転生したらシンデレラの義理の姉でした!? ~悪役令嬢まっしぐらです~

日向雪

文字の大きさ
115 / 158

【百十四話】ウンディーネが愛する少年の条件。

しおりを挟む



 精霊術の光が二倍になった。

 明るくて温かい黄色い光。 





 術者が二倍になったから、光も二倍という感じで……。

 なんか、恐ろしく神々しいわね?





 一般人?

 の私がここにいるのもおこがましいくらい場違いというか……。





 まあ。

 貴族だし家族だし一般人でもないのだが………。





「時にミシェール」





 え?

 魔術執行中に話かけられた。





 この人、執行中に雑談出来るタイプ?

 それとも年季が違うの?





「なんでしょうか? フィル様」





 私も私で、取り澄ました声で応じる。

 ……いや、この人と話す時って、変なスイッチ入るわ。





 女優じゃないのにさ、女優スイッチっていうの?

 つまりは構えるって事なのだけど。





「大きな貸しが出来て嬉しいよ」



「………」





 ホントにね……。

 マジ大きいね。

 私、逆らえないもんね。





 でも。

 アッシュベリー王国ではなく、私に貸しにするの?





 イヤイヤイヤ。

 それはないか。





 じゃあ、両方?

 それがそつの無い生き方よね?





「先ずは、学園の卒業と同時に我が国に二年間の留学をしてもらう」





 ……我が国って。

 その言い方、変装している意味あるのかなー。





 でも治癒魔法を使っている時点で、そんなレベルの秘密何でもないかー。

 正体を知らない人、ここにはいないしね。





 ーーしかし





 私の予想、ドンピシャリだ。

 ど真ん中。





 ど真ん中過ぎて鳥肌が立ったわ。





 そうよね。

 それが一番穏便に事を進める方法だものね。





 つまりはルーファスにも二年の留学期間を設けていると。

 そういう段取りになったのね。





 そして私にも付いて来いって事。

 なんでか分かんないけど……。







「名目は何でも良いが、薬学の勉強とか、尤もらしいものを考えて置くように」





 ……薬学か……。

 どっちかっていうとティアナにピッタリね。





 フィラル国って、独自の薬文化が発達しているのよね。

 なんていうか前世で言う所の漢方学みたいなもの。





 私も前世では、ケミカルな西洋医学の薬と、漢方薬を併用してた。

 アレ、マジで良く効く。





 急性は西洋医学。

 慢性は漢方学。

 と自分なりに分けていたけど、以外に火傷や頭痛でも漢方薬を使っていた。





 ただ漢方と違うのは、その殆どが畑ではなく海から採取している所。

 つまり他国はそうそう真似できない。





 フィラル国の薬は当たり前だが、漢方薬ではなく海聖薬として、大きな輸出産業を担っている。





 フィラル国の富の一部だ。

 海藻の粘土は捻挫に効き。

 魚の毒は痛み止めに………。





 痛み止め………。





 毒って、一口に言っても、植物、鉱物、動物、魚類、菌類等、以外に多岐に渡る。





 麻酔に使えそうな毒も有りそうじゃない?





 ああ。

 でも私……。





 そんな名目で留学してしまったら、魔女部門行きだわ……。

 むしろ私が部長? みたいな……。





「その上で、研究が軌道に乗り、追加で一年留学を延長し、通算三年間にしてもらう」



「………」





 つまりはがっつり三年は、ルーファスを囲う予定なんだ。

 ただし、アッシュベリー王家の確約は二年しか取れなかったので、苦肉の策的な。





「その三年で、ルーファスとの間に子を成してもらう」





 ?





 聞き違い?

 何か、今……変な言葉が……。





 子を成す???





 はい???





 場の空気が凍り付いた。





 何かコレは。





 ティアナは鬼の形相で凍り付き。

 サイは「言っちゃった」的なノリで凍り付き。

 ブレットは、無表情で凍り付き。





 私は呆然自失で凍り付き。

 ルーファスはというと、やや頬に赤味が差していただろうか……。





 こいつ、知ってたな。

 既に根回しというか、事前に聞いてたのね?





 子を成してどうするんだ!?

 飛躍し過ぎでしょ?





「そして、子供とのゴタゴタでもう一年フィラルに留まる事とする」





 スゴイ強引な手口ですね!

 吃驚です!





