転生したらシンデレラの義理の姉でした!? ~悪役令嬢まっしぐらです~

日向雪

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【百三十九話】全ての人間はあなたのように明晰ですか?2

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ミシェールの視点に戻ります。


×××××××××××××××









「それは壮絶な最期だな………」



「ええ。壮絶な最期ですわね」





 第二王子様とオリヴィアお姉様は、顔色一つ変える事なく歓談していた。

 淡々と。

 そう日常会話のように。





 会話の内容はとても歓談に向いているとは思えないが、彼らは歩んできた場数が違うのか、取り乱したりはしない。





 凄いのね。

 この二人のポーカーフェイスって。





 それとも精神力?

 もしくは胆力?





 だって。

 今は飲み物を片手に産地がどうの、製法がどうのと話している。





 あの……。

 シンデレラの母親の最後を話しながら、グラスに注がれて真っ赤な葡萄色の果汁。





 私には飲むのが難しい……。

 葡萄を皮ごと絞った果汁らしいが……。





 真っ赤な液体が血を連想させると言ったら過敏かしら?





 それとも?

 次女である甘えなのかしら?





 飲めないと。

 言える場所にいるから?





 喉の辺りに何か詰まったような感じがして……。

 元より飲み込む事が出来ないのだが……。







 今日は第二王子様との晩餐会だから。

 とっても贅沢な夕食だった。





 綺麗に盛り付けられていて、これが何事も起きていない日の夕食だったら、「おいしいわね」と姉妹で声を掛け合って食べていたのだろうか?





 姉のオリヴィアは夕食時に姉妹ではしゃぐという事はないのだが、私は下の二人と結構談笑していた。というか、私が二人に話し掛けていた。





 私は大概弟を構って、これ美味しいわよ? 焼き加減が最高ね。

 このスープ熱いからゆっくり飲むのよって。





 弟は十三歳で、妹は十五歳で。

 子供ではないのだが……。





 それでも。

 美味しいものは、二人に勧めたくなるし、熱いものは火傷しないよう気を配るし、私にはいつまで経っても、可愛い弟と妹だった。





 彼と彼女がこの席にいたら……。

 この席は、私の婚約と留学を祝う席で。

 お互いの姉妹を紹介する席。





 もしそうだったら。

 テーブルに私の好きな花を飾って。





 キースやシンデレラの好きなものを用意して。

 シンデレラは甘いパイが好きだから、季節の果物を入れてあげる。





 今は、ストロベリーかチェリーかしら?

 私も大好きなものね?





 キースは猫舌なのに、体が温まるスープが好きだから、とろとろに煮込んで、具材を柔らかくしたものを。





 私は相変わらず「熱いから気を付けなさいよ」とお姉さんぶって言うわね?

 彼は素直だから「はい」と返事をするのだけど、やっぱり「あつっ」ってなりそうなのよ?





 そして私は「大丈夫?」って………。





 まるで日常だ。

 この前まで、そこにあった筈の日常。





 目を瞑ると広がって行く日常。

 貴族令嬢にもちゃんと日常があるものね?





 前世の私には、貴族の暮らしは、どこか想像がつかなかったけれど……。

 ミシェールの中に、ずっと有り続けていた。





 第二王子様とオリヴィアお姉様の談笑を聞きながら、私はずっと別の事を想像していた。







 オリヴィアお姉様。

 姉は妹と違って、確実に年上の生き物なのですね?





 私の知らない事を沢山知っていらっしゃる………。

 私が私でいられるように、彼女は彼女の中で堰き止めて置いて下さった……。







 今日初めて……。

 姉の姉らしさに触れたような気がします。





 オリヴィアお姉様にとって、私は妹で。

 私はあなたの前でだけ、甘えていたのですね?





 飲めない物は飲めないと。

 言える私でいさせてくれた。





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