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【三十一話】回復魔法の使い方2
しおりを挟む強制的に信頼関係を結ぶ?
古今東西、強要した忠誠心は忠誠心とは呼ばない。
忠誠とは、ある程度忠誠者の方に選択権が存在するからだ。
その流れで考えると、信頼もまだ同じ事。
強制した信頼関係というのは信頼関係とは呼ばない。
まあ、普通に主従関係と呼ぶのでしょうね。
「優しいミシェール」
「はい。ルーファス様」
優しいって!?
優しくはないよねー。
自慢じゃないけどさ。
三度目の呼びかけは、相当に苦しかった。
大丈夫?
ちなみに四度目は、賢いミシェールと予想しておきましょうか。
「回復魔法の原理原則を簡単に教えるね」
「はい、ありがとうございます。ルーファス様」
キター。
大切なとこキタよ。
「回復に必要な力というのは、基本的に他人の力ではなく、自分自身の体を治そうとする力」
なるほど、治癒力の話ですね?
「でも、通常の治癒能力の修復速度を待っていたらどうなると思う?」
「……間に合わずに死んでしまうということでしょうか」
「そう。その通り。ミシェールは賢いね」
いや、ちょっと待て。
普通でしょ、そこ。
「血が多く流れ過ぎたり、治癒能力の力の方が弱く、体の一部が壊疽したり……」
凄くリアルな話になって来ました……。
これって医学?
医学に近くない?
「だから、血肉の回復速度を物理的に上げてあげる事が回復魔法と言われているんだよ」
血肉って細胞の事かしら。
体細胞に外的な刺激を与えて、治癒力を促進させると。
「つまりね、さじ加減がとても微妙なんだ」
そう言うと、ルーファスは再び魔法陣に手を翳す。
さっきは血の解析を命じていた分けだから、やっていた事は、令息方の血の固有情報の読み取りなのだろう。
そして読み取り終わって何をするかというと、普通に考えれば実行よね。
「精霊王ウンディーネよ。水に語りかけてくれるかい? 回復速度は通常の一万倍。我が呼びかけに応じ発動させよ」
深紅に明滅していた魔法陣が、何か新たな古代文字を発現させると、応じるように端から半壊して行く。
え?
霧散するの?
いえ、違う。
魔法陣が端から解けて行っているのだ。
帯状になった魔法陣が行く先は、それぞれの令息方の右目。
まるで狙い済ましたように、一点の狂いもなく右目を貫く。
そして、彼らの右目を紅く発光させていた。
あれは先程よりも、うんと小さくなっているけど、魔法陣の紋様。
右目に定着させているのだ。
恐っ。
これは、どこをどうとっても黒魔法だわ。
黒魔法者と召喚獣の主従契約。
もしくは奴隷契約。
そんな感じに見えるんですけど……。
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