オーシャンエッジプロジェクト プロミネンス 

sin art

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28話 輝かしい未来

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 島田賢太郎と神谷美咲はセントラルスクールの食堂で友人を探していた。

「あーもうこんな時間。エドガーとライアンとアルテミス、もう食事終わっちゃったかな~」

 美咲は少しお昼の時間が過ぎた食堂で三人の友人を探す。もう一時を回っていたが食堂にはまだたくさんの学生が食事をしておりそれぞれの席で会話を楽しんでいた。

「おーい、こっち、こっち」

 ごった返する食堂で一本の手があがり賢太郎とミサを手招きする。

「あ、いたいた!おーい」

 美咲も大きく手を振り返した。



「ごめん、おまたせー。今日の教授の話が長くてさー。おんなじ話ばっかりで眠くなってきちゃった。みんなはもう食事は済んだの?」

 美咲は大きな青い目をくりくりと動かし三人に話しかける。

「ああ、もう食べたよ。今日の教授は特に話が長いからきっと捕まってるんじゃないかって話をしていたところだ」

 エドガーは軽くおどけた態度をし、アルテミスとライアンはそれを認めるように微笑を浮かべた。

「それはそうと、今日はみんな揃ってどういう話をするつもりだい?ライアンから緊急招集ってメールだったけど?」

「そろそろ、卒業だからね。これからの目標を宣言し合おうと思ってさ」

 ライアンが上品な手つきでコーヒーを飲みつつ緊急招集のメールについての説明をする。

「え、なんだ、そういうこと?僕はてっきりなにか事件でも起きたのかと思って内心ヒヤヒヤしてたんだけど」


 賢太郎と美咲は空いている席に座り、ほっとしたのかコーヒーをグビリと飲む。

「事件といえば今のオーシャンエッジ周辺はいつ事件が起きてもおかしくない状況ではある。内定が決まっている第三エリア護衛艦隊だが、人員が足りないから早く来れないかという辞令が来たんだ。海賊がここ最近急増しているらしい」

 アルテミスはそういうと"辞令"と書かれた紙をテーブルの上に投げるように置く。そこには第三エリア護衛艦隊部隊長の任務に任命するという内容と護衛司令官マーチャントのサインが書かれていた。


「ほえー、いきなり部隊長任命かよ。よほど成績がよかったんだな」

「ふん、当たり前だ。そんじょそこらの男に負ける気はないさ。実際、実技の格闘ではトップで通った」
 
 エドガーはドヤ顔のアルテミスを横目でみつつ、こいつだけは敵に回しちゃだめだと密かに思った。

「アルテミスは艦隊に内定確定か。ライアンは?」


「俺?俺は役所務めだよ。だが、オーシャンエッジを今よりもっと発展させるために将来は市長に立候補するつもりだ。役所づとめはみんながどういうことに困っているのかを知る下積み期間さ」

「おお、未来の市長さんか~。こいつはあんまり悪口は言えんな」


 エドガーは二カッと白い歯を見せて笑った。

「そういうエドガーは進路決まってるのかい?あんまり聞いたことはないけど。父の仕事を継ぐ予定?」


「親父の仕事?はっ。まっぴらごめんだね。俺は好きなように生きる。港の人夫仕事も楽しそうだよな」

「人夫?おまえパープルだろ?パープルは中央の仕事をするっていうのがセオリーだろ。しかもお前の親父さんは…」

「ライアン、それ以上いうといくらお前でも許さんぞ。パープルだろうがなんだろうが人夫も大事な仕事だ。特にこのオーシャンエッジではな。彼らがいなければ港の仕事は回らんだろう?」

