです!わかりますか!?」
「もうよい……。どんな理由があろうと、息子を渡すことはできん」
「くそっ……。どうしてわかってくれないんですか!こんなにあの子のことを思っているのに!」

魔王がまた、ため息をつきました。いいえ、ため息をつきたいのはこっちの方です!そう思っていると、後ろのドアが開きました。メイド服のようなものを着た、美しい魔族です。私を見ると、ギョッとしました。聖女と見間違えたのでしょう。

「安心なさい。私は聖女ではないわ!」
「さ、さようですか……。あの、魔王様。ヴィルディ様がお見えです」
「……マジ?」

ヴィルディとは……。魔王の息子の名前!!

「ど、どこにお見えなの!?」
「え、あ、あの」
「ベリーヌ。その者にヴィルディの場所を教えてはならぬ!」
「あ、え」
「ベリーヌというのね!?あなた教えなさいよ!あの子はどこに!?」
「ど、どうすれば」

ベリーヌが目を回して、その場に倒れてしまいました。魔族特有の尻尾が、完全にしなしなになっています。体力の無いメイドさんですね……。

そして、気が付くとドアが閉まっていました。おそらくこのドアの向こうに、ヴィルディ様がいます。私の夫となる方です。

「魔王。ドアを開けなさい」
「……ならぬ」
「ど~してですか!ヴィルディ様を抱きしめたい!」
「貴様、本当に頭がおかしいのだな。絶対に息子はやらぬぞ」
「そんなぁ……。じゃあ、なんでもしますからぁ!魔族の慰め者でもなんでもぉ!」
「……魔族は魔族としか交配はせぬ」
「えええぇええ!?じゃあ私、ヴィルディ様と子供は……」
「作れぬな」
「が~ん……」

悲しみで吐きそうです。ヴィルディ様とは、十人ほど子供を作り、幸せな家庭を作り上げるつもりでしたのに……。

……ですが、諦めませんよ!だからってヴィルディ様と結婚することに変わりはありません!

「息子さんを私にください!」
「ならぬ」
「私の国をあげますから!」
「いらぬ」
「金銀財宝をあげますから!」
「いらぬ」
「絶対ヴィルディ様を、幸せにしますからぁ!!!!」
「……」
「お願いしますぅ……」
「なぜ、かようにヴィルディを好いておるのだ」
「愚問ですね……。好みのタイプだからに決まってるでしょう!?」
「外見のみで判断するか……。哀れだな」
「だって、喋ったこと無いですもん。外見しか、判断基準が無いですよね?」
「……ならぬ」

ちっ。今良い感じに会う流れに持って行けたと思ったのに!

「う、うぅ……」

ベリーヌが目を覚ましました!

「ベリーヌ!あなたもお願いして!?ヴィルディを私の夫にするの!」
「な、なんの話ですか……」
「……もうよい。ヴィルディは今、異国へ逃がした」
「い、今?そんなに早くできるもんです?」
「魔法でな……。だから、出て行ってくれ」
「……うぅ」

私は涙が止まりませんでした。教会では全て嘘泣きでしたが、今回は本当に、悲しくて仕方がなかったのです。

これでも決死の覚悟でした。戻る国はありません。悪役令嬢の紋章を刻まれては、魔族と共に暮らす他ないのです……。

「……魔王様。この方、本当にヴィルディ様を、思っておられるようであります」

ベリーヌが、背中を擦ってくれました。暖かいです。母性を感じます。誰かにこうして優しくされたのは久しぶりで、また涙が出ました。

「……そうか?」
「はい……。これほどまでに、悪意を感じない方も、珍しいかと」
「ううむ……」
「魔王様……」
「……わかった。顔を上げよ」
「……へっ?」

私はぐっちゃぐちゃの顔面を、魔王に向けました。

「しばらく我が城で暮らすがよい。そこでの態度を見て判断しよう」
「……本当ですか!?」

思わず魔王に飛びつきそうになった。しかし、どうやら近づけないオーラがあるようで、私はその場に倒れこんでしまいました。

「……ベリーヌ。空き部屋に連れて行ってやれ」
「はい。魔王様」

こうして私は、一歩前進したのでした。
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