オーシャンエッジプロジェクト プロミネンス 

sin art

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21話 反乱

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『今日のラボの隣にあるチャバというお店にお昼を食べに行きます。何か話をしたいのだったらそこでどうですか?』

 

エドガーの携帯にメールの通知があり、見てみるとそこには島田賢太郎からの連絡だった。

寝起きに煙草をくゆらせメールの返信をする。


『了解。そこで昼を食べながらゆっくりと昔話でもしよう』


 エドガーは画面の送信ボタンをポチリと押すと送信完了の通知音がなった。

宿泊いた宿は工事業者が泊まるような民宿で今時珍しく和室で敷布団で寝るタイプであった。窓の横に設置されていた椅子に座り立ち上る煙をしばらくぼーっと眺めていた。


「やっぱり布団っていうのは慣れないな。藺草の匂いはすっきりしていいが、俺はやはりベット派だな」
 

 腰をさすりながらエドガーは独り言をつぶやく。


「さて、どう話すか」
 
くゆらせた煙が窓の隙間に吸い込まれて外に出ていく。

室内と外の気温差が窓に結露を生じさせていた。

窓から見える景色はすっかり紅葉に染まり、宿の前を歩いている人はちらほらセーターを着こんでいる。エドガーはひとしきり朝の煙草を吸い終わると厚手の革ジャンを着込み宿をチェックアウトした。


「うう、寒い。もう冬だな」
 
 宿から通りに出ると木枯らしが枯葉を舞い上げ吹き抜けていく。エドガーは丁度走ってきたタクシーを捕まえ賢太郎が所長をしている研究所へ急いだ。

「おー暖かい。運転手さん、オーシャンエッジ開発研究所へ向かってくれないか?」

「オーシャンエッジ開発研究所ね。お客さんは研究所の職員かなんか?」

「まあ、そんなとこだ。待ち合わせに遅れそうだからなるべく早く頼む」

「はいよー」

 
少しやる気のなさそうな運転手は来た道をUターンし、街中を外れ小高い山の上に向かって走っていった。

林道をしばらく走ると視界が開け大きなゲートが現れてきた。ゲートの上には「GTオーシャンエッジラボ」という看板の下に警備員が二人、門の脇に立っていた。



「はーい、止まってください」

 警備員の一人がタクシーを止め車内をジロジロと見渡す。

「えーっと、今日はどのような要件ですか?」

「職員との打ち合わせだよ。はい、身分証明書」


 エドガーは胸のポケットから写真付き身分証明書のカードを取り出し職員の目の前に突きつける。


「パ、パープルエリアの方ですか。申し訳ありませんでした。お通りください」


 警備員はそういうと待合室に待機しているもう一人の警備員に手で合図を送りゲートを開かせる。

「ご苦労様。寒いのに大変だね~」

「ははは。もうそろそろ交代なので」

「そうか、手間取らせて悪かったね。小一時間ほど会議をしてくる。帰りもよろしく頼むよ」

「はい、了解しました」


 若い警備員は発進したタクシーに向かって敬礼し、見送った。


「あんた、何者?」

 タクシーの運転手はバックミラー越しにエドガーに話しかける。


「ん?見ての通りのナイスガイ?」

「ははは。面白いあんちゃんだ、気に入ったよ」

「あ、運転手さん、ここの店で大丈夫、停めてくれる?」

 
エドガーはラボの手前にあるおしゃれなカフェの前でタクシーを止めた。

「中には入らないの?」

「ああ、ここのカフェのコーヒーが絶品でね。いつも一杯飲んでから仕事することにしてるんだ。えーと2000エッジでいいかな?おつりは運転手さんのモーニングコーヒ代にしてくれ」

「お、兄ちゃん、ありがとう!また呼んでくれな!」

 タクシーの運転手はそういうと車をUターンさせ来た道を戻っていった。



「さて」

 エドガーは少し深呼吸をして店へと向かった。

腕時計を確認すると丁度12時ぴったりでとガラスでできた店の扉越しに見える店内はお客の影が多い。

カランコロン。


「いらっしゃいませーお一人ですか?」

「いや、待ち合わせをしている。二人だ」

「待ち合わせですか?店内に待ち合わせの方はいらっしゃいますか?」

 エドガーはぐるりと店内を見渡すと窓際の席に島田賢太郎がこちらを向いて手を上げていた。

「来ているみたいだ」

「はい。どうぞごゆっくりー」
 




「よう、賢太郎。おまえより早く来る予定だったけど先越されてたみたいだな」

 エドガーは賢太郎の向かいにすわり、注文を取りに来た店員におすすめの軽食を頼んだ。

「ぼくも、同じので」

「かしこまりました」

 健太郎はエドガーと同じメニューを頼むと店員は丁寧にお辞儀をして次のお客のオーダーを聞きに行く。しばらくの間沈黙が続きテーブルのスコールの上においてあったお冷の氷がカランと音を立てた。



「それで、話ってどんな話?随分と神妙な顔してるけど」

「ふっ、俺のナイスガイが更に上がってる?」

真顔で答えたエドガーに健太郎は思わず吹き出す。

「ぷっ。変わってないなー、エドガーは」

「お互いにな。冗談はここまでにしておこう。これを」


 エドガーは内ポケットから手紙が入っている封筒を取り出し賢太郎に渡した。


「…手紙?」

「ああ、帰ったら内容を見てくれ。ここでは誰が聞いているか分からないからな」

「わかった。ざっくりいうとどういう内容なんだ?」

「…GT社についてだ。パープルサークルで俺が見聞きした事を書いてある。もし協力してくれるなら手紙でオーシャンエッジの家に手紙で送ってくれ。通信機器は全てGT社の息のかかっている連中が管理しているからな」

「…わかった」

 
賢太郎は手紙を自分の内ポケットにしまうと肘をつき額の前で両手を組んだ。

旧友と話をして緊張がゆるんだのか肩を落としどっと疲れが出た様子であった。


「賢太郎?」

「ああ、悪い。最近少し激務でね。GT社が次から次へと要望を出してきやがる。全く人をロボットかなんかだと勘違いしてるよ。昨日久々に休みが取れてね。息子とのキャッチボールも三か月振りだったよ。ずっとラボに箱詰めだったからね」

「所長の立場は辛いな。でもこれは所長であるお前にしか頼めないことだ。このまま行けばオーシャンエッジはGM社の食い物に成り下がる。俺と一緒に戦ってくれ。賢太郎」

「…エドガー、変わってないなお前は。お前だけじゃない。ライアン、アルテミスも。あの頃みんなで話あったことを実現していってる」

「お前もな、賢太郎。オーシャンエッジは人類の希望。決して食い物にさせてはダメなんだ」

「ああ、そうだな。手紙、帰ったら読ませてもらうよ」

 エドガーと賢太郎は拳と拳を突き合わせ握手を交わした。

「この握手の仕方、覚えていたか」

「忘れるわけないだろ」

「そうか、賢太郎、お前も全然変わっていない。安心したよ」



 二人が友情を確かめあっていると先ほどオーダーを聞きに来ていた店員が二人分の食事を持ってきた。

サンドイッチとおにぎりが三つ小さな籠の中に入っており、賢太郎はそれを見た途端お腹がぐーっとなった。


「お、お前お腹が空くとすぐ腹の虫が直るの昔からだな」

「ああ、特に美味しそうな匂いを嗅ぐとな。ここのおにぎりは絶品だぞ」


 二人はすっかり学生時代に戻ったように笑いあい、しばしの昼食のひと時を楽しんだ。 
 
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