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【九十一話】血筋の話。
しおりを挟む弟を目の前に、私はと言うと固まっていた。
いやマジで。
どういう事??
前カールトン公爵夫人が亡くなった時。
つまりはシンデレラの母親が亡くなった時、私達は姉弟になった。
そのタイミングは動かしようがない。
何故なら事実なのだから。
しかしーー
その現実があったからか、私はキースの血筋に付いては確認していない。
当たり前というか、思い込みというか……。
彼がシンデレラと血が繋がっていないというのなら、カールトン公爵とも血が繋がっていない事に成る。
だがーー
彼は歴史ある第四公爵家。
貴族筆頭の家の総領息子だ。
順当に行けば、彼が公爵家を継ぐ事に成る。
血の繋がらない息子に??
え?
どういう事?
私は再度、頭を捻る。
「私とは血が繋がっているの?」
お祖父様。
つまりはエアリー家の縁の子の可能性を考えて聞いて見る。
だが、キースは首を振った。
エアリー家から来た養子でもない。
それもその筈だ。
エアリー家の縁の子なら、私が知っていてもおかしくない。
「お父様はこのことを御存知なの?」
「もちろん。知っています。むしろ知らないでどうやって家族をするんですか?」
キースは呆れたように言う。
そりゃそうね。
いくらなんでも、その辺の子がなんとなく家族に紛れ込むなんてある訳ない。
それは庶民でも有り得ないだろ。と自分に突っ込む。
カールトン公爵家ともエアリー男爵家とも縁のない子って。
貴族だから、お父様に隠し子がいたとしても、それ程は驚かない。
だけど、この子はハッキリとシンデレラと血が繋がっていないと言ったわよね?
つまり隠し子の線も消える。
じゃあ、えっと?
私が戸惑っていると、見かねたキースが口を開く。
「事の起こりは七年前。その時、第四位公爵家には男児がいなかった」
ええ。そうね。
後妻を迎える所だったけど、女児が三人ね。
「臣籍降下というものを御存知ですか?」
もちろん御存知ですよ。
王族が臣下に下ること。
古来、日本でもしていたことね。
空想の中の事だけど、紫式部執筆の『源氏物語』の主人公なんかもそんな感じよね。
とそこまで聞いて、私は全身が凍り付いた。
ちょっと待て。
この話の流れはーー
つまりは、七年前、第四位公爵家には、跡継ぎの男児がいなかった。
いなければ、基本親戚筋より養子を迎えたり、長姫に婿を娶り継がせる。
父にはまだまだ男児が生まれる可能性はあっただろうが、その時点でいなかったのは事実だ。
臣籍降下とは基本、第三公爵家までを範囲に考えるが。
そんなものは、一応の基本というだけだ。
そこに条件が見合わなければ、第四位公爵家、第五公爵家と続く。
アッシュベリーの公爵家は五つ。
そこで条件が合わなければ、侯爵家と続く訳だ。
女児なら伯爵家まで許容範囲かもしれない。
アッシュベリー王国に王子は四人。
お二人は正妃様の御子で、もう二人は第四側妃様の御子様。
正妃様の御子様が王家をお継ぎになり、側妃様の御子様は臣下に下り、王家を支える盾となる。
第三王子様の年齢は十三歳でーー
私は目の前にいる少年を見ていた。
金色のくすんだ髪をしている。
第一王子様のように、キラキラした色ではないが、だかしかし。
品のある色だと思う。
王妃様と違い、側妃様というのは基本表に出ないから。
私はあまり知らないのだけど。
でもーー
陛下の寵愛する第四側妃様の髪のお色は、やっぱり艶を消したような真鍮色だったと思うのは、気のせいだろうか………。
余りの事に、息が止まりそうなんですけど……。
自分の導き出した答えが怖すぎて、身動きが取れません。
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