転生したらシンデレラの義理の姉でした!? ~悪役令嬢まっしぐらです~

日向雪

文字の大きさ
158 / 158

【百五十七話】エピローグ3 お茶会の庭。

しおりを挟む





 私はティーカップを手に取ると、そこから立ち上る香りを楽しむ。

 あの日ーー





 オリヴィアお姉様が彼と飲んでいたお茶だ。

 僅かに花の香りがする。





 お茶が美味しくて。

 昼の陽射しが暖かくて。





 私は落馬以来、初めて心の底からほっとした気がする。





 キースが目覚めてから、私は元借りていた王宮の一室に戻っていた。

 この部屋には中庭があり、テラス席が用意されている。





 中庭には季節の薔薇が植えられていて、温室のようではなくとも、それなりに咲き誇っている。





 私は目の前に座る、ルーファスを見る。

 彼もまた眩しそうに薔薇を見ていた。





 不思議ね?

 運命って……。





 私は日本で図書館司書をしていたのよ?

 それが目を覚ましたら、西洋の香り漂う異世界にいた。





 そこで王子様に出会い、紆余曲折あって、彼とこうしてお茶を飲んでいる。





 夜中に首を絞められたり、令息達に絡まれたり、治癒魔法を目の当たりにしたり。

 どれもこれも日本にいたら、体験することのない鮮烈な経験だ。





 そして彼と出会う事も無く、地味に平和に暮らしていたのだろう。





 紅茶を一口飲む。

 香りが体中に広がって行って、私を暖める。





 私は硝子の靴を履いていた。

 陽射しが降り注いで、硝子に反射してキラキラと光を零す。





 私の足にぴったりのこの靴は、一度手放したのに、また私の元に返って来た。

 そうして、また私の足元を飾ってくれる。





「……ミシェールにとても良く似合うね」





 硝子の靴を見ながらルーファスが言う。

 彼は私の名前を呼ぶ時、いつもその名前に心の一部を乗せている気がする。





「ルーファスって、私の名前が好みなの?」





 音とか、響き的な?





「ミシェールの名前が名前単独として好みな訳ではありません。君の名前だから特別に感じるのです」





 どこかで聞いた台詞ね?





「……胸と同じか」



「…………」





 何となく。

 彼の頬が少し染まった気がした。





 やだな。

 こんな事で照れないでよ。





 私達ったらあんなことやこんなことだってしているのに。

 今更、照れないでったら。





 私も釣られるように頬に熱を持つ。





 今日の私はペールグリーンのドレスを着ていた。

 白いレースがふんだんに使われた可愛らしいデザインのドレスだ。





 彼の瞳の色に合わせて作ったドレス。

 ちょっとドキドキしながら着込んだのだ。





 キースが無事に目覚めてから、カールトン公爵家への処罰が決まった。

 元々第三王子の降下先だった事もあり、完全にキースが爵位を継ぎ、王家が後見人になる。





 お父様とお母様は引退し、領政からも手を引く。

 領地で蟄居生活だ。

 まあ、やけに早く来た老後の隠居生活状態という感じ。







 私がケーキスタンドからサンドイッチを一つ摘まむと、高らかに花火が打ち上がった。







 今日はこの国の王太子殿下の結婚の儀。







 私はこの結婚式に参列した後、第二王子殿下と共に海洋王国フィラルに遊学することになっている。







 今日から三日三晩、国中でお祝いだ。





 聡明で美しい彼女にお似合いな王太子妃という立場。

 彼女なら、この王宮で高らかに咲き誇るに違いない。





 私はルーファスにエスコートされて立ち上がる。





 彼と目が合って微笑んだ。

 なんだか素敵な一日になりそうね?





 私は今日こそ、この硝子の靴を履いて王子様と踊るのだ。





 彼にエスコートされながら、薔薇の咲き誇る庭を越えて、会場に向かった。









  

 

×××××××××××××××


ここまでお読み頂きありがとうございます。

百五十八話になりますが、この話でエピローグも含め、一章了になります。



ブクマ&感想&誤字脱字報告をして頂いた読者様、執筆中の励みになりました。
感謝しております!

