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1年目夏
54 僕と夏休みの予定
しおりを挟む夏休みが始まって猫になったり人間になったり。今は猫の姿で神様の膝の上で撫でられている。一応神様には感謝をしているから、撫でたいと言われたら言うことを聞いている。
「夏休みは小春ちゃんと遊ばないの?」
「会う約束はあるけど、次は僕の誕生日なんだ。」
小春ちゃん夏休みの初めの方は家族で遠くに住んでいるおばあちゃんの家に行くらしくて、帰ってくるのは一週間後。僕の誕生日の週だった。
「じゃあ、小春ちゃんじゃなくて違う子とたまには遊んだらいいんじゃない?」
「外は暑いし。小春ちゃんいないなら行く意味あまりないし。」
「せっかくの夏休みなのに寂しいね?」
「課題もあるし、本も読まなきゃだから、僕も忙しいんだよ。」
計画的に課題を済ませておかないと後から大変になるからね。僕は神様の膝の上で伸びる。神様の手がここぞとばかりに僕のお腹を撫でる。
「そこはまだ許してない。」
「ケチだなあ。」
お腹を撫でられるのは神様でもまだ許していなかった。猫にとってここはとても大事な所で、本当に大好きな人にしから触らせてない。
僕は体をくねらせてまた膝の上で香箱座りをする。
僕のスマホのバイブがなる。誰かのメッセージが届いたみたいだ。今は猫の姿だから確認できない、後で見ようと思ったら神様が勝手にスマホの画面を開く。
「僕にプライバシーはないの?」
「中川さんから今から来てって言われてるけど。」
「いいよシカトして。」
中川からの連絡は大体無視をしている。大体は暇だから話し相手になってほしいか、写真を撮らせてほしいかのどっちかだから。
「せっかくの女の子の誘いなんだから行ってあげないと。」
「僕は小春ちゃん以外の女の子と遊ばないの。」
いつもはそんなしつこく言ってこないのに、今日はなんだかやけに食いつくな。
僕は後ろ足で耳をかいて興味がない事を表す。ついでに毛繕いもしよう。
「返しといたよ。駅前のファミレスだって。」
「ちょっと、何余計な事してるの!」
慌ててスマホの画面を覗くが、ロックがかかってしまって内容が見れない。
神様を見上げると悪びれた様子もなく僕の頭を強めにかく。
「たまには小春ちゃん以外とも遊んでおいでよ。」
「あぁもう、行く気ないのに。」
「せっかくの夏休みなんだから。ほら、行った行った。」
神様は僕を床に下ろして人間の姿に戻す。人間の姿に戻る瞬間は一瞬で、僕にも何が起きているのかわからない。瞬きを1回する間にいつも人間になったり猫になったりしている。全て神様の気分のままに。
「僕はこれから仕事があるから。」
「珍しい。働いてたんだ。」
「これでも神様だからね。」
神様はそう言ってリビングを出ていく。仕事って一体何をしているんだろう。
スマホの画面をみると中川から早くこいと催促の連絡が来ていた。僕は大きくため息を吐いて準備をする事にした。
正直あまり外には出たくなかったけど、少し時間が経ってしまったため断れずに僕は家を出る。
今日は小春ちゃんに会うわけじゃないから服も髪型も何も気を使わずに外に出る。
駅前のファミレスに入ると、そこには中川だけじゃなくて野村と木村くんが居た。
「どうして木村くんもいるの?」
「はは、なんか呼ばれちゃった。」
木村くんがいると思ってなくて少し嬉しくなる。小春ちゃんと、小春ちゃんの家族の次に木村くんは好きな人物だった。僕は木村くんの隣に座って飲み物を注文する。
「どうせ暇だっただけでしょ?」
「もち!こはるん今いないし、猫宮も暇かなーて!」
「はぁ、別に暇なわけじゃないんだけど。」
「いーじゃんいーじゃん、イケメン2人で写真撮らせてよ!猫宮評判いいからさ!」
見た事ないけど、中川のSNSはそこそこ人気らしい。写真を撮るのが趣味で、それを投稿していたらいつの間にか人気になってて、最近は人物の写真を撮るのにハマっているとか。
「猫宮くんは課題終わった?」
「少しずつやってるよ。」
「野村さんは?」
「あー、まあ、ぼちぼちかな。」
野村の机の上には特大のパフェが置いてあって、写真を撮る中川を横目にパクパク食べていた。
よく1人で食べられるな。見ているだけで胸焼けがしそうだった。
「みんななんか夏休み予定ないの?」
「僕は夏期講習ぐらいかな。」
「えー、夏休みまで勉強すんのかよ!だる!」
