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第壱話:踏み台のシルヴァン
しおりを挟む【冒険者】ってのはどの職業なんかよりもモテる職業だ。まぁ、それを聞いたら誰だってこんなホラ話に騙されるバカなんていないだろって笑い飛ばすだろう。確かにそうだと俺も思う。
「・・・リア充全員、オーガに挽肉にされねぇかなぁ」
冒険者ギルド【アマガラノ庭】のカウンターで独り寂しく酒をあおりながら恨み言をつぶやく哀れな男性冒険者。それが俺、シルヴァン・ストラハブだ。
「やれやれ、アンタは今日もダークサイドに浸って…。そんなんだから女の子が寄ってこないのよ」
前の席にそう呆れたコメントと共に座るのは、独り身の俺をからかう事が生き甲斐だとほざく女、ライカ・アマガラ。一応、このギルドの受付嬢であり、マスターの娘でもある。
「・・・ナルシストすぎて男が寄ってこないお前にだけは言われたかねえよ」
「そこがおかしいのよね。可愛いのは事実なんだから仕方ないじゃない」
ライカはそう言うと鏡を取りだしていつもの恒例とも言える自分の顔を見て自画自賛するナルシストタイムに突入した。こうなった彼女を止めれる奴はいないので、俺は視線を外して、ちょうど他の冒険者に料理を運び終えて戻る猫耳ウェイトレスに声をかける。
「そこの猫耳店員、串焼き5本ほど頼むわ」
「・・・・」
「えーっと、あの~、店員さん?」
聞こえてないのかと思い、再度、声を掛けてみる。
「・・・・」
「・・・非モテ冒険者は空気ってか。はぁ…」
無視されて苛立つなんてものは、とうの昔にやめた。冒険者の世界ではこれが当たり前。モテない冒険者には殆どの異性の当たりが冷たい孤独な生活を送り、逆にモテる冒険者には異性は言い寄ってくるし毎晩お誘いがあって当たり前のような生活を送れる。
「やれやれ、相変わらずシルヴァンはナルシスト女と寂しく食事をしてるのかい?」
噂をすれば、モテモテ冒険者様のご登場だ。
「哀れな非モテ冒険者に何か用か? ギルド一のモテ男--アルマ・シュピィエル殿」
皮肉のこもった声で、俺は視線を合わせることも無く声をかけてきた男の名前を口にする。そんな俺の皮肉にアルマは苛立ちも侮蔑なんて反応も示さない。
「まったくシルヴァンは昔から変わらないなぁ。ま、そこが僕の好きな親友である君の良い所なんだけどね」
ただただ笑うだけ。こいつには皮肉を言った所で意味が無い。きっとどこか俺とズレているのだ。
「・・・で? 女に縁のない哀れな俺に話しかけた理由は? クソどうでもいい事だったら、消えてくれ。お前の顔なんて見たくねえんだよ」
態度が悪いってのも八つ当たりだってのも分かっている。そしてその元凶が醜い嫉妬という事も。
「なに、どうでもいい事かはコレを見た後に判断してくれると嬉しいかな」
「・・・あ?」
アルマはそう言うと一枚の紙切れを机に置いた。俺はその紙に記された文面に一通り目を通す。簡潔に説明するとそれは、パーティーへの志願書だ。
「ふーん。非モテな俺しかいないソロパに新人冒険者が志願をねぇ。しかも15歳の女の子ときた」
あまりにも胡散臭い話だ。自慢では無いが俺は冒険者の中でも相当の功績を挙げている。その為、【アマガラノ庭】最強と謳われるSランクの称号を持つ五人の内の一人に入っている。それもあり、当初は志願してくる冒険者も多かったが、全員が全員、単にSランクパーティーにいたという肩書きを得たいが為の踏み台として利用した。
結果、俺は【踏み台のシルヴァン】という悲しき二つ名で呼ばれるようになった。
「悪いが志願書と女の子に良い思い出は無いもんでな。その子には無理だって答えといてくれ」
「・・・はははっ、女の子との縁が少ない君の為に渡しに来たんだが、無駄だった様だね」
「お生憎様、女に縁がないからって誰でもいいってわけじゃねえんだよ。あんな【剛鉄のグリオン】と一緒にすんな」
舌打ちと共にアルマを睨む。相変わらずコイツの無意識に見下してくる気に触る態度が気に食わない。善意は時に人を傷つける刃になる。それをこいつは知らない。
「ふむ、そうなのかい?それは済まないことをした。今後は気をつけるよ」
「今後は来ねえよ。金輪際、俺に関わんな、クソ野郎」
「やれやれ、相当、僕のことが嫌いなんだね、シルヴァン。とりあえず断るなら本人に直接言いなよ。僕は女の子の涙を見るのがいちばん嫌だからね」
アルマはそう言い残して、その場を立ち去っていく。
「ったく、迷惑きわまりねえ奴だよ」
俺は志願書を手にそう吐き捨てる。
「おや?それは志願書じゃん。なになに?遂にアンタにも春到来か?」
「やっとキモイ世界からお帰りかよ、クソナルシスト」
長い間、ナルシストタイムに没頭していたライカにそう吐き捨てる。
「はいはい、非モテ陰キャ君の負け犬コメなんて痛くも痒くもないっての。それよりも、会わないの?その子と」
「・・・今から行くとこだっての」
俺は肩組みしてくるライカを力まかせに振りほどき、志願書を握り締めてギルドを後にした。
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