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【四十二話】夕日の先に
しおりを挟むあれから私達は手を繋ぎながら王宮の庭を散歩した。
まあ、特には何も話さなかったのだけど。
聞きたいことは沢山あったし、言いたい事も沢山あったのだが……、私は白魔法執行後だった為か、少し胸がいっぱいだったというか……。
いや、いっぱいにもなるよね?
だってね!
言い訳みたいになってしまうが、白魔法を掛けられると、何とも言えない心地良さに包まれてしまうのだ。
もうあれさ?
癒やしの水?
というか羊水?
どこまで遡れば適切に現せるんだろう?
とにもかくにも虚脱状態というか。
ボンヤリして何も手に着かないというか。
夕日のオレンジ色ばかりが目に入り、綺麗な色だなとか。
夕方の風が心地良いなとか。
その中で、ルーファスの手から伝わる温度を感じていたというか……。
彼を見る度に、何度も何度もあの感覚がフラッシュバックするのだ。
あの感覚というのは、言わずもがな白魔法の執行感覚だ。
体の中が疼くような。
くすぐったいような。
確信したわ。
彼と会う度に思い出す。
そして恥ずかしさと居たたまれなさで、悶えるわね?
まあ、確実よ。
その後、別れ際になって、「じゃあ」となるはずだったのに、第二王子様がとんでもない事を言い出したのだ。
いや、まあ、彼の中では色々段取ってはいたのだろうが、私は思ってもみなかったのだ。
正に、寝耳に水。
忙しいわね? 昨日も今日も。
彼は当然のように言ったのだ。
「殺されかけた家に帰るとかないですよね?」
と。
部屋に入られたという事は、セキュリティが甘い訳で、昨日あったことは、対策を講じてない限り、今日もあるだろうと。
馬小屋ならまだしも、屋敷内に入られた訳だから、公爵家は信用出来ない。
何の為にプロポーズをしたと思っているのだ。
とまで……。
プロポーズって、そういう理由?
そういう事情があって、意図的にこのタイミングでしたんですね!
さすが第二王子様。
そつが無い上に行動力がお有りで。
アザッス。
毎度思いますが第二王子様、そこら辺は包み隠さず言わなくても良いではないでしょうか?
甘い気持ちとか吹っ飛ばしたいんですか?
自分で吹っ飛ばすとか、ないわー。
なんすかそのビジネスライク。
計算ずくとか見せないで下さいよ。
少しは隠してー。
この胸いっぱいになってしまった、私の気持ちを返して下さい!
手は繋いだままですけどね?
というわけで、王宮内に部屋を用意したからと言われました。
引っ越しですか?
急ですよね?
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