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一話 『神の審判』1
しおりを挟む百年に一度、神は人の子に審判を下す。
神が命に反していないか。
神の造りたもうた神の庭は正常か。
庭の管理者は古より七人の王に託されている。
圧政を引いた王は豚になり。
怠惰を貪った王太子は蛙に変えられた。
ーーそして、明日
神の審判執行日を迎えるーー
◇ ◇ ◇
「おい」
リオは王太子の執務室で、この部屋の主に声を掛ける。
オルコット王国の王太子を務めているアシュリー・エヴァ・オルコットという王子はこの王国の九番目の王子に当たる。
九番目の王子が王太子とは尋常ではない。
その上に八人もの王子がいるのだから。
しかし。
現実問題、九番目のアシュリーが王太子をしている。
簡単に言えば、この世界は七人の王と七人の魔導師からなる。
成るというのも不思議な話だが、各王は乱世より成り上がったり、豪族が力を付けて自然と統治者になった訳ではない。
神が七人の王を決め、世界を七つに割り、魔導師を補佐に付け、統治を命じたのだ。
王家は常に定められており、また補佐役の魔導師も決められた家の者が成る。
魔導師の家格は当然王家に続いて次位になる。
次位といっても、基本王家と扱いは同等。
そもそも魔導師は神の直系なのだから、身分としては上なくらいなのだ。
だが、その絶大な力によって王家を支えるのが仕事であり、神の意志もそうあるが故、王家の下に位置してる。
魔導師は王を裏切る事が出来ない。
そして王は魔導師を殺す事が出来ない。
そういう盟約なのだとか。
つまり王は自分の意に染まぬ魔導師だからといって、廃することが出来ない。
そんな事をしようものなら、王国は一瞬で潰える。
そして魔導師もまた王が気に入らないからと言って、見放す事が出来ない。
どんなに。
どんなにどうしようもない王でも支え尽くす。
九番目の王子が何故王太子なのか?
それは彼に魔導師の忠誠が誓われたからに他ならない。
リオという次期王宮筆頭魔導師がアシュリーという王子を次期国王に定めたから、アシュリーは自動的に王太子になったのだ。
生まれた順序でもなく。
本人の意思でもなく。
魔導師の意思によって決められた王太子。
それが故か、何が故かは分からないが、アシュリーという王太子は、それほど熱心に執務をこなすタイプではなかった。
リオは窓辺でぼんやりと外を見ていたアシュリーに声を掛ける。
「おい。仕事が溜まってるぞ」
下から上がってきた報告に印を押すだけなのだから速やかに済ませて欲しい。
「リオが押していいよ」
目も通さないのか。
各地で何が起こっているかくらい把握しろよ。
書類は王太子の第一補佐官であり、次期王宮筆頭魔導師であるリオが優先順位の高い順から並べてあり、更に要約と最善の判断内容まで注釈してある。
王太子印を押すだけが王太子の仕事だったが、それもしないとあっては、明日の審判が思いやられる。
王家には百年に一度、神の審査が入るのだ。
王ないし、王太子が審査対象。
王はもう高齢だ。
事実上、譲位している訳なのだが、アシュリーがのらりくらりと即位を交わしていて、名目上は今も王陛下で有らせられる。
しかしーー
十中八九、審判はアシュリーに下されるだろう。
仕事自体は、アシュリーというよりはリオがこなしている訳なのだし。
「お前、そんなサボり王で明日の審判は大丈夫なのか?」
窓の外を眺めてたアシュリーはリオを振り返ると微笑んだ。
「大丈夫だろう。王国は平和だ」
柔らかな金色の髪と、王族の証であるアメジスト色の瞳をしている。
いかにも王子と言ったその容貌とは裏腹に、彼は国を取り仕切る事に興味がない。
「豚か蛙行きだな」
リオはため息を吐くように呟いた。
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