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クマさんと人間の夫美
しおりを挟む何日も同じ服を着ているのか、もう服というよりボロきれを着ていると言った方がいい有様の子供たち。髪はボサボサだし肌は垢で黒くなっている。
私が彼らをじーっと見ていると、それに気がついたマイクが子供たちのことを教えてくれた。
「あの子供たちは施設にいるんだ。実は俺もそうでな。酷いところで碌な食事も出されないから、ああして腹を空かせて町までやって来るんだ」
幸いマイクさんには剣の才能があったため、早くに施設を抜けて入団できたそうだ。そういえば、ラウレンくんも施設にいたと言っていた。そこでの経験が人間不信に陥る原因になったとジェシカさんが話してくれたのを思い出す。……一体どんなところなんだろう。
「さ、行くぞマル」
呼ばれた私は頭を切り替えて、町の警備にあたるため二人に付いて行った。
その日の晩、私はこれからについて考えた。ずっとクマの姿でやってきたけれど、そろそろ人の姿で何が出来るのかを考える時なんじゃないか。
人の姿かぁ……何をするにしても、まずは着るものがないと始まらない。さてどうしよう。私には頼れる女性がこの町にはいない。
「心配しているだろうし、ここは一回ジェシカさんたちの所へ戻ろうかな」
というわけで、翌日の早朝、まだ誰も起きていない時間に厩舎を後にして目的地へと向かった。着く頃には日が昇り、辺りは明るくなりつつあった。走り続けて行くと、丘の上に懐かしい家が見えてきた。
「あ、ジェシカさ~ん!」
ちょうど彼女は水汲みから戻ってきたようで玄関前の樽に水を入れているところだった。私の姿を捉えるとバケツの水をひっくり返す勢いで駆け寄ってきた。
「フーミンじゃないか!あれからどうしたのか心配してたんだよ。まったく急に飛び出しちまって、元気だったかい?」
私は嬉しさのあまり二本足で立つと彼女を腕の中にぎゅっと抱きしめた。うわ~ん、会いたかったよ~、ジェシカさんの体柔らか~い……それにいい匂い♡
私は再会の喜びに浸った。一方のジェシカさんはというと、圧迫死の危険にさらされていた。おっと、ごめんよ。
「フーミン!!」
騒ぎを聞いてラウレンくんが外に飛び出してきた。
「ただいま、ラウレンくん!」
約一月ぶりのラウレンくんは少しだけ成長していた。また美少年っぷりがレベルアップしたねぇ。良い良い。
騎士団ではずっとクマのふりしていたから、意思疎通が出来るって素晴らしい!アホ馬のアースとは会話以前の問題だし。
喜びを分かち合った私たちは、朝食をとりながらいろんな話をした。現在、私が騎士団に仮所属していると言うと、二人とも目をまん丸にして驚いていた。そりゃ驚くわな。
「それでね、今日は頼み事があって来たの」
「そうなのかい?あたしらに出来ることなら助けてやりたいが、頼み事って何なんだい?」
私は包み隠さず全てを話して聞かせた。雷に打たれて異世界に転移して来たこと、クマの姿は仮の姿で本当は人間であること。ジェシカさんもラウレンくんもすっごく驚いていた。驚かせてばっかりでごめんね。
私は話すよりも見せたほうが説得力あると思い、ジェシカさんの部屋で腕輪を取り外し、借りた服を着て二人の前に立った。
「あ、あんたフーミンなのかい?……ほんとに人間になっちまった。それに、そんな美人だったなんて……あたしゃ夢でも見ているのかね」
ジェシカさんは信じられないといった様子で私を見た。ラウレンくんは、私と目が合うと顔を真っ赤にして下を向いてしまった。あ~嫌われたかな。人間不信だもんね。分かってはいたけど、露骨に顔を背けられると傷つくなぁ。
「ラウレンくん、騙すようなことしてごめんね。でもこの姿も私で、外見は変わっても私は私だから出来れば嫌いにならないでほしい。勝手なこと言ってるのは分かってる。けど、いつかこの姿ごと家族として受け入れてくれたら嬉しいな」
ラウレンくんは、そんな私に顔をりんごのように赤くしたまま小さく頷いてくれた。ありがとう、ラウレンくん!嬉しさのあまりついいつもの癖で彼を抱きしめそうになったけれど、スイッとよけられてしまった。くすん。
「それで頼みごとてのは何なんだい?」
ジェシカさんに改めて聞かれ、私は下着と服を貸してほしい旨を伝えた。
「なんだ、そんなことかい。私のお古でよければ何着かあげるよ。でもサイズがねぇ、私のとだと合っていないからお直ししないとダメだろうね」
そうなのだ。今着ているジェシカさんのワンピース、胸元はスカスカなのにウエストはキツキツ。うわ~ん、分かってはいたけどさぁ。現実は非情である。
「私のスタイルが悪いせいでサイズが合わなくてごめんよ。すぐに直してやるから安心しな」
は?
今何かまた聞き捨てならないワードがあったような?
ジェシカさんのスタイルが悪い?
そうか、そうだよね。こっちの美形ってみんな小柄でほっそりしているもんね。私からすればジェシカさんの体型が羨ましいくらいなのに。やっぱりヘンテコな世界だなぁ。
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