21 / 22
021 『夜の約束』
しおりを挟む「ルーイ様?」
明日からの対策を練っていた王子は、アリシアの声で我に返る。
講義ではなく、うっかり自分の考えに没頭していた。
「お疲れではないですか?」
アリシアが心配そうに覗き込んでくる。
覗き込まれると彼女の薄い胸の辺りとドレスの間に隙間が空く。
白い肌の下で血管の流れが透けて見える。
聖女の肌は白いのだなと頭の隅でボンヤリと思う。
「ルーイ様、体の回復にとって、睡眠はとても重要なのです。今日の講義はこれくらいにして、休みましょう」
休むってどこで?
ここで?
ここは王子の寝室だから、当然だろう。
アリシアは自室に引き取るのだろうか?
そこまで考えた時、王子はアリシアの腰に手を伸ばし引き寄せていた。
引き寄せれば体の中にスッポリと収まってしまう。
薄い肌着を通して体のラインがハッキリと伝わって来る。
「昼間、俺ののもにはならないと言ったな」
「……言いましたね」
「二度も口説くつもりはないが、違う誰かのものになったら殺す」
「………」
「意味は分かるな?」
「言葉通りの意味なら物騒ですね」
「言葉通りの意味だ。返事をしないなら、このまま押し倒す」
「素直に頷いたらどうなりますか」
「……手を離す」
しかし、言葉とは反対に王子はアリシアを強く抱き締めた。
強く抱いた所で、手に入らなそうな気がする。
そんな雰囲気がする女だ。
もちろん押し倒す気など更々なかった。
命を助けて貰い、回復を手助けをして貰い、その上、強姦などしたら、善意に悪意で返す事になる。
それは当然、したくなかった。
ただ。
彼女はあまりにも無防備で。
そして生徒との距離が近い。
手が届いてしまうから、掴みたくなってしまう。
返事など当然頷く事しか出来ないだろう。
そう思って暫しの間待っていたら、アリシアの手が王子の背中に回り、そっと抱き締め返してくれた。
「この格好のママ寝るってどうですか?」
「…………」
返事は二択の筈だったが、まさかの三択目が返って来たのか?
「結構大切な話をしていたと思うが……」
「いえ、申し訳ありません。私は前世では教師と生徒の間にしっかりとした距離感を持っていたのですが、こっちの世界は割と融通が利くんで、色々と冒険と言いますか、未知の領域にチャレンジしてみたくなったと言いますか……」
「…………」
「……つまりですね、公務員ではないので、こういう癒し方も許されるかな? と考えていたのです」
「……こうむいん?」
「前世の言葉です」
「前世ね」
「はい前世です。そういう立場の教師だったので、生徒との抱き合いというスキンシップは許されていませんでした。でも、ルーイ様がそのようなものを求めているのなら、有りっちゃあ有りじゃないですかね?」
「………えー」
「ああ。答えがまだでしたね。押し倒して頂いて結構ですよ? そしてもう一つの方、『誰のものにもなるな』ですね。了解しました。あなた以外の方には抱かれません。あなたが抱かない限り一生処女ですね。お約束しましょう。このお約束でルーイ様の心が安定するならお安い御用ですよ」
「…………次元が違うんだな」
「は?」
「……いや」
つまり。
思考回路の次元が違う。
アリシアという人間は、ものの見方が独特なのだ。
生徒が元気になるのなら、自分の身体的な部分やそれを提示することに戸惑いがない。
王子はそっと体を離した。
0
あなたにおすすめの小説
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。
1歳児天使の異世界生活!
春爛漫
ファンタジー
夫に先立たれ、女手一つで子供を育て上げた皇 幸子。病気にかかり死んでしまうが、天使が迎えに来てくれて天界へ行くも、最高神の創造神様が一方的にまくしたてて、サチ・スメラギとして異世界アラタカラに創造神の使徒(天使)として送られてしまう。1歳の子供の身体になり、それなりに人に溶け込もうと頑張るお話。
※心は大人のなんちゃって幼児なので、あたたかい目で見守っていてください。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる