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序章 路地裏に現れる魔法のお店
なりたて魔女のエマの場合
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スラム街の路地裏を一人のボロボロの少女が歩いていた。
彼女の名前はエマ、ほんの半月前までは貧しくも優しい両親の元で健やかに過ごしていた。しかし、2人は殺されなけなしの財産は親戚に奪われてしまった。そして身一つで放り出されて今に至る。
やせ細り、何日も洗っていないためか臭う彼女には男すら近づかない。片手には物乞いをしているときに恵まれた真っ黒な硬貨がひとつ。これではパンも買えやしない。
(ああ、これが銀貨だったらなあ)
そうであれば山盛りのパンが食べられるのに。
そんなことを思いつつすっかり日が暮れた道を急ぐ。
疲れからか眠ってしまいいつもよりも帰路につくのが遅くなってしまったからだ。
ふと後ろに気配がして振り返ればそこにはあれた廃屋のむれには似つかわしくない頑丈な木の扉が月の光に照らされていた。
ーーーーーーーーーーーー
ほこりとごみと腐った臭いが満ちるスラム街。
どこかのマフィアが占拠した裏路地。
放棄され忘れ去られた旧市街。
あるいはだれも訪れない森の奥にある山小屋。
いつかどこかの街角にふらりと現れる魔法の雑貨店。あなたの恋心と引き換えに魔法のアイテムが購入できる。といううわさがまことしやかにささやかれている。
水が限りなくあふれる革袋、いくらでもモノが入る謎の靴下、危難を知らせる指輪。
もし、あなたがそれを求めるのなら銀貨をしっかり握りしめて一人で人目のない道にたちなさい。
振り返ればそこに、、、ほら、ね?
ーーーーーーーーーーーーー
あれが噂のとすぐ思いいたった。どうせこのまま行けば冬には死ぬのだ。盗みに手を出すよりはよほど良いと考えて、危険かもという警戒を振り払い少女は扉を開いた。
一歩立ち入れば甘酸っぱいレモネードのような香りに包まれた。
「アリス様!なんですかこの客は?!?!?!」
「あらあら」
地面までつくような長い黒髪に深淵を感じさせる黒い瞳。夜の帳を切り取ったような布で作られたドレス。
耽美な未亡人といった風情の貴婦人がけだるげにカウンターに肘をついてこちらを見ていた。その隣で使い魔であろう黒猫が騒ぎ立てる。
「とりあえず、身ぎれいにしてあげて、ご飯も食べさせてあげて頂戴。」
そういうや否や黒猫は摩訶不思議な力で少女を浴室に放り込み。気がつけば丸洗いされ、清潔な衣服を着せられていた。
バスタブから見えた外は見知らぬ森の中で見たこともないような巨大な植物が群生していた。逃げ出すことはどうやら無理そうだ。そう、少女は推測した。
そして、いま少女の目の前にはおいしそうな粥とスープが置かれている。
これ、たべて大丈夫なのでしょうか?
そんな警戒が伝わったのか取って食いやしないわよと笑い転げる魔女を見て馬鹿らしくなった少女は料理に手を付ける。一口たべればあまりにもおいしくてあっというまに食べ終わってしまった。
「まだ、体が元気じゃないから今日はこのくらいにしておきなさいな。」
あはははははは
少女ははしたないことによほど未練がましく皿を見つめていたらしくまた魔女に笑われてしまった。
この魔女。箸が転げても笑うのではないでしょうか?
