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【百四十一話】遺伝子の中に。
しおりを挟む私とあの子。
血が繋がっていなかったのね………。
しみじみと考える。
貴族だから……。
大概、色々あるっちゃああるのだが。
事実って大概が奇特なのね……。
フィル様は確か。
『長女は母親似の赤髪、三女は金髪、次女はカールトン公爵の金髪と母親の赤髪を受け継いだストロベリーブロンド』
と言ったのよね?
私はこの言葉を聞いて、シンデレラと父親が同じだと思い込んだ。
でもーー
この言葉は、シンデレラがカールトン公爵の実子だとは言い切っていない。
次女である私がカールトン公爵の実子だと言い切ったのだ。
考えてもみなかったわ
考えてもみなかったのよ?
だって母は後妻で、シンデレラは先妻の子よ?
どうして先妻の子であるシンデレラが、公爵である父と血が繋がっていないなんて事が起こる?
普通に考えれば、私達は母の連れ子で、あからさまに出自が怪しい。
なぜなら母は未婚で私達二人を出産しているのだから。
私達こそ、役者の子供だと言われた方がずっと話が通じるではないか?
容姿に優れた役者。
カールトン三姉妹の中で、容姿が頭抜けているのは、当然シンデレラだ。
あのフィーリングと感性も役者っぽいのかしら?
私とオリヴィアお姉様はそんなに役者っぽい性格はしてないわよね?
何と言っても感性で生きていない。
めちゃくちゃ打算と計算の世界で生きている。
そいうい人間が役者になるかと聞かれれば、ならないだろうと答えるだろう。
それくらいピンと来ない世界だ。
商人ならピンと来るけど。
逆にシンデレラは商人には向いていなさそうだ。
数字を弾く感覚がないというか……。
夢見がちというか。
あの子はどこか想像の世界に飛んでっちゃう子だから。
まあ。
そこが可愛くもあるのだが……。
ブーケはどうしようかしら?
枯れるのはイヤだし。
綺麗に乾燥させてドライフラワーにする?
でも結婚式にドライフラワーってもの微妙じゃない?
瑞々しい花嫁がドライフラワーって(笑)
デキ婚の上にドライフラワーのブーケ。
かなり面白い花嫁ね?
私は無意識にふふふと笑ってしまった。
その一人笑いをオリヴィアお姉様に見咎められる。
「ミシェール、聞いているの?」
「ごめんなさい。オリヴィアお姉様。少し面白い想像をしてしまって」
「それで一人笑い?」
「……すみません」
私は殊勝なフリをして、謝ってみせる。
「まあいいわミシェール。今第二王子様とせっかくの機会だから、もう少し本音でお話ししないかと言っていた所よ」
待ってました!
「ええ。賛成ですわ。お姉様。せっかくこれから家族になるのですもの。色々胸の内を話し合って、仲を深めたいですわ」
わたしはここぞとばかりニコニコと答えた。
ちょっと喰い気味だっただろうか?
その言葉を受けてオリヴィアお姉様は魔王のように微笑まれた。
?
ここで魔王モード?
「第二王子様、ミシェールもこう申しておりますし、そろそろ心の内を語り合いましょうか?」
貴族とは基本弱味を見せない。
心の内を語らない。
けれど、それでは仲が深まらないのも事実だし。
話が進まないのだ。
ええ。
進めましょうよ?
オリヴィアお姉様は赤紫色の羽扇をパッと開いて、おほほと笑った。
「では、私から質問を。ここにお呼びしようとしていた四人目の人物と私を会わせて、第二王子様とミシェールは私に何を求めますか?」
本題キター。
流れたと思っていた話題だっただけに、忘れた頃に来て驚いた。
「この度の、カールトン公爵家の不祥事に対する後始末といった所でしょうか?」
第二王子であるルーファスも口元の笑みを消さず、それでも随分と挑発的な答え方をした。
ん?
そうなの?
後始末?
「罪はその身で雪げと……」
オリヴィアお姉様の羽扇がゆっくりと仰がれる。
「そう受け取って頂いても構いません」
オリヴィアお姉様がうふふと微笑まれると。
ルーファスも、綺麗な笑顔を作る。
あれ、めっちゃ作り笑いだね?
今、二人の間に火花が散った?
カチリと戦闘モードに切り替わる音を確かに聞いた。
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