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第5話 悪役令嬢の打算と占いの館
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恋愛ゲームと言うのは一人ひとりをじっくり攻略していくのならドキドキしながら恋愛を楽しむ感じが楽しいが、ハーレムルートとか複数同時攻略なんてプレイをしてしまうと、もう情緒もクソもあったものじゃない。
大事なのはパラメーターと好感度の微調整とフラグ管理となり、初見プレイではテンションを爆上げしてくれた攻略対象の頬染めグラフィックも、好感度によって変化する甘い挨拶の台詞も、現在の好感度数値を確認する為の目印に成り下がり、それはもう恋愛ではなくただの作業と化す。
別に今の私はハーレムを目指しているわけでも、王子とジェイドの同時攻略を目指しているわけでもないが、ある程度の段階まで彼らと親しくなっておかなくては…という意味では攻略をしているのと変わらない。
しかし、ゲームと違うのは考えなしに好感度を上げればいいという訳ではなくて、"ほどよい具合に"上げなくてはいけないと言う点で、むしろ難易度は上がっている気すらしている。
上げ過ぎてしまっても、足りなくても問題がある。
だからこそ、繊細な微調整を必要とするわけだが、現実ではゲームとは違って好感度を占い師に確認するわけにもいかないし…とそこまで考えてふと思い出す。
――――いや、いるのか?…占い師…。
いるのかもしれない。だって少なくともゲームにはいた。
そして、こうやって王子と従者と悪役令嬢はそろっているのだから、城下町の市場の隅に立てられた怪しいテントのその中に、銀貨一枚で攻略対象とヒロインの現在の好感度を教えてくれる占い師がいてもおかしくない。
もし占い師がいてくれるのなら、私のこれからの計画も少しは楽になるはずだ。
王子とジェイドとの好感度調整に日々気を揉んでいた私は、このアイデアに少なからず期待を抱いてワクワクしていた。
数値が分る分らないではそのくらい大きな違いがある。
しかし、このとき私は忘れていたのだ。
あの占い師のキャラクターは、個人的にヒロインであるアリシアを気に入って、だからこそ彼女に特別な占いやおまじないをしてくれることになったのだ…ということを。
そんな訳で私は、占い師を探しに、城下町に繰り出すことを決めたのだけれど、さすがに普段の華美なドレスを身につけたまま街へ行ってしまうと悪目立ちしてしまう。
だから私はメイドのマリエッタを捕まえて、彼女の私服を無理やり徴収…もとい、ちょっとだけ借りることにした。
身長も体系もそんなに変わらないし、上着を羽織ってしまえば違和感も目立つ事はないだろう。
「お、お嬢様ぁ…。私の服なんてどうしようっていうんですか!!?」
マリエッタは目をぐるぐるさせて困惑していたが、なんとか適当な嘘と笑顔で誤魔化した。
「雑巾が必要なのでしたら、ちゃんとしたのを御持ちしますからぁ…!!」とか言い出したのにはさすがに驚いてしまった。
こいつ実はちゃんと私の性格が悪いことをわかってるな?????
さすがにそんなことはしないわよ!とド突きたくなる気持ちをぐっと押さえ、苦笑を浮かべるだけにした。お嬢様ですからね。オホホホ。
「嫌だわ、マリエッタ。わたくし、普段貴女がどんな服を着て過ごしているのか興味があるだけですのよ。変なことを言うのはお止めになって…」
「え、えぇ…」
「わたくし達、貴族やお城のことだけ知っていれば良いと言うものではないでしょう?庶民や街の人達がどんな暮らしをしているのか知る事だって大事なことだと思いませんこと?」
「は、はぁ…」
私がどれだけもっともらしいことを言ってみても、マリエッタは分っているのかいないのか、ある意味で全然分らない間抜け面を浮かべるばかりだ。
私にそんな趣味はないと思っていたのだけど、エリスレアが若干彼女にキツく当たってしまっているのは、彼女の"こういう部分"のせいだと思う。
現代日本人的感覚を持っている波佐間悠子に言わせると、いじめられるのは苛められるほうにも原因があるなんていじめっ子の理論は止めろ!ということになるのだが、エリスレアとしての感情に素直になるのなら、要するに彼女は何処か「苛めたくなるタイプ」というわけである。
しかし、ここで彼女に意地悪をすることが私の目的ではない。
私の目的はこれから出会うアリシアのために、万全の状況を整えておくことだ。
さっさとマリエッタの服を回収して町へ向かわなければならない。
そう思った私は取り繕うのを放棄して、我儘で傍若無人に言い放った。
「ごちゃごちゃ言わずに貴女の服を持って来て頂戴」
「ひっ、わ、わかりましたよぅ…!?」
マリエッタはぴゅーっと子ネズミのように駆け出して行って、しばらくしてから自分の普段着を持ってきた。
さすがに貴族である私・エリスレアが着ている服とは全然違う、布も質素で色も地味な服だったが、私の中の波佐間悠子は、こういう服の方が安心する…みたいな感情を密かに抱いたのだった。
マリエッタが持って来た服の中で、私が着られそうなものをチョイスして、あとはまだオロオロソワソワしているマリエッタを部屋からさっさと追い出して準備を始めることにする。
街へ行くなんて簡単に言ってはみたけれど、貴族の令嬢であるエリスレアが一人で城下町に行くなんて、本当なら許されることではない。
だから、私はこっそりこっそりお忍びで向かうことになる。
変なトラブルに巻き込まれることなく目的を無事達成出来ることを祈りつつ、私はマリエッタの普段着に袖を通すのだった。
大事なのはパラメーターと好感度の微調整とフラグ管理となり、初見プレイではテンションを爆上げしてくれた攻略対象の頬染めグラフィックも、好感度によって変化する甘い挨拶の台詞も、現在の好感度数値を確認する為の目印に成り下がり、それはもう恋愛ではなくただの作業と化す。
別に今の私はハーレムを目指しているわけでも、王子とジェイドの同時攻略を目指しているわけでもないが、ある程度の段階まで彼らと親しくなっておかなくては…という意味では攻略をしているのと変わらない。
しかし、ゲームと違うのは考えなしに好感度を上げればいいという訳ではなくて、"ほどよい具合に"上げなくてはいけないと言う点で、むしろ難易度は上がっている気すらしている。
上げ過ぎてしまっても、足りなくても問題がある。
だからこそ、繊細な微調整を必要とするわけだが、現実ではゲームとは違って好感度を占い師に確認するわけにもいかないし…とそこまで考えてふと思い出す。
――――いや、いるのか?…占い師…。
いるのかもしれない。だって少なくともゲームにはいた。
そして、こうやって王子と従者と悪役令嬢はそろっているのだから、城下町の市場の隅に立てられた怪しいテントのその中に、銀貨一枚で攻略対象とヒロインの現在の好感度を教えてくれる占い師がいてもおかしくない。
もし占い師がいてくれるのなら、私のこれからの計画も少しは楽になるはずだ。
王子とジェイドとの好感度調整に日々気を揉んでいた私は、このアイデアに少なからず期待を抱いてワクワクしていた。
数値が分る分らないではそのくらい大きな違いがある。
しかし、このとき私は忘れていたのだ。
あの占い師のキャラクターは、個人的にヒロインであるアリシアを気に入って、だからこそ彼女に特別な占いやおまじないをしてくれることになったのだ…ということを。
そんな訳で私は、占い師を探しに、城下町に繰り出すことを決めたのだけれど、さすがに普段の華美なドレスを身につけたまま街へ行ってしまうと悪目立ちしてしまう。
だから私はメイドのマリエッタを捕まえて、彼女の私服を無理やり徴収…もとい、ちょっとだけ借りることにした。
身長も体系もそんなに変わらないし、上着を羽織ってしまえば違和感も目立つ事はないだろう。
「お、お嬢様ぁ…。私の服なんてどうしようっていうんですか!!?」
マリエッタは目をぐるぐるさせて困惑していたが、なんとか適当な嘘と笑顔で誤魔化した。
「雑巾が必要なのでしたら、ちゃんとしたのを御持ちしますからぁ…!!」とか言い出したのにはさすがに驚いてしまった。
こいつ実はちゃんと私の性格が悪いことをわかってるな?????
さすがにそんなことはしないわよ!とド突きたくなる気持ちをぐっと押さえ、苦笑を浮かべるだけにした。お嬢様ですからね。オホホホ。
「嫌だわ、マリエッタ。わたくし、普段貴女がどんな服を着て過ごしているのか興味があるだけですのよ。変なことを言うのはお止めになって…」
「え、えぇ…」
「わたくし達、貴族やお城のことだけ知っていれば良いと言うものではないでしょう?庶民や街の人達がどんな暮らしをしているのか知る事だって大事なことだと思いませんこと?」
「は、はぁ…」
私がどれだけもっともらしいことを言ってみても、マリエッタは分っているのかいないのか、ある意味で全然分らない間抜け面を浮かべるばかりだ。
私にそんな趣味はないと思っていたのだけど、エリスレアが若干彼女にキツく当たってしまっているのは、彼女の"こういう部分"のせいだと思う。
現代日本人的感覚を持っている波佐間悠子に言わせると、いじめられるのは苛められるほうにも原因があるなんていじめっ子の理論は止めろ!ということになるのだが、エリスレアとしての感情に素直になるのなら、要するに彼女は何処か「苛めたくなるタイプ」というわけである。
しかし、ここで彼女に意地悪をすることが私の目的ではない。
私の目的はこれから出会うアリシアのために、万全の状況を整えておくことだ。
さっさとマリエッタの服を回収して町へ向かわなければならない。
そう思った私は取り繕うのを放棄して、我儘で傍若無人に言い放った。
「ごちゃごちゃ言わずに貴女の服を持って来て頂戴」
「ひっ、わ、わかりましたよぅ…!?」
マリエッタはぴゅーっと子ネズミのように駆け出して行って、しばらくしてから自分の普段着を持ってきた。
さすがに貴族である私・エリスレアが着ている服とは全然違う、布も質素で色も地味な服だったが、私の中の波佐間悠子は、こういう服の方が安心する…みたいな感情を密かに抱いたのだった。
マリエッタが持って来た服の中で、私が着られそうなものをチョイスして、あとはまだオロオロソワソワしているマリエッタを部屋からさっさと追い出して準備を始めることにする。
街へ行くなんて簡単に言ってはみたけれど、貴族の令嬢であるエリスレアが一人で城下町に行くなんて、本当なら許されることではない。
だから、私はこっそりこっそりお忍びで向かうことになる。
変なトラブルに巻き込まれることなく目的を無事達成出来ることを祈りつつ、私はマリエッタの普段着に袖を通すのだった。
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