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第一章:神聖リディシア王国襲撃編
【冷眼の貴公子】ミレル・トランバレト ④
しおりを挟む『・・・』
虚を突かれた様な表情をうかべるゼノ。僕はそんな【劣等種】の反応を滑稽だと心の中で笑った。きっと、顔に出ているだろう。本当に哀れだ。
「【零魂氷閃】」
その一言と共に振り抜かれた【零氷剣】から発せられる絶対零度がゼノの身体を一瞬にして凍てつかせた。肉体だけでなく魂をも凍てつかせる一撃、それが【零魂氷閃】。トランバレト家に代々受け継がれる零氷魔法の1種だ。
「これが--選ばれし者の力だ。【劣等種】」
僕はそう言い放った後、【零氷剣】を特殊な空間へとしまい込んだ。これで試験は終わり。なんともあっけない幕引きだ。この程度ならば、第2の試練も大したことがない。
「まぁ、僕の前では全てが【劣等種】に成り果てるから、当然だ」
眼鏡を押し上げて、【劣等種】の氷像に背を向ける。入場門辺りには三人の【劣等種】が僕を見ている。一人は驚きの表情を浮かべ、もう一人は何を考えているかわからない表情、最後の一人は震えている。
…ふっ、【劣等種】らしい反応だ。
眼鏡を押し上げ、口元に小さく笑みを浮かべる。
「次は貴様らの番だろ? 呆けている場あ--」
『いやぁー、お見事! 私の分身を相手に良く頑張りましたよ。拍手ですよ、拍手。 パチパチパチ』
背後から聞こえる声。それは聞こえるはずのない声。僕は【零氷剣】を再召喚しようとする。しかしできなかった。
何故なら--
『1回見せた技を何度も撃たせると思いますか?お子ちゃま』
それよりも早く、僕の腕に黒いモヤが手枷の様にまとわりついていたからだ。
『はははは! これで【零氷剣】は出せなくなりましたね。ただ、それで終わるわけないですよね?選ばれた貴方が!【劣等種】の僕に!敗北を告げるわけないですよね?』
相変わらず嘲笑を口元に刻むゼノ。他人を小馬鹿にするのが得意みたいだが、僕は選ばれし人間。この程度の言葉を一々気にするわけが無い。
「ふっ、当然だ。 【零氷剣】が封じられたくらいで、【劣等種】に遅れをとるわけがない」
僕はそう言うと共に、零氷魔法【零氷千槍】を無詠唱で放つ。絶対零度の氷で作られた約千本の槍がゼノに降り注ぐ。絶大な威力と冷気を持つ最速の氷槍。そう簡単に避けれる訳が無い。
『【反鏡壁】」
その氷槍に向けて、ゼノは無数の薄い鏡を亀の甲羅のように展開させた。どんな魔法かは知らないが、あの薄い鏡で僕の魔法を無力化できるわけがない。
・・・馬鹿な【劣等種】だ。
「ソレでどんな小細工をするつもりかは知らないが、どうにかできると思ったのか?」
呆れを言葉にして、ゼノに尋ねる。その質問に、あろう事か、ゼノは笑った。
まるで馬鹿はお前だみたいな顔で。
「虚勢を張らな--」
馬鹿な【劣等種】に諦めるよう諭す瞬間、右腕に叫ぶことも出来ないほどの冷気を感じた。痛いなんてものじゃない。痛みなんて生易しいものじゃない。右腕が凍結している。まだ切り傷等の方がマシと言えるほどの。そして続くように、左手、右足、左足、体と、見慣れた氷が僕を侵食していく。
『くく、はははは! 自分の魔法にやられる気分はどうだい?』
そう言って笑うゼノの周囲を囲う薄い鏡達が光り、【零氷千槍】がその鏡の中から現れ、僕へと飛んでくる。 どうやら、あの薄い鏡は防御の為ではなく、魔法をはじき返す代物らしい。
「・・・」
ガチガチと耳障りな音が近くで響く。なんてうるさい音なんだ。誰だ?この音を出してる【劣等種】は。
『おやおや、どうしたのですか? そんなに怯えたように歯を噛み鳴らして?』
は?僕が怯える? どこの誰に?
『私にですよ、ミレル・トランバレト』
違う。僕は怯えてない。劣等種に怯えるわけがない。
『素直になりましょう。それの方が楽ですよ?』
黙れ!黙れ黙れ!
『さぁ!泣いて!喚いて!嘆いて!そのすました顔を恐怖で歪めなさい!貴方にはそれがふさわしい!!』
黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!黙れ!
『ここからが本番!恐怖を感じて絶望する最高のフィナーレを迎える時間だ!』
ゼノはとても興奮したような大きな声でそう宣言した。
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