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大学生
第18話
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「…………」
「…………」
俺は今何を見ているのだろうか。
玄関からほど近い部屋で小さいテーブルを三人で囲んだ状態で座っている。配置としては六花と亜美が向き合った状態で俺がその間みたいな感じである。
俺としては一刻も早くこの場所から逃げたい。
夏だというのに部屋がやけに寒い。
エアコンの故障かと思ったが、今年買ったばかりの家電がすぐに壊れるはずがない。
ならば、設定温度でも間違えたかと思えば、やはり違う。リモコンの設定温度を確認すれば、地球に優しい二十八度だった。
では、この寒さはなんなのだろうか……――風邪かな?
「さっきから隼人は何してるの?」
そんな俺の様子が気になったのか六花がそう訊ねてきた。
俺はなんといえばいいのか、悩んだ。
だって、さっきから二人…六花と亜美は睨み合ったままだからである。
俺の体内時計では、一時間は経っているのではないだろうか。まぁ、実際は五分ぐらいなんだが。
それはそうと、この状況で何か言葉を発せば、確実に二人の鋭い目は俺に向けられるわけであって…………………………黙っておこう。
「六花ちゃん、隼人はどうでもいいでしょ?それより二人の関係を説明してくれる?」
亜美は俺を横目でチラッと見たあと再び六花の方へ視線を戻し、冷たい声で言い放った。
六花はそれに少し怯んだように見えたが、何を覚悟したのか小さい拳をギュッと握りしめた。
「私は……」
「六花は俺の彼女だ!」
「……え?」
六花が何かを言う前に俺は亜美に向かってそう言っていた。
それを聞いた六花は心底驚いているようで、亜美もまた同じ様子。
これだけではまだ信じてもらえないと思った俺は話を続けた。
「六花は俺にとって一番大切な人だ。どこに行こうと、
いつも俺に付いてきてくれる。俺はそんな健気で優しいところが好きなんだ。だから、六花が好きだぁあああ!」
最後は立ち上がって叫んでいた。
我に帰り、二人を見ると、六花は顔をかぁーっと赤くなっている。亜美は下を俯いたまま固まっている。
――ヤバい。ちょっとヤバいかも。
亜美のやつがフラれたショックで刃傷沙汰に発展しなければいいんだが。
「……分かったよ」
「え?」
亜美が俯いたままそう言った。
表情は見えないが、とうとう刃傷沙汰に発展してしまうのか……と思ったがそうでもなかった。
「私も六花ちゃんみたいにすれば好きになってもらえる……」
「ええ?」
何かを呟いた亜美。
――やっぱりヤバい。変なスイッチ押してしまったか?
というか、まだあきらめてないのか……。
亜美はそのまま静かに立ち上がると、お邪魔しましたとだけ言って立ち去って行った。
「…………」
俺は今何を見ているのだろうか。
玄関からほど近い部屋で小さいテーブルを三人で囲んだ状態で座っている。配置としては六花と亜美が向き合った状態で俺がその間みたいな感じである。
俺としては一刻も早くこの場所から逃げたい。
夏だというのに部屋がやけに寒い。
エアコンの故障かと思ったが、今年買ったばかりの家電がすぐに壊れるはずがない。
ならば、設定温度でも間違えたかと思えば、やはり違う。リモコンの設定温度を確認すれば、地球に優しい二十八度だった。
では、この寒さはなんなのだろうか……――風邪かな?
「さっきから隼人は何してるの?」
そんな俺の様子が気になったのか六花がそう訊ねてきた。
俺はなんといえばいいのか、悩んだ。
だって、さっきから二人…六花と亜美は睨み合ったままだからである。
俺の体内時計では、一時間は経っているのではないだろうか。まぁ、実際は五分ぐらいなんだが。
それはそうと、この状況で何か言葉を発せば、確実に二人の鋭い目は俺に向けられるわけであって…………………………黙っておこう。
「六花ちゃん、隼人はどうでもいいでしょ?それより二人の関係を説明してくれる?」
亜美は俺を横目でチラッと見たあと再び六花の方へ視線を戻し、冷たい声で言い放った。
六花はそれに少し怯んだように見えたが、何を覚悟したのか小さい拳をギュッと握りしめた。
「私は……」
「六花は俺の彼女だ!」
「……え?」
六花が何かを言う前に俺は亜美に向かってそう言っていた。
それを聞いた六花は心底驚いているようで、亜美もまた同じ様子。
これだけではまだ信じてもらえないと思った俺は話を続けた。
「六花は俺にとって一番大切な人だ。どこに行こうと、
いつも俺に付いてきてくれる。俺はそんな健気で優しいところが好きなんだ。だから、六花が好きだぁあああ!」
最後は立ち上がって叫んでいた。
我に帰り、二人を見ると、六花は顔をかぁーっと赤くなっている。亜美は下を俯いたまま固まっている。
――ヤバい。ちょっとヤバいかも。
亜美のやつがフラれたショックで刃傷沙汰に発展しなければいいんだが。
「……分かったよ」
「え?」
亜美が俯いたままそう言った。
表情は見えないが、とうとう刃傷沙汰に発展してしまうのか……と思ったがそうでもなかった。
「私も六花ちゃんみたいにすれば好きになってもらえる……」
「ええ?」
何かを呟いた亜美。
――やっぱりヤバい。変なスイッチ押してしまったか?
というか、まだあきらめてないのか……。
亜美はそのまま静かに立ち上がると、お邪魔しましたとだけ言って立ち去って行った。
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