オーシャンエッジプロジェクト プロミネンス 

sin art

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23話 GFプロジェクト

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 賢太郎は休みを終え自分の職場に戻っていた。


 ラボの中では職員が白衣を身に纏い各セクションでそれぞれの研究を行っていた。

 所長である賢太郎はラボで一番大きなセクションで各職員に指示を出す立場であり、休み中は副所長のランドに任せていた。


「ランド、ご苦労様。休み中の間は何か変わったことはあったかい」

「島田所長!休暇終わったんですか?いや、変わったことありまくりですよ!例のGM社の案件、先日届いた検体が。。とりあえず見た方が早いのでこちらへ」


 副所長のランドは賢太郎をラボの保存ルームへと案内する。

「保存ルーム?」


「はい…」

 ランドは意を決してルームキーを扉のパネルに入力する。中に入るとひんやりとした空気のなかコポコポとした空気を水の中に送る音が響く。


「ランド、こ、これは一体?」

 

 部屋の中央に液体の入った大きなカプセルが据え付けられ、そのカプセルの中に子供が膝を抱えるように浮かんでいた。
 
「はい。先日GT社の案件はこの検体を充分に観察し生育させてくれという指示でした。そしてこのカプセルの中に浮かんでいるのはジェネ・フュージョン理論に基づき遺伝子操作で作られた子供のようです」

「なんだって!誰が、なぜこんなことを」

 カプセルの中に入っている銀髪の女の子は胎児のようにチューブに繋がれすやすやと眠っている。賢太郎はカプセルに手をつき悔しそうな表情を浮かべた。

「GM社直属の研究所からの依頼です。この検体が成功したら次々に量産するとのことです。賢太郎所長、我々はどうすれば…」

「……。検体のデータは?」

「はい。ある程度の基本的な資料は添付されていたのですが詳しい所までは」

「そうか。検体のデータを全て収集しろ。合成された遺伝子がどこの地域なのか。発現するすべての可能性をピック
 アップしてくれ」

「はっ。了解しました!」

「あと、調査はくれぐれも内密に。GT社の息のかかったものがどこにいるのかわからないからな」

「は、はい」
 
 部下のランドが保存ルームから出ていくとカプセルの脇に置かれていた賢太郎は添付された資料を手に取った。


「GT社、何を考えている?種の融合は人工的に作らないと各国の合意で決まっているんだぞ。そもそもまだ理論に基づいた発現の例はまだないはず。まさか、成功したのか?」
 

 賢太郎はカプセルに入っている女の子を見つめる。

 顔つきは中東から中央アジアにかけて分布する人々に似ている。

 年のころは9歳から10歳くらいだろうか?

 賢太郎はGM社が犯した罪への嫌悪感と同時にどのようにして安定的にこの歳までカプセルの中で生育させたのかの知的探求心が出てくる。


 胎児のようにへそに繋がれたチューブから栄養を送っているのだろうか?賢太郎は部屋にあったデスクに座り検体についての資料を貪るように読み込んだ。


 




 数日後


「所長!ランドです。先日の案件の詳細な遺伝子の解析が完了しました。今所長のモニターに映します!」 
 
 ランドの少しかん高い声がイヤホンに鳴り響く。

「わ、わかった。さすが仕事が早いな」

「いつも所長の傍で仕事させていただいてるおかげです。まずはDNA基本組成です]


 賢太郎の前にあるモニターにDNAの螺旋構造が立体的に映し出される。

「基本組成を分析したところ、このDNAの分布地域は95%の確率で中東から中央アジア近辺だという結果になりました。中東、中央アジア自体が過去シルクロードで広範囲な交流が盛んだったこともあり、様々な地域の遺伝子が複雑に絡み合っているのですが、最近の合成履歴で言えば、和国との合成が最も強くでています」


「和国?そうか。わかった。能力の発現については何かでているか?」

「いえ、それについては本人が眠っているというのもあり、脳波から読み取ることは出来ませんでした」

「脳波のノイズの分析もしたのか?」

「い、いえ。ノイズまでは」

「ノイズの分析と常に脳波を監視していてくれ。些細な変化も見逃さないように」

「はい。了解しました!」

「頼んだぞ」


 賢太郎はイヤホンの通話を切り、モニターに映し出されたDNA構造と、地域分布を見比べる。
 
「おそらくまだ『キー』は発見されていないはずだ。能力が発現していれば脳波に通常とは違う差分が現れるはず。GT社め、今までの研究への協力はこの為か。お前が正しかったようだな。エドガー」
 


「そのキーを発見するのがあなたの役目じゃなくて?」


 突然の声に賢太郎はぎょっとし、ゆっくりと振り返る。そこには黒いスーツに身を包み長い金髪をコンパクトに結いハットを被った優雅な美女が立っていた。


「お、お前は、誰だ!この研究所の職員ではないな。職員以外は立ち入り禁止だ!出て行ってもらおうか」

「ふふふ、私が誰かですって?しいて言うならエージェントってところかしら?あなたを監視している、ね」

「監視だと!?」

「ええ、あなた最近エドガー・P・ローと接触してるわよね?エドガーとエドガーに接触するものは反乱分子の疑いあり、監視の対象になっているの」

「GT社か」
 

 女は賢太郎に近づきながら被っている帽子を脱ぐと結われた髪が一気に解け艶やかな髪が腰まで垂れる。
 

「あなたにはこれから二つの選択肢があるわ。一つ目はこのまま目の前の検体のキーを探し出しGT社の生体兵器の量産に協力する。もう一つは反乱分子とみなされ今ここで殺される。さあどちらを選ぶ?」
 

 コツコツと靴音を立て賢太郎の目の前に立つ。賢太郎よりは少し小柄だが女の気迫に気圧され賢太郎の方が小さく見えるほどだった。



「エドガーはセントラルスクールの同級生。久しぶりに旧友を温めただけだ。私はこれまでも、そしてこれからも自分の仕事をする」

「はい、おりこうさん。そう、あなたはあなたの仕事をするだけでいい。そうすればこれまでの全てが保証される。あなたの家族もね。くれぐれも変なことは考えないように。私はあなたを殺したくないんだから」


 女は賢太郎の喉から顎まで人差し指で撫でるとにんまりと笑う。

 賢太郎はかいたこともない汗の量が体中から吹き出し生唾を飲み込む。垂れた髪にそのまま帽子を被せ、女は入るときにはコツコツと鳴らせた靴音を鳴らさず、まるで幽霊のように部屋を去っていった。



「はっ!はぁはぁはぁ、ごほごほごほ、おぇー」

 賢太郎は緊張が一気に解けると床に膝をつけ思いっきり咳込む。

 かいた汗を床に垂らしながら悔しさのあまり何度も床に拳を叩きつける。


「エドガー、お前の強さが少しでも俺にあったらよかった。くそ!くそーー!」
 

 

 賢太郎は敗北感にうちのめされ、しばらくその場を動くことが出来なかった。
 
 
 
 
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