しおりを挟む
感想 5

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(5件)

ぽんぽん
2020.11.19 ぽんぽん

色んな拗らせた方々の模様がひきこまれました。誰かは幸せになるといいなぁ。

2020.11.19 日向雪

感想ありがとうございます!
少しずつ幸せになってくれたら良いなと思います。

解除
夜猫
2020.10.07 夜猫

あぁ…確かに…
癒し成す力ある者が、逆の立場になるのはまずい
ましてやそれが加護による力なら加護を失うだけで済めば重畳で、怒りを買って呪われるのもやむなしですね…

癒しの力もってない娘の産んだ子が、癒しの力持ってれば問題ないのに何でかなり無理してまでしつこく養子にするのに固執するのかと不思議だったんですが…
先人としての役目と、叔父としての愛情から、破滅の道から救い上げたかったんですね

2020.10.08 日向雪

最新話まで読んで頂いてありがとうございます!
精霊の力は絶大で、海洋王国フィラルの礎を築いて来たものなので、
これからも、信頼関係が壊れないと良いなと思います。

フィラル国の王女の産む子供に関しては、今日投稿予定の話で、一部疑問が解けるかと思います。
というか、今日の投稿内容と被るなんて、鋭いですね!

解除
nobumi
2020.09.22 nobumi

いつも楽しく読ませていただいております。

とてもステキなお話なのですが、一つだけとても気になる箇所がありまして…。
時々「絞殺された」という表記が出てくるのですが、
まだ殺されてはいないので
絞殺されかけた、または絞首されたの方がしっくりくるのではないでしょうか?
文体に詳しいわけではないので、余計なお世話でしたら申し訳ないのですが…。

今1番好きなお話なので、更新を楽しみにしています。

2020.09.22 日向雪

いつも読んで頂いてありがとうございます!

確かに生きてますものね!
取り敢えず、最新話を直しました。
ご指摘ありがとうございます!

旧話もちょこちょこ直して行きますね(汗)

解除

あなたにおすすめの小説

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

悪役令嬢によればこの世界は乙女ゲームの世界らしい

斯波@ジゼルの錬金飴③発売中
ファンタジー
ブラック企業を辞退した私が卒業後に手に入れたのは無職の称号だった。不服そうな親の目から逃れるべく、喫茶店でパート情報を探そうとしたが暴走トラックに轢かれて人生を終えた――かと思ったら村人達に恐れられ、軟禁されている10歳の少女に転生していた。どうやら少女の強大すぎる魔法は村人達の恐怖の対象となったらしい。村人の気持ちも分からなくはないが、二度目の人生を小屋での軟禁生活で終わらせるつもりは毛頭ないので、逃げることにした。だが私には強すぎるステータスと『ポイント交換システム』がある!拠点をテントに決め、日々魔物を狩りながら自由気ままな冒険者を続けてたのだが……。 ※1.恋愛要素を含みますが、出てくるのが遅いのでご注意ください。 ※2.『悪役令嬢に転生したので断罪エンドまでぐーたら過ごしたい 王子がスパルタとか聞いてないんですけど!?』と同じ世界観・時間軸のお話ですが、こちらだけでもお楽しみいただけます。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

悪役令嬢に転生したけど、破滅エンドは王子たちに押し付けました

タマ マコト
ファンタジー
27歳の社畜OL・藤咲真帆は、仕事でも恋でも“都合のいい人”として生きてきた。 ある夜、交通事故に遭った瞬間、心の底から叫んだーー「もう我慢なんてしたくない!」 目を覚ますと、乙女ゲームの“悪役令嬢レティシア”に転生していた。 破滅が約束された物語の中で、彼女は決意する。 今度こそ、泣くのは私じゃない。 破滅は“彼ら”に押し付けて、私の人生を取り戻してみせる。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。