すこし恨めしくおもった少女はそんなことを考えた。
どこか母性を感じさせる彼女の振る舞いにもう二度と誰も信じるものかという心が少しは溶かされたからか。
見知らぬ魔女の根城にも関わらず随分久しぶりにわたしは深い眠りについてしまった。
--------
「あーもーかーわいい(((o(♡´▽`♡)o)))」
「なーにをなさっておいでですかアリス様。」
「やっぱり可愛いは正義だよねー」
「いやスラムの孤児に何言ってるのですか」
「ねえ知ってる?小さいものは可愛いって枕草子にも書いてあるんだよ」
「いや、枕草子ってなんですか」
黙っていれば気だるげなダウナー系美人が使い魔と頭の悪い会話を繰り広げていた。肩肘を着いているベットには今しがた眠りについた少女が横たわっている。
可愛らしい装飾こそないものの子供用の小さな椅子や机はそこが子供用の部屋であることを示している。
「もうちょっとキリッとしてくださいまし。」
そんな小言もなんのその。第一印象って大事よねという理由で被っていた仮面を放り捨てアリスはまだ名前も知らない少女の寝顔を観察した。
さて、彼女の行き先はどうしようか。ゆっくり本人の話を聞いてから考えればいいか。
山一つ背負う竜の上に立つ屋敷の中でそんなことを魔女は考えていた。
彼女の名前はエマ、ほんの半月前までは貧しくも優しい両親の元で健やかに過ごしていた。しかし、2人は殺されなけなしの財産は親戚に奪われてしまった。そして身一つで放り出されて今に至る。
やせ細り、何日も洗っていないためか臭う彼女には男すら近づかない。片手には物乞いをしているときに恵まれた真っ黒な硬貨がひとつ。これではパンも買えやしない。
(ああ、これが銀貨だったらなあ)
そうであれば山盛りのパンが食べられるのに。
そんなことを思いつつすっかり日が暮れた道を急ぐ。
疲れからか眠ってしまいいつもよりも帰路につくのが遅くなってしまったからだ。
ふと後ろに気配がして振り返ればそこにはあれた廃屋のむれには似つかわしくない頑丈な木の扉が月の光に照らされていた。
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ほこりとごみと腐った臭いが満ちるスラム街。
どこかのマフィアが占拠した裏路地。
放棄され忘れ去られた旧市街。
あるいはだれも訪れない森の奥にある山小屋。
いつかどこかの街角にふらりと現れる魔法の雑貨店。あなたの恋心と引き換えに魔法のアイテムが購入できる。といううわさがまことしやかにささやかれている。
水が限りなくあふれる革袋、いくらでもモノが入る謎の靴下、危難を知らせる指輪。
もし、あなたがそれを求めるのなら銀貨をしっかり握りしめて一人で人目のない道にたちなさい。
振り返ればそこに、、、ほら、ね?
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あれが噂のとすぐ思いいたった。どうせこのまま行けば冬には死ぬのだ。盗みに手を出すよりはよほど良いと考えて、危険かもという警戒を振り払い少女は扉を開いた。
一歩立ち入れば甘酸っぱいレモネードのような香りに包まれた。
「アリス様!なんですかこの客は?!?!?!」
「あらあら」
地面までつくような長い黒髪に深淵を感じさせる黒い瞳。夜の帳を切り取ったような布で作られたドレス。
耽美な未亡人といった風情の貴婦人がけだるげにカウンターに肘をついてこちらを見ていた。その隣で使い魔であろう黒猫が騒ぎ立てる。
「とりあえず、身ぎれいにしてあげて、ご飯も食べさせてあげて頂戴。」
そういうや否や黒猫は摩訶不思議な力で少女を浴室に放り込み。気がつけば丸洗いされ、清潔な衣服を着せられていた。
バスタブから見えた外は見知らぬ森の中で見たこともないような巨大な植物が群生していた。逃げ出すことはどうやら無理そうだ。そう、少女は推測した。
そして、いま少女の目の前にはおいしそうな粥とスープが置かれている。
これ、たべて大丈夫なのでしょうか?
そんな警戒が伝わったのか取って食いやしないわよと笑い転げる魔女を見て馬鹿らしくなった少女は料理に手を付ける。一口たべればあまりにもおいしくてあっというまに食べ終わってしまった。
「まだ、体が元気じゃないから今日はこのくらいにしておきなさいな。」
あはははははは
少女ははしたないことによほど未練がましく皿を見つめていたらしくまた魔女に笑われてしまった。
この魔女。箸が転げても笑うのではないでしょうか?
すこし恨めしくおもった少女はそんなことを考えた。
どこか母性を感じさせる彼女の振る舞いにもう二度と誰も信じるものかという心が少しは溶かされたからか。
見知らぬ魔女の根城にも関わらず随分久しぶりにわたしは深い眠りについてしまった。
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「あーもーかーわいい(((o(♡´▽`♡)o)))」
「なーにをなさっておいでですかアリス様。」
「やっぱり可愛いは正義だよねー」
「いやスラムの孤児に何言ってるのですか」
「ねえ知ってる?小さいものは可愛いって枕草子にも書いてあるんだよ」
「いや、枕草子ってなんですか」
黙っていれば気だるげなダウナー系美人が使い魔と頭の悪い会話を繰り広げていた。肩肘を着いているベットには今しがた眠りについた少女が横たわっている。
可愛らしい装飾こそないものの子供用の小さな椅子や机はそこが子供用の部屋であることを示している。
「もうちょっとキリッとしてくださいまし。」
そんな小言もなんのその。第一印象って大事よねという理由で被っていた仮面を放り捨てアリスはまだ名前も知らない少女の寝顔を観察した。
さて、彼女の行き先はどうしようか。ゆっくり本人の話を聞いてから考えればいいか。
山一つ背負う竜の上に立つ屋敷の中でそんなことを魔女は考えていた。
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