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【六十話】推理推測の法則
しおりを挟む硝子の靴は一先ずシンデレラの元に届きそうなので、良しとしよう。
だがしかしーー
シンデレラの好きな人?
知っているのなら、もうストレートに教えてーーーッ
と叫ばなかった私を褒めて欲しい。
いや、いっその事叫んだ方が結果オーライだったのか?
なぜなら、その……。
私は胡乱な瞳でこちらを見ている影から視線を逸らす。
分からないって話ですよね。
『頭と心を繋いで考えれば、辿り着けない答えは少ない』
オリヴィアお姉様からのご忠告だった訳ですが、出だしから躓いていますよ? という話だ。
「頭と心を繋ぐ」とは、普通に考えれば頭でっかちになるな? という事なのだと思うのだが……。
頭だけじゃなく、心にも聞けと。
心とは即ち直感。
……で、合ってる?
まあ、直感よりはもっと広い意味なのだろうが、もちろん直感も含まれていると思う。
直感て、難しく考えるな。
最初にピンと来た人。
という事になる訳よね。
ピンと来た人??
私はシンデレラの事を思い起こす。
彼女の好きな人。
オリヴィアお姉様には一発で分かって、同じ姉の私には分からないって、マジでどういう事なのって話だ。
オリヴィアお姉様に有って、私にないもの。
いっぱいあり過ぎ……。
多分。
多分よ?
お姉様は私と話している時、目線だけで影の存在を看破した訳だ。
これは当然、逆の立場なら私には分からない。
彼女には分かって、私には分からない理由ってなんだろう?
まずは単純に洞察力だ。
天井を見た。
その行動をしっかり認識する。
妹は天井を見た。
それだけの事で、オリヴィアお姉様は、なぜミシェールはこのタイミングで天井を見たのかな?
と考える訳だ。
そしてその何故・・の部分の答えを一瞬で導き出せる。
つまりは事前知識も完璧な訳。
王族には影が付いている。
影とは見えない場所にいるのだから、天井か、壁か、窓か。
人と会話をしていて、ふと天井を見る事などまずない。
何故ミシェールは天井を気にした?
第二王子様の正式な婚約者になったミシェール。
殺されかけたミシェール。
ああ影か。
となる訳だ。
洞察力と。
予備知識。
それらを結び付ける事が出来る、推察力。
ヤベェ。
姉、スゲー。
つまりは、この三つの力を意識して、私もシンデレラの意中の相手を考えれば、答えに辿り付ける可能性がある?
私はフルーツ水の入った銀杯を取り、一気に仰ぐ。
プハーッ。
やるわよ。
推理というものの方向性が分かったんだから。
やってやろうじゃないの!
私は前のめり気味に推理を開始する。
姉だ。
自分がオリヴィアだと思って、思考回路を展開する。
少しは頭が冴えそうですよね?
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