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一学期【中間試験】編
吸血鬼JKは苦労する
しおりを挟む時刻は夜の8時半頃。自分達で作った夕飯のカレーを食べ終えた私は、高一の時にケータの家に置かせてもらった歯ブラシで歯を磨いていた。
「はぁ。久しぶりね、アイツの家に泊まるの」
高一までは良く勉強会や桜花達と共に泊まりに来たものだが、高二になってからそういう機会は無くなっていた。まぁ、私はそれで別に良かったのだが。そもそも桜花に誘われていなかったら行こうとも思わなかった。だから寂しいとかはない。因みに歯ブラシは自分の分以外に桜花、京治、新君といった高一同クラメンバーの分も置いてある。特にケータの家によく泊まりに来るのは新君と京治だと桜花から聞いた。
「それにしても新君があの二人と仲良いのは驚きだけどね」
未だに共通点がなさすぎるあの3人が何故あんなにも仲がいいのかわからない。 まぁ、ケータと京治と友人関係になっている私が言えることではないが。
「しかし、未だに私達の歯ブラシとコップが残されてるってのはどんなもんかなぁ」
ここに置かずとも私達に返却すればいいのに。ってか、私達も私達でなんでケータの家に歯ブラシやコップ、枕や箸といった生活必需品を置いていくという馬鹿な事を考えついてしまったのだろうか。確か、桜花はパジャマや下着などもケータの家のクローゼットに入れてあるとか。高二にもなって恥ずかしくないのだろうか。
「そう言いつつ、パジャマは置かせてもらってるんだけどね」
私は苦笑いを浮かべて呟く。なんというかケータの家は第二の我が家みたいな感じでどこか落ち着く。去年もテスト勉強の為にお泊まりしてみっちりしごかれた記憶がある。ケータは勉強の事になると怖いけど、しっかりとやり遂げたら美味しいお菓子を作ってくれる。そういう点がアイツを嫌いになれない要因の一つなんだろう。
「そろそろ風呂でも入ろうかな。妹華ちゃんには許可もらってるし」
歯磨きを終え、口をゆすぐ。そして、手を拭いて洗面所を後にした。
⑴
ふかふかとしたベッドの感触。鼻をくすぐる甘い香り。ほんのりとした温もり。そして、首にかかる誰かの吐息。
・・・・吐息!?
俺は閉じていた瞳を勢いよく見開いた。そして、吐息のかかる方に視線を向ける。
小豆色の髪と小さな身体をすっぽりと覆う猫耳フードパーカーに身を包む我が妹で悔しいけど美少女の分類に入る妹華が、甘える幼子の様に俺の服をギュッと掴んで眠っていた。
「・・・なんでここ・・・っう」
頭を軽く動かしたタイミングでズキズキとした痛みを感じて顔を顰める。何か忘れている気がする。そう思うのだが、何があったのか覚えていない。 残っている記憶は、レヴィとリィンと共にテスト勉強をしていたという数時間前の出来事だけ。
「・・・ふむ、わからん」
覚えてない以上は考えても無駄だ。とりあえずこの状況からどう抜け出すかだ。無理矢理起こせば蹴られるし、優しく起こしても蹴られるし、上着だけ残して抜け出したらリィンに蹴られるし。
「・・・蹴られる選択肢しかなくね?」
救いもクソもない残酷な選択肢。
「このまま待機っていう選択肢もあるよな」
どうしたものか、と思考を巡らせていると、
「・・・ねぇ、私のパジャマってど・・・こに・・・」
背後から、リィンの声が聞こえた。反射的に振り返ると、口をぽかんと開けたまま動かないリィンと目が合う。
「・・・あ、あの!こ、これは・・・誤か・・・」
「・・・キモ」
「・・・キ、キモ・・・!?」
「・・・死ね」
さらなるリィンからの追い打ち。余りのショックに俺は言葉が出ない。そんな俺を気にとめずリィンは部屋を出ていった。
「・・・辛い」
リィンがいなくなった後、俺は顔を覆って泣いた。布団が涙で濡れたのは言うまでもない。
