転生したらシンデレラの義理の姉でした!? ~悪役令嬢まっしぐらです~

日向雪

文字の大きさ
78 / 158

【七十七話】ドレスの裾

しおりを挟む




 私は自室の窓辺から、王宮の庭をボンヤリと眺めていた。

 考えが纏まらず、今までの出来事を反芻していたのだ……。





 王宮の庭は、いつも通り手入れが行き届いていて、季節の花が咲いている花壇や庭木が目を楽しませてくれる。





 テーブルには昨日届いたダンスパーティーで着る衣装一式が用意されている。

 ドレスと。

 靴と。

 首元を飾る宝飾品。





 髪はオフェリアの薔薇で飾る予定だ。

 公爵令嬢ミシェールという人は、それなりにこういった装いが好きだったようだが、前世の私は微妙だったりする。





 なにせ合理主義なのだ。

 ハイヒール、足元が大変不安定。





 これが気になるのだ。

 私は十センチヒールを履く予定なのだが、これではもしもの時に走れない。





 ホールで押されれば転ぶし、階段だと洒落にならない。

 何段も落ちれば結構大きな事故になる。





 怖い訳だよね。

 自由の効かない装いが。





 じゃあ、もしもの時はハイヒールを脱ぎ捨てれば?

 とも考えるが、裸足の足でどれほど逃げられるというのだろう?





 石を踏んでしまったり。

 硝子を踏んでしまったり。

 濡れている場所を踏んだり。







 普段、靴を履いて生活している人間の場合、それ程足の裏は頑強には出来ていない。足の裏を切ったら、もう走れないと思う。







 それにヒールに合わせてドレスを作ってあるから、裾が長すぎて、脱いだら脱いだで、裾を踏みまくってうまく動けない。





 ドレスの裾を持ち上げて走ると、両手が塞がるから、やっぱりとても危うい。







 うーん。

 困るわね。





 ドレス用の自動裾上げ器? 的なものが欲しいわ。

 なんていうか、洗濯ばさみ的な。





 おぉ。

 ガーターベルトで良いじゃない?





 私は良い案が思い付いたとばかりに、手をポンと打つ。

 良いじゃん。良いじゃん。





 太腿に多めの八本仕込んで置けば、四本外しても靴下は落ちない。

 そうすれば、ドレスを捲って逃げられるわ。





 私の思考は令嬢とは限りなく遠くなって行く。

 パニエは短めにすれば、外側のドレスだけ捲って身軽になれる。





 ちょっと付け替えが面倒くさそうだが、そこはしょうがない。

 練習有るのみだ。





 何度も何度も練習して、片側三秒で行きたいわね。



 捲って。

 取って。

 付ける。



 スリーステップだ。





 よっしゃ、やるか?





 捲って、取って、付ける。





 私は太腿を露わにしたかと思うと、ガーターベルトを取って、スカートに付け替えてみた。





 意外に手間取るわね。

 こういう事って、自分でやった事がないから……。





 このスナップというか挟む所、これを外しやすいように、癖をつけておかないと、硬くていざという時外れないわ。





 私は熱心に黙々と、何度も練習した。

 端で見ると「何をやってんの!」という感じだが、端で見ている人はいない。





 いないわよね?





 私はチラッと天井を見る。





 事前に、確認した方が良かったかしら?





「セイ?」





 私は今更ながらに確認の声を発した。

 手遅れ感が半端ない。





「………」





 無言。

 だがしかしーー





 消していた気配が、声かけと共に現れた気がする。





 いた。





 コレって……?







 どうしようね?





 捲ってしまったスカートをおずおずと戻すと、淑やかそうに椅子に座ってみる。





 今度から気を付けよう。

 そうしようね。









しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

悪役令嬢によればこの世界は乙女ゲームの世界らしい

斯波@ジゼルの錬金飴③発売中
ファンタジー
ブラック企業を辞退した私が卒業後に手に入れたのは無職の称号だった。不服そうな親の目から逃れるべく、喫茶店でパート情報を探そうとしたが暴走トラックに轢かれて人生を終えた――かと思ったら村人達に恐れられ、軟禁されている10歳の少女に転生していた。どうやら少女の強大すぎる魔法は村人達の恐怖の対象となったらしい。村人の気持ちも分からなくはないが、二度目の人生を小屋での軟禁生活で終わらせるつもりは毛頭ないので、逃げることにした。だが私には強すぎるステータスと『ポイント交換システム』がある!拠点をテントに決め、日々魔物を狩りながら自由気ままな冒険者を続けてたのだが……。 ※1.恋愛要素を含みますが、出てくるのが遅いのでご注意ください。 ※2.『悪役令嬢に転生したので断罪エンドまでぐーたら過ごしたい 王子がスパルタとか聞いてないんですけど!?』と同じ世界観・時間軸のお話ですが、こちらだけでもお楽しみいただけます。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

悪役令嬢に転生したけど、破滅エンドは王子たちに押し付けました

タマ マコト
ファンタジー
27歳の社畜OL・藤咲真帆は、仕事でも恋でも“都合のいい人”として生きてきた。 ある夜、交通事故に遭った瞬間、心の底から叫んだーー「もう我慢なんてしたくない!」 目を覚ますと、乙女ゲームの“悪役令嬢レティシア”に転生していた。 破滅が約束された物語の中で、彼女は決意する。 今度こそ、泣くのは私じゃない。 破滅は“彼ら”に押し付けて、私の人生を取り戻してみせる。

処理中です...