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第一章:神聖リディシア王国襲撃編
神と賢者が語る歴史 ②
しおりを挟む『これは代々導き手と勇者が歩んできた運命の歴史だ』
驚く俺の背後から、エルケイスがそう教えてくれた。
「…は?何言ってんだお前?こ、これが俺達が辿る未来ってことか?」
何十何百年と前に彫られたであろう謎の文字と絵を指さし、引きつった表情でエルケイスとリンゲルへと顔を向ける。
『そうだ。これは…誰もが回避することの出来なかった運命。そして・・・この世界に平和が訪れない理由だ』
「彼の言う通りだよ、アクツ君。かつての導き手達はこの狂った運命を変えることが出来なかった。後一歩まで辿り着いた者もいたが、その彼は平和を望まない者の手により歴代勇者諸共、暗殺された」
2人の語る導き手と勇者の辿る運命。それが本当なのか、俺に確かめれる力も知識もない。それでも、今は彼らを信じるしかない。そうするしか俺が、一分一秒生きることも叶わないのだから。
「…なぁ、ひとつ確かめたいことがある」
彼らの言うことが真実だとすれば、シエラが読み聞かせてくれた【世界録】の内容は嘘になる。
「【世界録】に記されている一文、『世界を救えば、元の世界に帰れる』。これを成し遂げた異世界人は今までにいたか?」
頼む、いたと言ってくれ。これだけが俺の唯一の救いなんだ。
『残念だが、それを成し遂げた奴は一人もいなかった。そもそもその【世界録】と言うのは、神々を心酔する宗教【白き命神】が書き記したものだ』
「…じゃ、じゃあ、あの本は嘘しか載ってないのか!?」
『いや、本当の事も書かれてはいる。ただ、先程の一文は嘘だ。僕達、神々は導き手と勇者がどこにいようと確認したい時に確認することが出来る。だから、世界を救って元の世界に帰れた異人を見た事はない。皆、世界を救い、そして--この世界で死んだ』
エルケイスの一言は、俺にとっては死刑宣告と同じだった。世界を救っても元の世界には戻れない。なら、俺はこんな世界で一生を過ごすのか?命の危険を感じながら、あの勇者らと旅をし、死ねと? かつての導き手のように誰かに暗殺されるかもしれない。いや、勇者達に、それとも街の人に? 誰に殺されてもおかしくない。
「…ふざけんなよ。なんでこんな世界で死ななきゃいけないんだよ…。勝手に喚ばれて、帰るには世界を救うしかないって【世界録】に書いてあったから信じたのに…」
この世界に来て1日目で、唯一の希望を否定された。それなら、俺がこの世界を救う理由はない。あいつらと協力する必要も無い。自由に生きればいいんだ。
『自由に生きる。それも一つの手かもしれない。だが、忠告してやろう。貴様は僕達、神々の頂点に立つ世界神ユノグリア様に選ばれた導き手だ。僕達の手助けがなければ、明日を迎えることは叶わないだろうな』
俺の心の声を読み取ったのか、エルケイスはそう告げる。確かにあいつの言う通りだ。この世界のことを何も知らない俺が1人で生きるなんて無謀だ。
「だからって…死に怯えながら生きるなんてゴメンだ。悪いけど、俺は導き手の役目を降りる。世界より自分の命の方が最優先だ」
そう2人に伝え、部屋の扉に触れると、
「はぁ。悪いけど導き手に選ばれた以上、君はその役目から降りることも逃げることも出来ない。それは1種の呪いと同じ。死ぬまで一生、君に付きまとう。それでもいいなら、行くがいいよ。どこへなりとでも」
黙って俺とエルケイスの話を聞いていたリンゲルが、そう言葉を紡いだ。
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