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第一章:神聖リディシア王国襲撃編
凄腕の治療士:ミリアーナ・クレリック ①
しおりを挟むジーナ村にある木造の一軒家。手入れされた沢山の花が生い茂り、他の家よりも何処か美しく見える。そこは一人の女性が住む家。その女性の名前はミリアーナ・クレリック。凄腕の治療士だ。
「はぁ。 で? 助けたはいいけど、この子は誰なの?」
白雪のように綺麗な長い髪と真紅の瞳をした女性、ミリアーナが、ベッドで眠る青年を顎で指して、少女2人に尋ねる。 その問いに少女2人は、
「知らない」
「・・・私も」
と答えて、首を左右に振った。
「って事は、見ず知らずの人をアンタ達は私の家まで運んできたと? 何度も言ってるけど、私が治療するのはジーナ村の人か、その知り合いだけよ。てっきり、アンタ達の知り合いだと思ったのに・・・治療に使った私の魔力を返しなさいよ」
ミリアーナは不機嫌そうに、クルクルと回していた杖の先端をトントンと、机に何度も押し当てる。
「それにしても、珍しい格好してるわね、この子」
スヤスヤと眠る青年の服装を見て、ミリアーナは呟く。ジーナ村というよりこの大陸で見たことの無いなんの素材かもわからない不思議な服装。貴族が着ている服ほど綺麗でも高そうでもないし、ましてや、自分たちみたいな服とも違う。
「まぁ、いいわ。後のことは私に任せて、レイナとルイナは家に帰りなさい」
「はーい!」
「・・・はい」
ミリアーナにそう言われて、少女2人、レイナとルイナは家を出ていく。それを見届けてから、彼女は再び、青年を調べる。
「汝に命ず。彼の者の素性を暴け」
と口ずさむと共に、杖を青年に向けて、軽く振った。すると、杖の先端から一筋の光が放たれ、青年の額に触れる。この魔法は、もともと尋問に使われていたものだ。気を失っている者や口を閉ざす者から情報を引き出すための魔法。その魔法から引き出された無数のアーカイブ。
「・・・アクツ・エイタ。 チキュウジン?ニホン? ヒキコモリ?」
この大陸ではあまり聞かない名前と無数の単語。ミリアーナは二枚目のアーカイブを引っ張り出し、目を通す。 1枚目は名前や年齢といった情報で、二枚目は大半が黒く塗りつぶされており、何が書いてあるのか見えない。
「おかしいわねぇ。二枚目のアーカイブだけじゃなくて、次もその次も黒く塗りつぶされてる。まるで、誰にも見られない様、自分の意思で読めなくしたみたいに」
ミリアーナは、これ以上調べても無駄だと判断し魔法を解除した。結局、青年のことでわかったのは、名前と無数の単語。そして、この大陸の人間ではないということ。何となく名前は、天楼大陸にある蓮桜の人々の名前に似ていた。
「うーん。 困ったわねぇ」
眠る青年から少しの情報を引き出したとはいえ、この事を誰かに伝える意味は無い。それに見たところ危害を与えれるような凶器を持っていなかった為、警戒する必要も無いだろう。
「とりあえず、この子が目覚めるのを待つしかないわね」
そう呟いて、ミリアーナは部屋を出た。
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