「はは、僕は中川さんほど頭よくないからね。」
「中川がバケモンなんだよ。」
中川は何故か勉強しなくても頭が良い。本人はいい大学に行きたいわけでもないから宝の持ち腐れだと本当思う。木村くんが一生懸命勉強しても中川に点数が負けるのはどんな気持ちなんだろう。
「猫宮は?」
「僕は小春ちゃんとデートするのに忙しいから。」
「うちらとも遊んでよ!」
「小春ちゃんに勘違いされたらいやだから遊ばない。」
今日はたまたま神様に勝手に返信されたから来たけど、本来なら小春ちゃんが心配するような事は絶対したくない。
友達でもこうやって異性と会ってるのは浮気だと思われるかもだし。
「今日の事もちゃんと小春ちゃんに伝えてるよ。」
「なんて?」
「楽しんでねって。」
正直ちょっとは嫉妬してほしかったけど、中川と野村だからしょうがない。この2人に嫉妬するような要素が全くなかった。
「こはるん結構ドライじゃんね?」
「まあ、そうだね。」
それだけ僕の事を信用してくれてるって事なのかな。
僕は注文したアイスコーヒーを飲んで一息つく。結局僕は本当に暇つぶしに呼ばれただけだった。
その後も中身のない話を続けて、ふと中川が言う。
「海行こー、海!」
「ちょーいきなりじゃん。」
「夏だし海で写真撮りたいじゃん!ね、みんな誘って行くっしょ!!」
「やだよ海とか。」
「僕も海は苦手かなあ。」
誰にも言っていないけど、僕はまだ水が苦手だった。お風呂ですら無理して入っているのに、海になると発狂してしまうかもしれない。木村くんも否定してくれてよかった。
「えぇ、夏の醍醐味じゃん?野村はいくっしょ?」
「えー焼けるのやだしなー。」
野村が渋るのは少し珍しかった。いつも中川と一緒になんでもすると思っていたけど。
誰も賛成してくれない中川は口を膨らませ、あからさまに拗ねている様子を見せる。
「なーんで、海で写真撮りたいのにー。」
「プールでいいじゃん?」
「海のが映えるじゃん!プールも行きたいけど!」
僕は海もプールもどっちも嫌だった。そもそもこの暑い中外に出るのが嫌だった。
早くこの話を終わりにしたくて、別の話題を振ろうとした時中川が僕にスマホを見せてくる。
「あ、こはるん行くって。」
「はぁ……、僕も行く。」
いつの間に、そして小春ちゃん即答しすぎだよ。
中川に届いた小春ちゃんのメッセージには、
『お誘いありがとう!里奈と颯太も誘っていいかな!?』
すごく嬉しそうな、テンション高めの猫のスタンプ付きで返事が来ていた。
「よかったじゃん、こはるんの水着見れるよ?」
「僕は可愛い小春ちゃんは独り占めしたい派だから。あんまり見せびらかしたくないんだけどな。」
「うわ、猫宮って結構陰湿な所あるよね。」
小春ちゃんが行くなら僕も行かない選択はないけど、それでも海は恐怖の対象だった。
行っても絶対海にだけは入らない。
「野村も来るっしょ!?」
「あー、うーんどうしようかな。」
まだ野村は渋っている。野村ももしかして海が苦手とかなのかな?
「猫宮くんが行くなら僕も行こうかな。」
「木村くんどうしたの、そんなに僕の事好きだった?」
「まあ、猫宮くんかっこいいからね。」
「僕も木村くんは好きだよ、4番目ぐらいに。」
急に意見を変えた木村くんに正直驚いた。
皆んなが行くイベントは参加しておきたいタイプとかかもしれない。
木村くんは笑って一口頼んでいたコーヒーを飲んでから野村に声をかける。
「野村さんも一緒に行こうよ。せっかくの夏休みだしみんなで思い出作ろうよ。」
「……しゃーない、一緒に行くか!」
さっきまで困った顔をしてた野村がぱあと明るい顔になるのに違和感を覚えたけど、あまり気にしてはいられなかった。心配事が3つも出来てしまった。
海が怖い事を悟られずに過ごすことが出来るのか。
小春ちゃんの肌を他の男に見せるのが嫌。
小春ちゃんの水着姿を見て、僕が我慢できるのか。
僕だって12歳まで生きた猫だからね。発情ぐらいした事はある。
去勢されてからはそう言う気持ちは抑えられてたけど……。
人間になって、そこは引き継がれてないみたいで安心した。
だからもちろん、小春ちゃんの水着を見たらそういう気持ちになるかもしれない。
海に行く日は、木村くんの夏期講習の休みと、他の人達の予定を見て中川が予定を立ててくれる手筈になった。
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