⑵
兄太がリィンの言葉に落ち込んでいる頃。
久慈宮家に隣接している三階建ての建物。そこは岸野院雫が住む家。 両親は仕事で帰りが遅いため、夕方はいつも一人。それもあり、夕飯と朝食は兄太の家で食べている。
ただ、今日の雫は夕飯を食べに行っていない。別段、特別な理由がある訳では無い。至って普通の理由。
ただ、『間食をした』とか、『家で夕飯を食べた』では無い。
万が一、間食していたりしても、雫は無限の胃袋を持つほどの食いしん坊。間食ぐらいでお腹いっぱいになる訳が無い。
では、何故か? 答えは至ってシンプルだ。
「・・・・んみゅ」
柔らかい素材でフカフカな感触を生み出すソファの上で制服姿のまま眠っていたからだ。
高校の授業は睡眠に使用し、放課も睡眠。昼食では、兄太が買った定食と生姜焼き定食にうどん2杯を食べた。そして放課後は駄菓子屋でお菓子を買い、家に帰る。その後も、テレビを見ながら、お菓子を食べて、眠くなったら寝る。
なんというか自堕落な生活だ。 ただ、それが雫にとっては当たり前の事なのだ。兄太がどれだけ注意しても直さない。
そんな彼女が、兄太の家に夕食をたかりにいかないのはとても珍しいことなのだ。兄太がそれを知れば驚くだろう。
「・・・・んにゃ」
雫はゴロンと寝返りをうつ。その際に、制服がめくれ、綺麗なお腹が姿を現す。今日はそこまで寒くはないが、お腹を出して寝れば風邪をひくだろう。他に人がいれば直してくれるのだが、今は誰もいない。
さらに寝返りを一つ。 そして、ゴッ!!という音が一つ。
「・・・んぎゃ!?」
なんか変な奇声を上げて雫は目を覚ました。ズキズキする後頭部を両手で押さえながら。
「・・・いたいぃ」
涙目でそう呟き、壁にかけられた時計に目を向けた。
「あ・・・ご飯」
雫は重要なことを思い出して、眠そうな顔でリビングをあとにした。
⑶
「さて、どうしたものか」
リィンに罵倒による心へのダメージから立ち直った俺は、未だに眠る妹華を見て息を吐いた。
一応、このあとは至ってやることも無い訳だが、風呂には入りたい。明日も学校だし、汗もかいてる。妹華にも風呂に入って欲しいしな。女の子なんだから、匂いは気にする筈だ。
「仕方ない。蹴られるの覚悟で起こすか」
ペちペちとぐっすりお眠の妹華の頬を優しく叩く。すると、ギュリと爪でつねられた。予期していなかった攻撃に俺は声にならない呻きをあげた。痛いなんてものじゃない、皮膚がちぎれる。俺は涙目になりながら、妹華の頭を撫でると、つねるのをやめてくれた。
「はぁ。マジでどうしよう」
妹華が起きずに抜け出す方法。思いつくのは蹴られて終わる方法のみ。諦めるという方法もあるにはあるが、起きたら起きたで蹴られるに決まっている。それなら今のうちに抜け出した方がいい。遅ければ遅いほど、強烈な一撃をくらうのだ。それなら、早めに抜け出して蹴られる方がまだマシだ。
「覚悟を決めて上脱ぐか」
俺は最終的にその方法を実行する。
「んしょと」
ぬぎぬぎする事、数分。
「あと、少し」
妹華側の腕を引っこ抜こうと動く。
触れないようにしないと殴られる。
「もうちょい」
俺が腕を引っこ抜くタイミングで、フニッ、と微かな胸の感触を感じた。
「・・・んっ」
隣の妹華から艶かしい声が漏れる。
「・・・・」
サァー、と顔を青くなるのが分かる。慌てて妹華に目を向けると、
「・・・すぅ」
ぐっすり眠っていた。俺は安堵のため息を吐いて、上の服を脱ぎきる。そしてタンスから新しい服を取り出して着替える。
「脱出成功したし、とりあえず顔洗いに行くか」
俺は、大きな欠伸をして部屋を出て階段を降り、洗面所へと向かった。
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