オーシャンエッジプロジェクト プロミネンス 

sin art

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22話 葛藤

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 賢太郎はエドガーと別れ、しばらくは部屋の扉を開けないようにと妻の美咲に伝え部屋にこもっていた。


机の上にはエドガーから渡された1通の手紙。

「エドガー、おまえは何を伝えたいんだ?」


 呟きながら手紙の封を開く。
 



 ――――――――――――――

 まず、最初に書いておくが俺は手紙に慣れていない。だからあちこち変なところあるだろうがそこは目を瞑ってくれ。
 

会ってくれてありがとう。

賢太郎は卒業してから内地の研究所勤めだったからなかなか会うことが出来なかったな。

何から書けばいいだろう。


いや単刀直入に言おう。俺は反乱を考えている。なんの反乱かというとGT社への反乱だ。

彼らは表向きは多大なオーシャンエッジへのインフラ投資をはじめ資材や施設の提供を行い、今やGT社無しではオーシャンエッジの運営は難しいだろう。

航路の海賊対策などは莫大な費用が掛かる。そしてオーシャンエッジの誰もがGT社の存在を無くてはならないものとして認識している。
 

しかし俺はある会議の帰り際GT社と俺の親父が話している会話を聞いてしまったんだ。
 
その会話はGT社が海賊にも武器を流しているという内容だった。

俺はその後親父に問い詰めたがそんな話はしていないの一点張り。

終いには出て行けと言われたよ。俺も頭に来ていたから啖呵を切ってしばらくはブラックエリアの荷役の仕事をしていた。

その時たまたまアルテミスに会った。覚えてるか?セントラルスクールの同級生のアルテミスだよ。俺はパープルエリアで見聞きした事の顛末を話した。


アルテミスも薄々は感じ取っていたようで、キャプテンフリードのマーチャントに会わせてもらうことになった。
 
マーチャントも海賊の動向については疑問を抱いていた事が多かったらしく協力してくれることになった。

 
そして今特務艦ザバステメスの艦長として任務に就いている。

 任務に就きながら、GT社の動向調査と息のかかっている連中の洗い出しを行っている。オーシャンエッジ12艦隊の中にもGT社へ忠誠を誓っているものも多くうかつに動くことはできない。
 

賢太郎、お前もGT社が設立したラボに世話になっているのは分かっているが俺たちに協力できないか?

俺はこのまま海賊をのさばらせ、オーシャンエッジを航行する貨物船の襲撃に目を瞑ることは出来ない。GT社は海賊の脅威を利用してどちらにも武器を売買している。
 
お前にも家族がいるのは十分に承知の上。

もし断っても俺は理解するつもりだ。だが協力してくれるのだったら全力でお前とお前の家族は俺が守る。信じてくれ。返信待っている。

 
エドガー・P・ロー


 ――――――――――――
 
 賢太郎は手紙をすべて読み終わるときれいに折りたたみ封の中にしまい込んだ。

かけていた眼鏡を手紙の横に置き、一つ大きなため息をつく。そこへコンコンと扉が鳴る。


「あなた、夕ご飯できたわよ。キリがいいところで食べに来てね」

「ああ、わかった。すぐいくよ」

 
賢太郎は家族を天秤にかけれるのかを考えてみた。

いや、かけれるはずもない。

今の俺には守るものがある。セントラルスクールに通っていたあの頃とは違うんだ。

今のままGT社に従って働いていれば過酷な職場環境ではあるが充分に家族を養っていける。なぜわざわざ危険なリスクをとる必要がある?


GT社にはエージェントと呼ばれる秘密組織があるという。

公には存在しないことになっているが、逆らう者に圧力をかけ、場合によっては命を奪うこともいとわないという。


海賊に武器を提供してるだって?

そんなの何かの間違いに決まっている。

現にGT社はこんなにもオーシャンエッジに貢献してるじゃないか。彼らがいなければ今のオーシャンエッジの発展もなかった。だからこそ俺はGM社のラボに入り研究を続けているんだ。きっと何かの間違いだ。
 


賢太郎は家族へ及ぶリスクを無意識に天秤にかけた末半ば無理やり自分を納得させようとした。

「お父さん、お母さんがご飯冷めるから早くだって」


 いつの間にか息子の海輝がそばに来て立っていた。

「お父さん、大丈夫?」

「ああ、ごめん、少し仕事のことで考え事をしていたんだ」

「ふーん。お仕事大変だね。今日はママの得意なシチューだよ。おいしいシチュー食べればきっといい考えも浮かぶと思うよ。

「ああ、そうだな。心配してくれてありがとう、海輝」






 「いただきまーす」

 二人はリビングのテーブルに乗せられたホカホカのシチューの香りで顔がほころんだ。

「ほんと、美咲の作るシチューはいつも美味しそうだ」

「あら、美味しそうじゃなくて、美味しい、ですよ」

「はは、ごめんごめん。いつも美味しいよ。ありがとう」

 賢太郎はシチューの香りで空腹だったことを思い出し、お腹が大きな声をあげた。


「あら、あなたったら。お腹が早く食べたいっていってるわよ」

「そうみたいだ。いただきます」

 賢太郎の隣で海輝はすごい勢いでシチューを口に掻きこんでいた。


「おくぁわり!」

 海輝は口の中にシチューを入れながらおかわりの注文を母である美咲に出す。

「あらあら、のどに詰まらせないようにね。全く海輝はお父さんと同じシチューが大好きなんだから。」


 そんな光景を微笑ましく賢太郎は眺めていた。この団欒を壊してまで過去の夢を追う必要はない。ないはずだ。

「あなた。どうしたの?あんまり美味しくなかった?」

 いつもは海輝同様、好物のシチューを食べる時はかきこむようにぺろりとたいらげるはずが最初の一さじから進んでいない姿を見て美咲は心配になった。


「いや、なんでもないよ。海輝が美味しそうに食べてるもんだからついつい見入ってしまってね」

「…そう。ならいいけど。そういえばジェネ・フュージョン計画の進み具合はどう?私がいなくなって随分進んだかしら?」

「ああ、あれからかなり研究は進んだよ。混血に秘められた秘密。君の論文通りの現象が起こっている」

「そう、よかった。私も、もう少ししたら合流するからそれまでは頑張って」

「じぇねふゅーじょん計画?って何?」


 シチューを食べ終わり満腹のお腹をさすりながら海輝は両親の話に興味を持った。

「うーん、簡単に言うなら人類の希望さ。人類が今まで積み重ねた深記憶を活用していくっていう研究だ。もしかしたら海輝にも特別な力が眠っているかもしれないぞ?」

 賢太郎は海輝に分かりやすく話したつもりだったが余計に疑問符が増えたようで難しそうな顔で賢太郎を見返した。

「ははは。海輝が大人になった時には実用化されるかもしれないな。最後の鍵がみつかれば」

「まだピースは見つからないの?」

「ああ。あと少しの所までは来てるはずなんだが、何が覚醒のきっかけになっているのかが分からない。もう少しサンプルが必要だ。近々オーシャンエッジへ行って被験者を募集してこようと思ってる」


 エドガーのいるオーシャンエッジへ。

直接会って返事をしよう。賢太郎は三杯目のシチューをお代わりする海輝に苦笑しながら久々の団欒を心から楽しんだ。

 
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