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7 王都
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「どんなところなのかしら、王都って」
馬車の揺れで膝から落ちそうになる荷物をずり上げながら、ミアはつぶやいた。
「きっと、すごく華やかなところなんでしょうね」
リリアが明るく言った。
窓の外を、穏やかな田園風景が流れて行く。
今はちょうど小麦の収穫時期で、広大な畑に黄金色の波が揺れていた。
父が治めるハウエル領は、アシュア国の東西に広がる七つの領地の中で、一番大きな領地である。
広大な土地では畑作が主になされており、小麦の生産量の約三分の二を支えている。
王都は、七つの領に四方をかこまれるように位置している。
王都を中心に、領が広がっていると言ってもいい。その王都のさらに中央に、王宮はある。
ここからは馬車で二時間ほどだろうか。
しばらく馬車に揺られ、やがてにぎやかな街に入った。
「わあ!」
ミアは初めて見る光景に目を輝かせる。
白いレンガ造りの大きな家々が、幅の広い石畳の道の両側に並んでいる。
往来には美しく着飾った人々や、四頭立ての立派な馬車が行き来していた。
ここは、王都に入って一番最初の街、フランである。
リリアも目を見開いて、その光景を眺めている。
リリアもミアと同じく、生まれてから一度もハウエルを出たことがなかったのだ。
見るからに高級そうなレストラン、服や、花屋が見えてきた。
人々の息遣いまで聞こえるようだ。
「ねえみて、王都って素敵ね! こんなにきれいな景色を見たのは初めてだわ」
噴水がある公園に差し掛かり、ミアは馬車のなかから身を乗り出した。
「お嬢さまっ」
厳しくたしなめられ、ミアはおとなしく座り直す。
「こんな街でお買い物をしてみたいわ」
そこまではしゃいでから、ミアははたと自分にお金がないことを思い出す。
(宝石を売ればどうにかなるかもしれないけれど……)
そう考えて、すぐにうつむいた。
アクセサリーや宝石は、ミアのためにとくべつにあつらえられたものばかりだ。
売ればすぐに足がつく。
急に静かになったミアを見て、リリアが首を傾げた。
気付けば、街を通り過ぎ、馬車は広い野を走っていた。細くつけられた道の先にあるものをみて、ミアは息を呑む。今度は、声すら出なかった。
あれが、と厳かな気持ちになってそびえたつ城を見る。
完璧に左右対称の建物で、左右ひとつづつそびえたつ尖塔。
その尖塔の間にはどっしりと三階までの建物があり、その中央からはふたつの尖塔よりはるかに高い塔があった。
声もなく、徐々に近づいてくる城を見守る。
これが、氷の将軍がいるという、スノウ家のやかた。
桟橋に差し掛かり、大きく開いた門を通り抜ける。
その分厚い門扉には、びっしりと鉄の鋲が打たれていた。
改めて、ここが戦いに生まれた人々の家だということを認識する。
馬車がゆっくりと止まった。
目的地に、到着だ。
馬車の揺れで膝から落ちそうになる荷物をずり上げながら、ミアはつぶやいた。
「きっと、すごく華やかなところなんでしょうね」
リリアが明るく言った。
窓の外を、穏やかな田園風景が流れて行く。
今はちょうど小麦の収穫時期で、広大な畑に黄金色の波が揺れていた。
父が治めるハウエル領は、アシュア国の東西に広がる七つの領地の中で、一番大きな領地である。
広大な土地では畑作が主になされており、小麦の生産量の約三分の二を支えている。
王都は、七つの領に四方をかこまれるように位置している。
王都を中心に、領が広がっていると言ってもいい。その王都のさらに中央に、王宮はある。
ここからは馬車で二時間ほどだろうか。
しばらく馬車に揺られ、やがてにぎやかな街に入った。
「わあ!」
ミアは初めて見る光景に目を輝かせる。
白いレンガ造りの大きな家々が、幅の広い石畳の道の両側に並んでいる。
往来には美しく着飾った人々や、四頭立ての立派な馬車が行き来していた。
ここは、王都に入って一番最初の街、フランである。
リリアも目を見開いて、その光景を眺めている。
リリアもミアと同じく、生まれてから一度もハウエルを出たことがなかったのだ。
見るからに高級そうなレストラン、服や、花屋が見えてきた。
人々の息遣いまで聞こえるようだ。
「ねえみて、王都って素敵ね! こんなにきれいな景色を見たのは初めてだわ」
噴水がある公園に差し掛かり、ミアは馬車のなかから身を乗り出した。
「お嬢さまっ」
厳しくたしなめられ、ミアはおとなしく座り直す。
「こんな街でお買い物をしてみたいわ」
そこまではしゃいでから、ミアははたと自分にお金がないことを思い出す。
(宝石を売ればどうにかなるかもしれないけれど……)
そう考えて、すぐにうつむいた。
アクセサリーや宝石は、ミアのためにとくべつにあつらえられたものばかりだ。
売ればすぐに足がつく。
急に静かになったミアを見て、リリアが首を傾げた。
気付けば、街を通り過ぎ、馬車は広い野を走っていた。細くつけられた道の先にあるものをみて、ミアは息を呑む。今度は、声すら出なかった。
あれが、と厳かな気持ちになってそびえたつ城を見る。
完璧に左右対称の建物で、左右ひとつづつそびえたつ尖塔。
その尖塔の間にはどっしりと三階までの建物があり、その中央からはふたつの尖塔よりはるかに高い塔があった。
声もなく、徐々に近づいてくる城を見守る。
これが、氷の将軍がいるという、スノウ家のやかた。
桟橋に差し掛かり、大きく開いた門を通り抜ける。
その分厚い門扉には、びっしりと鉄の鋲が打たれていた。
改めて、ここが戦いに生まれた人々の家だということを認識する。
馬車がゆっくりと止まった。
目的地に、到着だ。
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