異世界で勇者になりました。

ながしょー

文字の大きさ
1 / 2

プロローグ

しおりを挟む
 ある日の夜。
 俺は夕食を買いに自宅付近のコンビニを訪れていた。
 店内に入ると、まだ春だというのに冷房が効いてて肌寒い。
 身震いをしながらも適当に選んだハンバーグ弁当とペットボトルのお茶をレジに持っていく。
 会計を済ませ、弁当を温めてもらっている間、出入口の方から仲睦まじい親子三人が店内に入ってきた。
 母親と父親、子ども。
 その親子の様子を見ると、どうやら夕食を買いに来たらしい。
 一人暮らしならともかく、家族で夕食がコンビニ弁当はどうかと思ったが、俺はきっと羨ましがってたのかもしれない。
 俺の家族は一年前飛行機の墜落事故で死んだ。
 母、父、妹、祖父母全員一瞬にしていなくなった。
 ――……俺だけが生き残ってしまった……。

◆❖◇◇❖◆

 コンビニを出て、自宅まで歩いている時。
 後ろから一台の中型トラックが近づいてきた。
 俺は気にもせず、歩いていたが、誰かが「危ない!」と叫んだ。
 ――なんなんだ?
 俺は首だけを後ろに向けると……先ほどの中型トラックが手を伸ばせば届く距離まで来ていた。
 その瞬間、世界がゆっくり動いているように見えた。
 ――ああ、もう死ぬのか。この17年間、桜坂優希の人生終わるのか。
 俺はゆっくり目を閉じた。
 次に目を開ける時は奇跡的に助かり、病院のベッドの上か死後の世界か。
 でも、どう考えたって助かるはずもないよな。
 
 「桜坂優希よ……」

 俺の名前を呼ぶ声がした。
 目を閉じているから目の前はもちろん真っ暗である。
 
 「桜坂優希……目を開けんか」

 そう言われ、目を少しずつ開けていくと、澄み切った青空が広がっていた。
 どうやら仰向けで寝ている状態らしく、身を起こすと当たり一面草原が広がっている。

 「ここは……どこだ?」

 見覚えのない土地。
 何より俺の名前を呼んだであろう人物はどこにもいなかった。
 ただ……声だけが聞こえる。

 「ここは……知らん」

 「は?」

 「すまんの。神様のワシでも歳が歳だから物忘れが酷くてな」

 ドン引きした。
 神様にも人間と同じく老化現象があるとは……。

 「そ、それより俺は死んだのか?」

 「いや、死んではおらんよ。桜坂優希にはこの異世界で勇者になってもらう」

 「ちょ、ちょっーと待て!」

 話がいきなり急展開したから全然意味が分からない。
 このジジイ……いや、神様何言ってんだ?
 
 「心配せんでもよろしい。技は使えるようにしてある」

 「技?」

 「うむ。日本にいた時、中二病っていう病にかかっておったじゃろ?」

 「……ああ」

 俺のザ・黒歴史。
 あれのせいで中学の時は友だちが一人また一人とだんだん減っていった。
 ようするに「あいつと関わるとやべぇ」とかなんとかあったのだろう。

 「その技現実で使えるぞ?」

 マジか。
 なら、やるほかない。
 俺は中二病時代の思い出したくないことを無理やり思い出し身構えた。

 「全てを焼き尽くす魔剣!レーヴァテイン!」

 その瞬間、俺の手にレーヴァテインが顕現した。
 光を全て闇に変えてしまいそうな雰囲気を放っている。

 「……桜坂優希。お主……勇者だぞ?」

 「知ってます」

 「なら、なぜ魔剣なんじゃ?普通は聖剣じゃろ?」

 言われてみれば、たしかにそうだ。
 世界を救う、魔物をやっつける勇者が魔剣を使っているとか聞いたことがない。
 でも、これは仕方がない。

 「俺……このレーヴァテインしか知らないんです」

 中学の時、かっこいい剣がないか調べた時があった。
 その時、すぐにこのレーヴァテインを見つけたもんだから他の剣とか知らん。

 「はぁ……まぁ、よかろう。せいぜい頑張るんじゃぞぉ」

 その後声は聞こえなかった。
 聞こえるのは風に吹かれ、草が揺れる音だけ。
 とりあえず、俺は歩くことにした。

 「あ。これもここに来てたのか」

 俺のすぐ近くを見ると、コンビニの袋があった。
 中身を確認すると……ぐちゃぐちゃだが、食えないことはない。
 ひとまず腹ごしらえしてから行くとするか。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

二度目の勇者は救わない

銀猫
ファンタジー
 異世界に呼び出された勇者星谷瞬は死闘の果てに世界を救い、召喚した王国に裏切られ殺された。  しかし、殺されたはずの殺されたはずの星谷瞬は、何故か元の世界の自室で目が覚める。  それから一年。人を信じられなくなり、クラスから浮いていた瞬はクラスメイトごと異世界に飛ばされる。飛ばされた先は、かつて瞬が救った200年後の世界だった。  復讐相手もいない世界で思わぬ二度目を得た瞬は、この世界で何を見て何を成すのか?  昔なろうで投稿していたものになります。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

俺、何しに異世界に来たんだっけ?

右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」 主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。 気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。 「あなたに、お願いがあります。どうか…」 そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。 「やべ…失敗した。」 女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!

処理中です...