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第一章:神聖リディシア王国襲撃編
【冷眼の貴公子】ミレル・トランバレト ⑥
しおりを挟む【おまえが憎い】
【あなたなんて産まなければよかった】
【殺してやる】
耳に響くのは怨嗟の声。それはどれもが聞き覚えのある声。兄達や母親、クラスメイト達の声。
飽きれるほどに聞いてきた憎悪の言葉。
「このモヤの効果といったところか」
闘技場を覆い尽くした黒いモヤの中で呟く。こんなもので僕が恐怖を感じるわけがないというのに。 ホントに愚かだな、【劣等種】。
『やれやれ、貴方は本当に立派です。この魔法を受けてまだ恐怖しない。 しかし、クラスメイトだけではなく、ご家族からも憎悪を向けられてるなんて・・・哀れですねえ』
「【劣等種】ごときが僕を哀れむな。それに、アレは僕には釣り合わないこの世界のゴミだ」
仲のいい友人も家族も僕にはいらない。邪魔だ。存在してるだけで目障りだ。
『なるほど。貴方は孤独が偉大だと思ってる馬鹿ですね? 1人でなんでも出来ると思い込んでるタダの馬鹿』
ゼノは哀れむような目で僕を見る。
「【劣等種】が群れたとして、僕に勝てるとは思えない。なら、僕が【劣等種】と群れる必要も無い」
『はぁー、そうですか。そんな貴方をこのまま第二試験に向かわせた所でクリアできるとは思えません。残念ですが--ミレル・トランバレト。君はしっか--』
ゼノがその単語を言う前に、魔法を放つ。
「その先を言わせるわけがないだろう、【劣等種】。 それにだ。 この試験は【恐怖の試練】ではなく【勇気の試練】。 恐怖を知るのが目的ではないはずだ」
『く、ハハハハ!! 確かにそうでしたねえ!ですが…恐怖を知らなければ勇気は宿らないですよ?』
ゼノがそう告げた瞬間、全身を悪寒が襲った。反射的に今いる位置から右へと飛び退くと、その地面が割れ、拳1つ分の大きさをした無数の杭が現れた。
『はぁ、残念です。そのままそこにいれば--楽に逝けたというのに』
「フッ、こんな小細工が。いいだろ、徹底的に躾て、僕に逆らえないようにしてやろう」
先程まで僕の手に掛けられていた黒いモヤの枷は消えているみたいだな。恐らく、闘技場を覆うために消したのだろう。僕は【零氷剣】を喚び出す。
『これが本当に最後ですよ。ミレル・トランバレト』
そう告げるゼノの右腕に黒いモヤが集束し、魔蜂《まばち》の巨大な毒針の様な形状へと変わった。
「それが貴様の得物か」
『えぇ、これが私の魔装【恐焉死針】です』
ゼノは、【恐焉死針】を撫でる。
なんとも醜い魔装だ。
「まぁ、いい。これで最期だ、【劣等種】」
『ええ、そうですね。 これが貴方の最期です』
僕とゼノは同時に地を蹴り、
「【零魂千閃】」
『【恐焉逝針】」
最後の一撃を放った。
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