「子を成してどうするのですか?」





「ルーファスは私の甥で有るからな。その子と私の関係は大伯父だろう。親族だ」





 まあ、親族は親族ね。





「出来ればそのどさくさに乗じて、ルーファスを我が子として養子にするつもりだ。なに、実の妹の子だ。なんの問題もなかろう」





 フィル様は澄まして言ったが、問題大有りだろと突っ込みたい。

 ルーファスはアッシュベリー王国の第二王子だよ? 養子なんて認められないでしょう……。





「養子という話は、ルーファスが生まれた時から打診している。我が子は男児がいないからな。丁度良い」





 ……いや、つまり。

 ルーファスが生まれた時から打診していて、ずっと断られているって事だよね?





 ルーファスを養子にしてどうする?

 養子にした所で、彼が王には立てないだろう。





 王というのは、その国で生まれ、その国で育ち、そして国民に広く存在を知られているのがベストだ。





 王女様の婿になり、婿養子になるのならば、打って付けだが、養子は若干苦しい。

 隣国の王子が、王に立つような事があれば、フィラルはアッシュベリー王国の手の内だ。





 そんな愚策はないだろう。

 その上、ルーファスは正妃の第二王子の座から、隣国の第四子という立場になってしまう。





 王族には変わらないが、第二子と第四子って、明らかに身分降格。

 そんな話は飲めない筈だ。





「……見ての通り、我らは癒やし手だ。人の体を治すことが本分だ。ミシェール、それがどういうことか分かるか?」



「?」



「人体に精髄しすぎている。どこの血管を切れば、人が死ぬか、最小限の力で殺す方法を知っている。知らなければ癒やし手など出来はしない。表裏一体なのだ」



「…………」



「故に、影の仕事を任せられたならば、必要以上に優秀にこなせるだろう」



「…………」



「癒やし手は、影になっては成らぬ。ウンディーネが許さない。我らが力は我らの力に有らず、水の精霊王ウンディーネの力なり。ウンディーネの力はウンディーネが望む場所で使わねば成らぬ。そうでなければ彼の精霊は怒り狂い、裏切った者を決して許さぬだろう」



「…………」



「次世代の精霊の申し子を守るのは先代の大切な役目」





 キースの体の中に入り込んだ光が一瞬強く瞬く。

 臓器が復元した?





 位置的に肝臓だ。

 フィル様が担当していた?





 それから続いて、肺の辺りで光が瞬くと、皮膚の縫合が急速に進み、数カ所で小さな魔法陣が回転しながら術式を展開している。





 アレはきっと縫合魔法ね。

 光の糸で縫われていく。





 縫った先から、縫い跡が綺麗に消えて行き、元の滑らかな皮膚が再現して行く。

 最後は加速するように治って行く。









 裏切った者を決して許さないと言った?

 不穏な言葉ね?







 ええ。

 私、留学します。





 借りは返さなきゃ行けないし。

 それに未来永劫、ウンディーネとは仲良くいたいですよね?





 精霊に喧嘩仕掛ける馬鹿はそうそういませんよ。

 そう思いたいです。









 
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

悪役令嬢によればこの世界は乙女ゲームの世界らしい

斯波@ジゼルの錬金飴③発売中
ファンタジー
ブラック企業を辞退した私が卒業後に手に入れたのは無職の称号だった。不服そうな親の目から逃れるべく、喫茶店でパート情報を探そうとしたが暴走トラックに轢かれて人生を終えた――かと思ったら村人達に恐れられ、軟禁されている10歳の少女に転生していた。どうやら少女の強大すぎる魔法は村人達の恐怖の対象となったらしい。村人の気持ちも分からなくはないが、二度目の人生を小屋での軟禁生活で終わらせるつもりは毛頭ないので、逃げることにした。だが私には強すぎるステータスと『ポイント交換システム』がある!拠点をテントに決め、日々魔物を狩りながら自由気ままな冒険者を続けてたのだが……。 ※1.恋愛要素を含みますが、出てくるのが遅いのでご注意ください。 ※2.『悪役令嬢に転生したので断罪エンドまでぐーたら過ごしたい 王子がスパルタとか聞いてないんですけど!?』と同じ世界観・時間軸のお話ですが、こちらだけでもお楽しみいただけます。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

悪役令嬢に転生したけど、破滅エンドは王子たちに押し付けました

タマ マコト
ファンタジー
27歳の社畜OL・藤咲真帆は、仕事でも恋でも“都合のいい人”として生きてきた。 ある夜、交通事故に遭った瞬間、心の底から叫んだーー「もう我慢なんてしたくない!」 目を覚ますと、乙女ゲームの“悪役令嬢レティシア”に転生していた。 破滅が約束された物語の中で、彼女は決意する。 今度こそ、泣くのは私じゃない。 破滅は“彼ら”に押し付けて、私の人生を取り戻してみせる。

処理中です...