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クマさんとラウレンくん

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 「よし、お直しできたよ。フーミン、着てごらん」
 
 ぱぱぱっとワンピースのサイズを手直してくれたジェシカさん。編み物もそうだけど、手が器用な人って本当にすごいと思う。私はそういう細かい作業が昔から苦手で、家庭科の先生によく怒られてたっけ。

 お礼を言って早速試着。大幅に胸回りを詰めてもらい、ウエストにゆとりをもつ様にしてもらったからピッタリになりました。うん。良かった。……と思う反面、乙女心は複雑だ。

 「それで、これからどうするんだい?」

 私は町で警備中、ひどい状態の子供たちを見たことを話した。ボロ服を着た子供たちは痩せ細っていて、路地裏でひもじそうにしていたのだと。

 「そういうわけで、子供たちに何かしてあげたくて」 

 してあげたいだなんて思い上がりも甚だしいって分かってる。一人で出来ることなんてたかが知れてるし。
 それでも、誰かが動かなくちゃ何も変わらない。それだったら最初の一歩を自分が踏み出してもいいんじゃなかと思ったのだ。

 「ああ、施設の子らだろう?あの子らのほとんどは醜いせいで親に捨てられた子たちなんだよ。それで、あの子らが住んでる施設っていうのがまた劣悪なところでね。国から支給はされているらしいんだが、環境が改善することはなくてさ。ラウレンもそこで辛い思いをしたんだよ」

 それを聞いて私は悲しくなった。この世界の美醜の軋轢あつれきは、私が想像した以上に根深いようだ。それでも私は自分が出来ることをするしかない。

 ジェシカさんとラウレンくんに勧められて、この日はここで一泊することになった。……何も伝えずに出て来ちゃったから、団長さんたち心配してるだろうなぁ。

 この日、私たちは初めて三で食卓を囲んだ。私がいなくなってからどうしていたのか、私のいた世界はどんなところなのか、などいろんなことを話した。
 ラウレンくんは終始無口で、話しかけても目も合わせてくれなかった。けれど時々視線を感じてそちらを向くと、物言いたげなグリーンの瞳と視線が合った。
 そうだよね、見知らぬ人間が自分の生活圏に入られたら嫌だよね。私はしゅんとして、なるべく彼とは距離を置くことにした。

 「そうだ、ジェシカさん。明日の水汲みは前みたいに私に任せてね。他に何か力仕事ある?」

 お世話になってばかりじゃいけないと、私は力仕事を進み出た。その後、今夜はどこに寝るかという話になり、私はクマの姿で小屋で眠ることにした。

 再びブレスレットをつけた私は、お休みの挨拶をして小屋に入る。懐かしい~。そういえば、私ってどの辺りに転移したんだろう。小屋まで自分で歩いて来たのかな。あの時の記憶はあやふやで、ほとんど覚えていなかった。
 それでも、見つけてくれたのがジェシカさんたちで良かった。私はこれからについて思いを巡らせながらも眠気には勝てず、こてんと眠りに落ちた。

 翌朝、私はバケツを口に咥えて水汲みに森の泉までやって来ていた。以前はラウレンくんと行っていたけれど、今彼とはギクシャクしているので声をかけずに一人で行くことにした。

 朝の澄んだ空気が心に沁みる。私は泉に移るクマの姿をじっと見つめた。自分で言うのもアレだけど、この姿、超可愛いと思うんだよね。つぶらな瞳に黒い鼻。頭の上には丸い耳がついていて、まるで巨大テディベアのようではないか。これはみんなモフモフしたくなるわけよね。

 そんな我が身を見つめながら、私はそっと腕輪を外した。すると今度は見覚えのある人の姿になった。どこにでもいそうな日本人顔、凹凸に乏しい寸胴ボディ。集団の中にいたら周囲に埋もれて誰も私を見つけられないだろう。ああ、もう少し胸があったらな~モミモミ。ああ、お腹の肉が取れたらな~プニプニ。ああ、プリッとした上を向いたお尻が欲しい!私はくるっと回って水面にお尻をうつした。

 その時だった。ガサっと葉の揺れる音がした。

 「誰っ!?」

 音のした方を見ると、そこには目を見開いて立ち尽くすラウレンくんがいた。

 「ぎゃぁ~!!ラララララウレンくん!?どうして君がここにいやがるのかなぁ?」

 私はしゃがんで露出面積を最小限にした。おいこら凝視すんな。

 「今の……み、見た?」
 「えっ、み、見てない!いや、ちょっとだけ見た……じゃなくて……う、うん」

 つまり見たんだね。……はず!はずすぎる!!穴があったらそこに入りたい!!
 大体どうしてラウレンくんここにいるかなぁ。私と一緒は嫌だろうと思って気を使って一人で来たのに。

 「見苦しいものをお見せしました……。クマの姿に戻るからちょっと後ろむ……は、は、ハックション!!」

 さ、寒いっ!そうだよもう秋だもんね。風邪をひいたら大変だ、私はラウレンくんに後ろを向いててもらうようお願いすると、その隙にクマの姿に戻った。ふう。

 「もう大丈夫だよ。ごめんね、変なものを見せてしまって」

 申し訳なく思いながら彼の様子を伺うと、彼は泣きそうな顔で、まるで助けを求めるかのようにこちらを見ていた。

 えっ、どうした!?

 「フーミン、なんか変なんだ。身体が熱くて、こ、ここが、か、硬くなって、つらいよぅ……」

 彼の指差す場所に目を移すと、そこにはなんと彼の息子が苦しそうにズボンを押し上げてテントを張っていたのだった!!


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