「ああ、失敬。そういうつもりで言ったわけではないんだが。まあ、お前の人生だ。好きに生きたらいい。どんな仕事でも応援するよ」


 ライアンはエドガーに拳を突き出し、エドガーもそれに答えた。


「では、賢太郎と、美咲の番だが。もう研究所の内定は決まったのか?」

 エドガーは賢太郎とミサに話をふった。なぜか美咲の顔が赤らんで賢太郎の顔を覗き込んでいる。

「ああ、なんとかね。美咲も同じ研究所に決まったよ。とその前にみんなに報告があります」

「おめでとう。報告?なにかいいことでもあったのか?」

 アルテミスがずずっとコーヒを喉に流し込みながら聞く。美咲が一歩前に出て意を決するように大きく息を吸い込んだ。



「あのー、今妊娠3ヶ月です」

 アルテミスは飲みかけのコーヒを吹き、隣りに座っているライアンの一張羅を台無しにした。

「ゲホッ、ゲホゲホ。に、妊娠?」



 隣りに座っているライアンに目もくれずアルテミスはミサに問う。ライアンもいつものことだと言わんばかりに冷静に胸ポケットからハンカチを取り出してひとしきり顔を拭く。


「ラ、ライアン。ごめんなさい。びっくりさせちゃったみたいね。昨日気持ち悪くて病院に行って検査したら…妊娠三ヶ月って言われたの」

 全員の目が賢太郎に向かう。

「ええ、そういう事になりました。よろしくおねがいします」


 賢太郎は恥ずかしそうに頭を掻きながら友人に報告した。これからお互いの親に挨拶に行き結婚の許可を得なければいけないという責任感を少し表情に滲ませつつ賢太郎はこれから妻になるミサの肩に手を乗せた。

「この報告が一番ビックリだな!いや、めでたい!めでたいね。いよっ、賢太郎パパ」

 エドガーは賢太郎とミサをひとしきりに茶化しながらふと真剣な顔を覗かせる。


「賢太郎、冗談はこれくらいにして、これから頑張らないとな。ラボの就職は決まってるんだろう?」

「ああ、ありがとう、エドガー。美咲と一緒に内定は決まったよ。まだラボには美咲のことは報告してないけどな」

「はは、大丈夫だろ。あそこの所長は少し抜けてるからな。うまくやれよ」

「ああ、そういうエドガーはどこに内定が決まったんだい?さっきライアンとの会話で少し話題が出てたけど。専攻は物流の方だったよね?」



 賢太郎に今後の進路を聞かれたエドガーは少し頭を描いた。

「それが~。まだ決まってないんだ」



「え?」

 エドガー以外の四人が綺麗に声を揃えて聞き返す。


「いや、港の方で就職しようと思ったんだが親父から猛反対されてね。今は宙ぶらりんさ。親父は自分の後を継いでほしいみたいでな」


「そうか、エドガーの親父さんはパープルエリアの重鎮だったな」

「ただの金の亡者さ。毎日金の話ばかりしかしない。クソ喰らえってんだ」

 エドガーが吐き捨てるように言うとしばらく沈黙が走る。


「エドガー、お前は親父さんの仕事を継ぐべきだ。そして将来俺の手助けをしろ」

 沈黙を破ったのはライアンだった。テーブルに突っ伏したエドガーに少し厳しい口調で話した。


「へっ。誰が継ぐか。俺は家を出て人夫をする。このオーシャンエッジは一人ひとりの人夫に支えられてるんだ。それをあの親父バカにしやがって……」



「となると、内定が決まってないのはエドガーだけか」

 健太郎は冷静に状況をまとめる。

「へいへい、そうですよ。みなさん無事に決まってようござんしたね」
 

 
 エドガーは一人がっくりと肩を落とす。

「まあ、気にするな。俺がなんとか役所の上役と相談してとりなしてやる。お前はパープルなんだから就業許可くらいはすんなり通るだろ。家出するんだったらしばらくは俺の部屋に泊まってけ」
 
「ああ、ライアン恩に着るぜ」
 
「では、乾杯といこうか。それぞれの門出と発展に」


 ライアンは集まった友人にグラスを挙げることを促した。


「乾杯!」

「乾杯!」



 若き青年たちはそれぞれの道をお互いに祝福しあった。これまでの、そしてこれからの友情が永遠に続くように、と。

 周囲の人々からも彼らは明るい前途がキラキラと輝いて映っていた。
 

 

 
 
 
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