魔王の息子に恋したので、私は悪役令嬢になって、この国を追放してもらおうと思います!

冬吹せいら

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優しい魔王の息子

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「んふふ~」

ヴィルディ様と、向かい合っています。長い眉毛が自然にカールしていて、美しい……。尻尾もまだ小さく、まるで小動物のような可愛らしさを感じざるを得ません。

「……レンフィア様。鼻息が荒いですよ」
「え、ええぇ。そうね。ごめんなさい」
「……べリーヌ。この方が?」
「そうです。レンフィア様です」

ヴィルディ様が、私の目を真っすぐに見つめてきます。顔が真っ赤になりました。だけど幸せです。こんなに近い距離で、最愛の人に……。

「なんだか……。オークのような人です」
「お、オーク!?」
「あうぅ」
「す、すいません。私ったら、また大声を……」

鼻息を荒くし、目を見開き、大きな声を出す……。確かにオークですね。反省しなければ。
背筋を正し、私はヴィルディ様に微笑みかけました。これでも……。容姿には自信があるのです。ヴィルディ様の隣に並んでも、きっと恥ずかしくない。そう胸を張って言うことができます。

「その。どうして魔王の息子である僕に、人間であるあなたが……?」
「どうして……。ですか。まさに一目惚れというか……。あぁでも、今こうしてお話をしていて、その声色だとか、仕草だとか。やはりどこをどう取っても……素晴らしいなと」

この人の妻になりたい。共に日々を過ごしたい。そんな気持ちが溢れてしまいます。

「本来、魔族と人間が恋に落ちることは、稀なのですが……。おそらくレンフィア様は、黒魔法に長けておられるので、こうして心が惹かれてしまったのでしょうね」
「なるほど……」
「……実は」

ヴィルディ様が、緊張した様子で口を開きました。

「さっきから……。レンフィア様を見ていると、心がザワザワするのです」
「……本当ですか?」
「はい。あの、べリーヌ。これは」
「落ち着いてくださいヴィルディ様。おそらく、ヴィルディ様も高い魔力を有しておられるので、心が勝手に共鳴を起こそうとしているのです。理屈でお考えになってください」
「理屈……」
「べリーヌ。恋愛は理屈じゃないわ」

べリーヌがため息をつきました。どうやら呆れているようですが、本当にそうなのだから仕方ありません。

「ヴィルディ様は、人間である私を妻にすることに対し、抵抗はありますか?」
「……はい」

はっきり言われてしまった。

「ですが、それは……。波を起こしたくないからです。人間と魔族は、お互いに不干渉という立場です。もし僕たちが結婚してしまったら……。何かは起きてしまうような気が」
「何も起きません。私は悪役令嬢の紋章を刻まれています。もはや国にとって、私は人間ではないのです」
「そんな。悪役令嬢に?」
「はい……」

私は紋章をヴィルディ様に見せました。息を飲むようにして、それをじっくり眺めています。

「……これほどのことをされてまで、僕と結婚したいと」
「そういうことです。魔王やべリーヌの前では、少々ふざけすぎていましたが……。この気持ちは本物です。後ろに何も残しておりません。退路は塞がれているのです」
「レンフィア様。それではまるで、脅迫です。ヴィルディ様は心がお優しい故、そのような言い方をされると……」
「それならば、どうすれば良いのですか」

「べリーヌはおられるか!」

いきなりドアが開き、魔族の兵が現れた。スケルトンだ。

「どうされました?」
「門の前に、ジナルドと名乗る王子が来ておる。そこの人間……。貴様を出せと申しておるが?」
「そんな。ジナルド様が?」

どうしてここが……。

「ヴィルディ様。少しお待ちください」

私はスケルトンの後に続いて、門へ向かった。
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